物理的アクセシビリティの規格に基づき、改善を提案できる人材の育成

2022年11月1日

パイロットサイトで研修を開催

10月下旬、プロジェクトIMPACTOのパイロットサイトのコロネル・オビエド市とビジャリカ市で、それぞれ2日間の研修を開催しました。昨年12月に初めて両市を訪問して以来、4度目の訪問です。目的は、パラグアイにおける物理的アクセシビリティの基準を理解し、現状を確認して問題を分析し、改善に向けた提案ができる人材の育成です。

SENADIS地方分権局の局長のスルマ・フェレイラさんと、職員のアルマンド・ベニテスさんがファシリテーターを務めました。それぞれの市の障害者人権事務局や建築部門の担当者、その他の公的機関、障害者団体をはじめとする市民団体、大学等、さまざまな組織から、2つの市で合計68人が参加しました。

研修1日目は、物理的アクセシビリティに関する法律や基準、障害者の視点を大切にしたアクセシビリティ・チェックの方法などに関する講義で始まりました。また、自分たちの地域で感じている課題や、これまでどのような取り組みを行ってきたかについて、参加者が発表するなど、対話を交えながら、研修が進みます。

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法律や基準に関する講義に耳を傾ける参加者(コロネル・オビエド市)

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積極的に発言する地域住民の皆さん(コロネル・オビエド市)

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積極的に発言する地域住民の皆さん(コロネル・オビエド市)

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積極的に発言する地域住民の皆さん(コロネル・オビエド市)

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研修会場となったスタジアムには、最前列にアクセシブルなスペースが設けられています(ビジャリカ市)

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発言する障害者団体の代表(ビジャリカ市)

自分たちの地域の施設のアクセシビリティをチェック!

研修2日目には、少人数のグループに分かれて、チェックリストと巻尺を手に、研修会場の内と外のアクセシビリティの現状を調べました。それぞれのグループになんらかの障害のある人が参加し、自らの経験をふまえて気づいたことを他のメンバーに伝えることで、障害者の視点を共有します。

コロネル・オビエド市では、研修会場となった講堂内の入り口、階段やトイレ、駐車場などをチェックしました。例えば、講堂にスロープはあるのですが、手すりがついていない、幅が十分でない、表面が滑りやすいなど、規格に忠実に設計されていれば…という点が次々に出てきます。車いす利用者用のトイレについては、スペースは広めに確保されているので、手すりの設置など改善ができるといいね、といったコメントがありました。さらに、障害者用の駐車スペースが確保されていないことに気づき、「アクセシビリティ規格に沿った駐車場がどんなものか、モデルを作ってみよう」と、レンガやロープ、木端、紙などを使い、アクセシブルな駐車スペースも作りました。

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ステージへのスロープを確認(コロネル・オビエド市)

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アクセシブルな駐車場のモデルも作成(コロネル・オビエド市)

ビジャリカ市の研修会場となったスタジアムは、市民団体の働きかけにより、アクセシビリティが改善された経緯があります。観覧席の最前列には、車いす利用者が動きやすいようにスペースが設けられており、その他の障害のある人や同行者もプラスチックの椅子を自由に動かして、一緒に座ることができます。また、入り口からこのスペースまではスロープがあり、障害者優先トイレも設置されています。研修参加者は、今回のアクセシビリティ・チェックを通じて、さらにこうするともっと良くなるという点に気づきました。

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スタジアムのさまざまな箇所をチェックする参加者(ビジャリカ市)

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スタジアムのさまざまな箇所をチェックする参加者(ビジャリカ市)

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スタジアムのさまざまな箇所をチェックする参加者(ビジャリカ市)

気づきと感想の共有

グループワークを終えた参加者は、チェックリストに基づいて計測した結果、規格と現状の違い、改善が必要と思うポイントなどについてグループごとに発表しました。印象的だったのは、多くの人が、チェック結果に関する報告に加え、自分たちのコミュニティをもっとアクセシブルにしていきたい、そのためには今回の研修を受けた自分たちが他の人たちに情報を共有し、改善に向けた提案をしていかなくては、という意思を表明したことです。両市とも、さまざまな公的機関、市民団体からの参加があり、今後、さらに連携を深めたい、という意見が聞かれました。

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コロネル・オビエド市の研修参加者

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ビジャリカ市の研修参加者(Vサインは同市を表す手話)

過去の協力資源を活用した活動

今回の研修で活用するために、「障害者のための物理的アクセシビリティ基礎ガイドライン」に基づいてチェックリストを作りました。このガイドラインは、2018年に日本から招聘された、障害のある建築専門家の助言を受けながら、SENADIS、JICA、INTN(国立技術・標準・計量検査院)が協力して作成したもので、パラグアイの国内法やアクセシビリティ規格をわかりやすく説明しています。これからも、私たちのプロジェクトでは、このように、過去の協力を通じて作成したリソースも最大限に活用しつつ、物理的アクセシビリティの改善を目指す取り組みを後押ししていきます。