プロジェクト概要

プロジェクト名

(和)オルタナティブ教育推進プロジェクトフェーズ2(AQAL2)
(英)Advancing Quality Alternative Learning Project Phase 2(AQAL2)

対象国名

パキスタン

署名日(実施合意)

2020年12月15日

プロジェクトサイト

連邦政府直轄地域、パンジャブ州、シンド州、バロチスタン州及びKP州

協力期間

2021年2月1日から2025年1月31日

相手国機関名

連邦教育職訓省、パンジャブ識字局、シンド教育局、バロチスタン社会福祉局、KP教育局(略称のみ)

背景

パキスタン・イスラム共和国(以下、パキスタン)では2,280万人の子どもが学校に通っておらず、15歳以上の41%が字が読めないといわれており、これらの統計は女の子や女性について特に深刻な状況にあります。
こうした状況の背景には複合的な要因があり、学校と家の距離といった地理的要因、家庭の生計や価値観といった家庭的要因、学校教育内容や教員の資質といった教育的要因が挙げられます。このうち特にはじめの2つは、通常の学校教育のみからのアプローチで改善を図るのは極めて難しいのが現状です。そこでJICAは、公教育のオルタナティブ(代替)として位置づけられているノンフォーマル教育(NFE)の教材や教員研修などの開発と制度作りを支援しています。NFEは学校の設置に際する地域的な自由度が高くコミュニティの中に設置できることや、完全無償で経済的な教育システムであることから、特に上記のような地理的・家庭的阻害要因に対応する観点で有効と考えられています。
AQALの速習型学習プログラム(ALP)は、学校に通っていない子どもや学齢期を過ぎた青年や成人が、社会生活を通じて身に着けた知識や身近な題材を活用することで、計算や識字を始めとした能力を効率よく身に着けることを可能にしています。2015年から2020年まで実施したAQALフェーズ1では、連邦政府直轄地域、パンジャブ州、シンド州、バロチスタン州において、初等(1年生から5年生)を中心としたALPを開発するとともに、連邦及び州政府の政策策定の支援やプラットフォームづくり、さらにデータに基づく運営のためのデータベースの改善に取り組みました。しかしながら、多くの不就学児童や学ぶチャンスを逃した人々に対し、より多くの質の高い学習機会を提供することや、その後の人生に繋がる教育(高等教育に進むための中等教育や、就業に繋がる技術教育)を提供する必要性には未だ十分に応えられていないのが現状です。
そこでフェーズ2では対象地域をハイバル・パフトゥンハー(KP)州を含むパキスタン全土に拡大し、前期中等レベルのALP開発や、就業や生計向上を見据えたスキル開発・技術訓練の内容を含むプログラムの開発を計画しています。

目標

上位目標

学習機会の多様化により、人的資本の開発が強化される。

プロジェクト目標

社会的に不利な立場に置かれている子ども、若者、成人による質の高い教育へのアクセスが改善される。

成果

1.NFEにおけるガバナンスとマネジメントが強化される。
2.初等教育レベルの速習型学習プログラム(Accelerated Learning Programme-Primary:ALP-P)が開発、改訂され、さまざまな教育環境において実施される。
3.不就学児童、青年、若者、成人のために、実現可能な継続教育の機会として、前期中等及び職業訓練レベルでの速習型学習プログラムが立案・検証される。

