学力診断テストと授業分析を実施しました

2020年3月19日

2019年4月、パレスチナの初等理数科教育における子どもたちの学習到達度を診断するための筆記試験と、授業の特徴や課題を把握するための授業ビデオの撮影を実施しました。

筆記試験は、算数では3・6年生を、理科では4・8年生を対象とし、パレスチナの目指す学力観である「創造性」や「批判的思考力」を測る問題から、基礎的な計算能力や科学的知識を問う問題までを広く出題し、子どもたちの学習到達度を確認しました。その結果、算数・数学では、くり上がりのあるたし算など、低学年でつまずきやすい学習内容の正答率が低くなっており、1~2年生から「わからないこと」が積み重なっていることが明らかになりました。理科では、簡単な知識や用語を問う問題の正答率は比較的高いものの、自然現象を科学的に説明したり、複数の情報を整理したりする思考力に課題を抱えていることがわかりました。

また、ヨルダン川西岸地区とガザ地区の公立小学校の理数科授業を撮影した中から合計20の授業を選び、専門家による授業ビデオ分析を行いました。分析の結果、パレスチナの先生たちは子どもたちの注意を引き付ける話術が巧みである一方で、子どもたちが自分自身で思考する時間を授業中に確保できていない、白板(黒板)やノートを活用できていないなどといった、授業の改善点も見えてきました。

この分析結果を受け、2019年7月~8月、筆記試験と授業分析の結果を共有するためのワークショップを実施しました。ワークショップには、パレスチナ教育庁の職員のほか、ガザ地区やヘブロン地区の視学官もテレビ会議で参加し、理数科における生徒の学習到達度や授業の特徴・課題について活発な意見交換が行われました。

今後は、理数科授業におけるこれらの課題を解決するための改善策を考案し、試行していきます。

【画像】算数の試験結果の一例。学年が上がるほど、つまずきが蓄積。

【画像】理科の試験結果の一例。暗記している知識や用語を問う問題は正答率がやや高い。

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授業分析では、撮影したビデオに字幕を付け、教員と生徒のやりとりを分析。

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調査結果共有のためのワークショップの様子。

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板書が整理されておらず、有効活用できていない(6年生算数。円の面積の授業。)