アクセシブル・ツーリズムの推進に向け、ホテルで調査を実施

2023年2月16日

アクセシビリティの現状を確認

2月14日、プロジェクトのメンバーで、アスンシオン近郊のホテル「Yacht y Golf Club」を訪問しました。国家障害者人権庁(SENADIS)と国家観光庁(SENATUR)が協力して推進するアクセシブル・ツーリズム・プログラムの一環として、ホテル施設の物理的アクセシビリティに関する調査と提案を実施するためです。

ホテルの代表者と共に、1時間半ほどかけて、エントランス、3つのタイプの居室や屋外のイベント会場へのアクセス、エレベーターなどを、長さを測る巻尺と、スロープの角度を測るアプリの入った携帯電話を手に周りました。SENADIS地方分権局長のスルマ・フェレイラさんが、車いす利用者の視点で、次々と気になるところを指摘します。

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ホテル、SENADIS、SENATURのチームで調査を実施

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アスンシオン郊外の川沿いにある5つ星ホテル

ちょっとした工夫で改善できる点も

全体的にゆったりとした作りのホテルで、ロビーや廊下、レストランなどのパブリックスペースは車いすでもおおむね移動しやすい環境でした。ただ、一部のスロープは、アクセシビリティの基準に沿って作られておらず、かなり急で危険なため、新しいスロープを作る必要があります。

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テラスへのスロープはかなり急で手すりもないことから、新しく作り直すことを提案

居室については、ベッドルームでは、車いすで方向転換をしたり、ベッドに移乗したりする十分なスペースがありました。ただ、パラグアイのホテルに共通している「バスルームのドアやシャワーエリアへの入り口が狭すぎる」という問題はこのホテルにも見られたほか、洗面台の下に車いす利用者が入れるようなレッグスペースが無い、バスルームのドアが内向きに開くようになっていて、車いすでトイレまで近づくスペースが無いなどの課題がありました。これらの点を、車いす利用者のスルマさんから指摘し、ホテルとSENATURの関係者が真剣に聴き入ります。

根本的な改善が必要なこともありますが、少しの工夫でグッと使いやすさが良くなるポイントもありました。例えば、イベントスペースの入り口にあるスロープは、登り切ったところにかすかな盛り上がりがあり、車いす利用者が一人でこのスロープを上がるのが難しくなっていました。「最後の盛り上がりが無くなるように仕上げを滑らかにするだけで、かなり改善されます」とスルマさんが指摘しました。

また、足でペダルを踏む形式のゴミ箱は、さまざまな障害のある人にとって使いづらい可能性があります。例えば、ゴミ箱の蓋がスイング式であれば、使いやすく感じる人が多いでしょう。「すぐにスイング式にできない場合は、蓋に取っ手をつけて、手で開けられるようにするだけでも違う」とアドバイスしました。

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イベントスペースへのスロープは仕上がりを滑らかにすることで改善可能

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ペダル式のゴミ箱を使いづらく感じる人は多い

物理的アクセシビリティの改善はプロジェクトIMPACTOが取り組む3つの柱のうち一つです。本調査の結果を踏まえ、写真付きレポートに、物理的アクセシビリティ基準に即した改善提案をまとめ、ホテルとSENATURに共有し、アクセシブル・ツーリズムの推進に貢献したいと考えています。また、このような調査と提言に関心を持つ商業施設が増えるよう、働きかけていきます。

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調査参加者と共にホテルの正面玄関にて