ニーズアセスメントの実施

2014年12月31日

2014年12月

11月の準備会合で作成された質問票をもとにニーズアセスメント(質的調査(注))を実施しました。目的は、特にスラムの住民が母子保健サービスを利用しようとする際に感じる障壁を探り出すことです。
この調査はエティ・オサ地方行政区(プロジェクト対象地)の4つのスラム地域で、1歳〜2歳未満の子供をもつ母親と父親を対象に行われました。調査手法として個人面談とグループ面談を採用し、合計32名の女性と27名の男性からデータを収集することが出来ました。面談の際は、例えば「すぐ近くに公的プライマリー・ヘルス・センター(PHC)があるのに、どうしてそこで産前健診を受けなかったのですか。」といった質問をし、その後徐々に質問を掘り下げて医療サービスを使用しない背景を探っていきました。
結果として数多くの障壁が浮かび上がってきましたが、大きく5つに分類しました。それらは1)金銭的、2)物理的、3)組織的、4)認知的、そして5)心理的/社会文化的障壁です。各障壁の例として、「お金が無い(金銭的)」、「交通手段がない。道路の横断が危険(物理的)」、「公的PHCの人的不足、限られた開所時間(組織的)」、「PHCの存在を知らない(認知的)」、「伝統的分娩介助者への依存(心理的/社会文化的障壁)」等がありました。
これらの障壁は世界各地で実施された調査でも報告されましたが、いくつかはこの土地特有のものでした。それは、「信仰心に基づいた行動」、「帝王切開への忌避感」、「言葉の障壁」です。信仰心の強い女性は神の力を信じ、教会病院と呼ばれているところで出産を試みようとします。病院と呼ばれていますが資格を持った医師や助産師がいるわけではありません。帝王切開(通常分娩できない)は文化的に生殖障害と捉えられる傾向があるようで、それを避けたい女性は伝統的分娩介助者を頼ることになります。ラゴスには国内のみならず近隣のベナン、トーゴ(いずれも仏語圏)からの移住者も多く、言葉の壁が保健サービスへのアクセスを限定いているようです。
今後これらの障壁を軽減するための介入策を考えていく予定です。

(注)主に面談や観察を通してデータを集め、言葉による分析と結果記述が中心となります。この点、統計的分析を行い、数値で結果を報告する量的調査と異なります。

【画像】

調査を実施したスラム地域の一つの様子。雨季には道路の状態がさらに悪くなり、保健施設へのアクセスが悪化する。