レクリエーションを通じて育まれた、温かいコミュニティ

2022年11月28日

タンゴを楽しむ輪の広がり

11月17日、国家障害者人権庁(SENADIS)で2022年最後のタンゴセラピーのクラスを開催しました。5月からほぼ隔週実施し、全12回のクラスに参加した合計人数は約180人。SENADISにリハビリテーションなどのために通所している利用者とその家族を中心に、時にはSENADIS職員も加わり、障害のある人もない人も一緒に音楽に合わせて体を動かし、ペアになって踊り、輪になってストレッチをして、楽しく豊かな時間を共有しました。

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リズムに合わせて動く練習

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ペアでダンスを楽しむ参加者

最初は、SENADISに用事があり、たまたまタンゴセラピーのクラスに参加したという人たちがほとんどでしたが、次のクラスを心待ちにして、この活動に参加するために足を運ぶ人が増えてきました。また、毎回、さまざまな障害のある新しいメンバーが参加しました。講師を務めるタンゴダンサーのクリスチャンさんとマルさんは、参加者の障害の種類、使っている補助具などに合わせ、説明の方法を変えたり、動きを工夫したりと、誰もが参加できるようにさりげなく配慮していました。例えば、視覚障害のある人が初めて参加した時には、いつもより手拍子を取り入れたり、個々の動きを言葉で詳しく説明したり、という具合です。二人からは、「私たちにとっても、タンゴセラピーを本格的に行うのは初めてで、さまざまな障害のある方と接する中で学ぶことの多い経験でした」との感想がありました。

10月に開催されたSENADIS創立10周年イベントでは、皆でおしゃれをしてタンゴを披露し、大きな拍手を受けました。このような経験を通じて、タンゴに対する興味が湧き、自信がつくことで、変化が見られる参加者もいます。例えば、外部のタンゴスクールでレッスンを受けるようになり、自分の可能性を新しく発見した青年がいます。これまで車いすに30分以上座っていることが苦痛だったという男性が、タンゴセラピーの60分間は満面の笑顔で、「昔からダンスが大好き。車いすで踊れるとは思わなかった」と嬉しそうに話し、付き添いの家族を驚かせたことも。また、初めて参加する人を、常連メンバーが優しくフォローするなど、温かい場所になっています。さらに、この活動を応援したいと、ピアニストが最終回のクラスを生演奏で盛り上げてくれました。継続して開催することで、小さなコミュニティが生まれ、居心地の良い雰囲気が育まれています。

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SENADIS創立10周年イベントでのお披露目

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初参加の男の子に話しかけるメンバー(右端)

7ヶ月にわたり、ボランティアとして定期的にクラスを開催してくれた講師のお二人の厚意で、国内でもまだ新しい試みのタンゴセラピーを多くの方に経験してもらうことができました。パラグアイは11月下旬になり、暑さが増してきました。エアコンのないスペースでの活動のため、しばらく開催をお休みしますが、楽しみに待っているメンバーのためにも、来年再開できればと考えています。

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最終回のクラスを終えて

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生演奏で応援してくれたピアニストのグロリアさん

レゴセラピーを通じて、遊びながら学ぶ

ある日、タンゴセラピーに参加していた母親から「私はレゴを使ったレクリエーションのファシリテーターの資格を持っているので、障害のある子どもたちにレゴセラピーの機会を提供できれば」とボランティアの申し出がありました。7月から11月にかけて8回開催されたクラスには、SENADISに通っている障害のある子どもたちとその家族、合計60人ほどが参加しました。じっと集中してレゴ作りをする子どももいれば、歩き回る子もいる、誰もが自由に楽しめるクラスです。最初は頭を抱えて机の下でうずくまっていた子が、だんだん興味を示して、レゴで遊び始めたこともありました。

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ファシリテーターのルスさん(中央)を囲んで

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家族での共同制作

このクラスでは、毎回さまざまなテーマに関する自分の思いをレゴで表現し、作っている時の気持ちや、出来上がった作品について、他の参加者に説明します。例えば、「私の家族」、「理想の家」、「大きな音を出すもの」、「クリスマスに欲しいもの」などがテーマとなりました。「私の家族」を語りながら、家族に対する思いがあふれだす母親もいれば、「大きな音を出すもの」という課題で、「開け閉めした時に音を立てるドアや窓がたくさんある家」を作った男の子の創造的な発想にみんなが感心する場面もありました。普段とは違う形で自分を表現したり、身近な家族の、これまで知らなかった側面に触れたりする機会にもなったようです。

与えられたテーマにもとづき、各自で制作するだけでなく、一つの作品を家族で仕上げるという課題もありました。クリエイティブな感性を発揮することに加え、自分が欲しいレゴのピースを他の人に探してもらったり、周りの参加者と話したり、完成作品に関する他者の話を静かに聞いたり、と社会性を育む側面もあります。出来上がった作品を誇らしげに掲げ、いきいきと説明する子どもたちの姿を、親や兄弟姉妹が優しく見守っていました。参加している家族からは「レゴは高価なので我が家では買えない。子どもが楽しんでいる姿を見られて嬉しい」という声や、「息子と一緒に何かを作るというのは初めての体験だった」という感想が聞かれました。

開催を提案してくれたファシリテーターのルスさんのように、地域の人が自分のできることを持ち寄り、交流する機会が増えていくことが、インクルージョンの実現に向けて大切だと感じています。私たちのプロジェクトチームにとっても、障害のある子どもやその家族と知り合い、彼らの思いに触れる、貴重な機会となりました。

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自分の作品を手に

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家族との共同作品を披露