障害者の視点をふまえた物理的アクセシビリティの改善に向けて

2022年10月19日

アクセシビリティ規格に関する研修を実施

プロジェクトIMPACTOには、大きく3つの活動の柱があります。1つ目は「自治体の障害者人権事務局の強化」、2つ目は「物理的アクセシビリティの改善」、3つ目は「自立生活の実現に向けた障害者の能力強化」です。これまで、一番目と三番目のテーマに注力してきましたが、二番目のテーマである「物理的アクセシビリティ」についての取り組みも動き出しました。

パラグアイでは、「障害者のための物理的環境へのアクセシビリティに関する法律」第4934号が2013年に制定され、同年に定められた法令第3891号により、公衆が利用する施設は物理的アクセシビリティを保障することが義務付けられており、国立技術・標準・計量検査院(INTN)が、具体的な寸法などの規格を定めています。この法律に基づき、建築物が規格を満たしていることを確認し、罰則規定を市町村条例で定めることが自治体の役割となっていますが、自治体の担当者もこれらについて理解していないことが多く、アクセシビリティの監査が十分に機能していないことが課題となっています。

JICAは2018年に日本から障害のある建築専門家を招聘し、物理的アクセシビリティの監査員の養成を行ないました。また、SENADIS及びINTNと協力して、アクセシビリティ規格のガイドラインも作成するなど、この分野の取り組みを支援してきています。

プロジェクトIMPACTOでは、アスンシオン市内および近郊の自治体関係者、公的機関の職員、市民団体等を対象に、9月27日から29日までの3日間にわたり、アスンシオン市内のINTN講堂で研修を開催しました。物理的アクセシビリティに関する法律と規格について理解を深め、現状の確認と改善に向けた提案ができる人材を育成することが目的です。自治体の障害者人権事務局や建築部門、障害者団体や障害者を支援している市民団体等から20名の参加があり、講義中に身体障害や視覚障害がある参加者が自分の経験を共有するなど、当事者の視点を学ぶ機会にもなりました。

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物理的アクセシビリティに関する研修の参加者

商業施設のアクセシビリティ・チェック

上記研修の翌週、早速、アスンシオン市内のショッピングモールとオフィスの複合商業施設のアクセシビリティを確認する機会がありました。チェックを担当したのは、パラグアイ自立生活協会テコサソの代表で、研修にも参加したブランカ・エスコバルさんと、SENADIS地方分権局長のスルマ・フェレイラさん。いずれも車いす利用者です。

アクセシビリティに配慮している施設でしたが、車いす用リフトのドアの仕様、顔認証ゲートのカメラの角度、車いす利用者用のトイレがどこにあるかを分かりやすくするためのサイン掲示等について、改善の提案がありました。車いす利用者と事業者側の担当者が一緒に確認することで、事業者側に当事者視点に立った気付きを促すとともに、具体的な改善の提案ができました。

今後も、私たちのプロジェクトでは、障害者の視点をふまえた物理的アクセシビリティの改善に向けた活動を続けていきます。

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車いす用リフトの使いやすさを確認

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顔認証ゲートのカメラの角度についてアドバイス

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車いすで利用できるトイレだとわかるようにサインを掲示することを提案