活動

1-1.国及び州の(全てのステークホルダーを巻き込んだ)コーディネーション機能を強化し、持続性確保のため、各対象地域のメカニズム策定・強化を行う。
1-2.NFE政策及びその戦略計画の実施を支援する(例:NFEセクター5ヵ年計画)。
1-3.NFE政策及びその戦略計画を改訂する。
1-4.連邦、州、県レベルのNFE局・部の行政構造の再構築及び強化を支援する。
1-5.ジェンダーの平等を考慮したNFE普及拡大プロジェクトのデザイン/改善及び承認を支援する。
1-6.NFEの認証・修了認定メカニズムの確立/普及を支援する。
1-7.対象地域のNFE関係者間でのデータに基づいたマネジメントの実施を支援する(例:計画・実施・モニタリング・評価のサイクル及び証拠に基づいたマネジメント能力)。
1-8.ノンフォーマル教育マネジメント情報システム(NFEMIS)のカスタマイズ及び導入。
1-9.NFEMISと国家及び州のEMISの統合に向けた助言を行う。
1-10.NFEMISを利用、分析するために連邦、州及び県レベルの担当者向けのトレーニングを実施する。
1-11.コミュニティ・モビライゼーション・マニュアル の改善及びフィールドスタッフへのトレーニングを実施する。
1-12.地域の教育計画の開発のための州及び県レベル職員向けトレーニングを実施する。
1-13.NFEの実施において、コミュニティ・モビライゼーション戦略を導入し、普及する。
1-14.証拠に基づいた計画のため、研究開発(R&D)担当の連邦及び州の担当者を支援する。

2-1.ALP-Pカリキュラム、教材、関連する活動を改訂/改善する。
2-2.対象地域のALP-Pのマスタートレーナーの能力強化を支援する。
2-3.ALP-Pの効果検証を行う。
2-4.ALP-PにおけるICT活用型普及モデルの開発及びパイロット活動を行う。
2-5.対象地域のマドラサにおけるALP-Pの実施をモニタリングし、支援する。
2-6.対象地域の公教育における補習コースにて、ALP-Pの実施をモニタリングし、支援する。
2-7.ALP-Pアプローチのアドボカシーの支援及びコーディネーションを行う。

3-1.ALP前期中等/前期中等及び技術訓練速習型学習プログラムのスタンダード、カリキュラム、評価及び学習教材を作成し導入する。
3-2.ALP前期中等/前期中等及び技術訓練速習型学習プログラム、公教育の基礎教育、及び職業訓練枠組みの同等性メカニズムを開発し、実施する。
3-3.連邦、州および県の担当者及び教員向けの、ALP前期中等/前期中等及び技術訓練速習型学習プログラムのトレーニング・モジュールを作成する。
3-4.トレーニング・メカニズムの開発と実施において、連邦、州及び県の担当者を支援する。
3-5.ALP前期中等/前期中等及び技術訓練速習型学習プログラムのため、連邦、州及び県の担当者、及びマスタートレーナーを訓練する。
3-6.パイロットプロジェクトを通じ、ALP前期中等/前期中等及び技術訓練速習型学習プログラムの実施及び効果・革新性の検証を支援する。
3-7.ICTを使用したALP普及モデルを開発し、パイロット活動を行う。
3-8.ALP前期中等/前期中等及び技術訓練速習型学習プログラム・アプローチのアドボカシーを支援する。

4-1.統合型識字・技術訓練(ILS)及び社会インパクトのための識字(Literacy for Social Impact:LSI)のスタンダード、カリキュラム、評価、学習教材を作成し導入する。
4-2.識字を普及し、継続的教育/職業訓練への橋渡しをするための新識字用短期コースを開発する。
4-3.ILS、公教育及び職業訓練フレームワーク間の同等性メカニズムを開発し実施する。
4-4.連邦、州及び県の行政官及び教員向けの識字トレーニング・モジュールを作成する。
4-5.連邦、州及び県の行政官及びマスタートレーナーを訓練する。
4-6.青少年、若者及び成人識字プログラムの開発及び実施において、連邦、州及び県の行政官を支援する。
4-7.パイロットプロジェクトを通じ、ILS/LSIプログラムの効果検証を行う。
4-8.ILS/LSIにおけるICT活用型普及モデルを開発し、パイロット活動を行う。
4-9.ILS/LSIアプローチのアドボカシーを支援する。

投入

日本側投入

・専門家派遣
・日本人専門家及びローカル専門家活動経費
・本邦研修
・車両、オフィス用機材

相手国側投入

・カウンターパートの配置
・事務所スペース(イスラマバード、カラチ、ラホール、クエッタ、ペシャワール)
・必要機材
・その他プロジェクト実施に必要な経費