プロジェクト概要

プロジェクト名

(和)フィリピン鉄道訓練センター設立・運営能力強化支援プロジェクト
(英)Technical Assistance Project to Establish of the Philippine Railway Institute

対象国名

フィリピン

署名日(実施合意)

2018年1月18日

協力期間

2018年5月21日から2024年6月21日

相手国機関名

運輸省(DOTr)

背景

フィリピンのマニラ首都圏は、人口が792万人(1990年)から約1.6倍の1,287万人(2015年)に急増し、人口密度も207.8人/haと、同国全人口の13%、GDPの40%が一極集中する国内最大の経済活動集積拠点となっている。また、マニラ首都圏に近接する3州を加えたメガマニラ圏でも、同期間に人口が1,293万人から2,577万人に急増しており、規模が拡大している。
これまでメガマニラ圏においては、軌道系交通整備は全般的に遅れており、3つの軽量高架鉄道の運行地域はマニラ首都圏に限定され、総延長50キロメートルに留まっている。
首都圏南方はフィリピン国鉄が通勤線としてマニラ市ツツバンから約28キロメートルのモンテンルパ市アラバンまでの区間を運行頻度の低い非電化路線として運営しているが、マニラ首都圏中心部から北方のマロロス市までの区間は、居住人口が増加しているが、これら首都圏北方の鉄道は未整備である。同エリアの住民はバス、ジープニー及び自動車等により高速道路等を利用してマニラ首都圏中心部へ通勤するが、高速道路出口であるカローカン市付近から首都圏中心部への道路の混雑等により、自動車速度は終日時速30キロメートル未満にとどまっており、大きな支障が出ている。
このように、マニラ首都圏における深刻な交通渋滞は、円滑な貨物物流や人々の移動のボトルネックとなり、渋滞による社会的費用損失は年間2.4兆円に達すると試算され、同国経済の国際競争力を低下させる要因の一つとなっており、マニラ首都圏を含むメガマニラ圏の南北地域を連結する大規模公共交通を確保することは喫緊の課題となっている。
このような背景下で、同国政府は、JICAが実施した開発調査(「マニラ首都圏総合都市交通改善計画調査」(1996年~1999年))により策定した都市開発計画と交通網整備計画(いずれも目標年次:2015年)に基づき、環状4号線及び5号線の立体交差化等の整備を実施してきた。また、JICAが策定を支援し、同国政府が承認した「マニラ首都圏の持続的発展に向けた運輸交通ロードマップ作成支援調査」(2014年)においては、マニラ首都圏の南北方向の近郊を結ぶ大規模公共交通網の整備を最優先課題としており、中でも「南北通勤鉄道事業(マロロス-ツツバン)」を優先案件と位置づけている。
この「南北通勤鉄道事業(マロロス-ツツバン)」については、JICAとフィリピン政府は円借款案件として2015年度にLAを締結し支援を実施しているところであり、また、発注者は「マニラ首都圏地下鉄事業(フェーズI)(第1期)」(以下、「地下鉄事業」という。)及び「南北鉄道事業南線(通勤線)及びマロロス-クラーク鉄道事業」についても円借款案件として形成中である。
このようにマニラ首都圏において、現在、大型都市鉄道事業を集中的に支援していることから、質の高い運営維持管理の人材を持続的に育成する仕組みを早急に構築することが不可欠となっている。このため同国政府は、鉄道の人材育成・監督機関としてフィリピン鉄道訓練センター(Philippines Railway Institute、以下「PRI」という。)を設立することとし、発注者にその設立等に向けた支援を求めた(2017年7月)。
本円借款附帯プロジェクトは、円借款事業である「南北通勤鉄道事業(マロロス-ツツバン)」を始めとして、後続する円借款事業である「地下鉄事業、南北鉄道事業南線(通勤線)、マロロス-クラーク鉄道事業」と並行して、今後フィリピンにおいて鉄道人材育成・監督の柱となるPRIの設立・運営能力強化の支援を行うものである。

目標

上位目標

フィリピンの都市鉄道システムがより安定的に運行される。

プロジェクト目標

PRIから鉄道人材が輩出される。

成果

1.PRIが組織として設立される。
2.フィリピン鉄道人材に係る法令・制度・ガイドラインが策定される。
3.研修計画及び教材が準備される。
4.研修が定期的に実施される。
5.研修施設・設備の導入に対する支援がなされる。
6.鉄道に関する研究開発機関としての機能に対する理解が促進される。
7.中長期的な鉄道整備の政策インプリケーションが提供される。
8.鉄道運営に係る安全規制・管理体制の提言がなされる。
9.信頼できる鉄道事業者の定義、及び安全・安心な鉄道運営における成功要因が明確化される。

活動

活動1-1.PRI設立に係る「マニラ首都圏地下鉄事業」のF/Sをレビューする
活動1-2.PRIの組織構成を定義する
活動1-3.PRI各部局の役割・機能・権限を定義する
活動1-4.PRIにおける人材育成計画を策定する
活動1-5.PRIの運営に必要な内部規程を策定する
活動1-6.PRIの長期事業計画を策定する
活動1-7.PRIの施設を活用する(プロジェクト後半に供用開始予定)
活動1-8.PRIの運営を改善する

活動2-1.PRC、TESDAと協議し、研修修了発行に係る体制構築を支援する
活動2-2.鉄道運転士免許制度及び免許発行に係る体制構築を支援する
活動2-3.監査など鉄道事業者の規制に関する制度・体制構築を支援する
活動2-4.鉄道人材育成研修に係るガイドラインを策定する
活動2-5.鉄道事業全般の規制に係る法令・規制当局の組織体制に係る提言を行う

活動3-1.鉄道事業者における訓練に関する現状確認及びニーズ調査を行う
活動3-2.必要な分野の研修モジュール及びカリキュラムを策定する
活動3-3.各研修の教材及び指導員用マニュアルを作成する
活動3-4.将来的に導入が必要と考えられるPRI用研修資機材を提案する

活動4-1.PRI指導員の応募条件を策定する
活動4-2.PRI指導員を募集・採用する
活動4-3.PRI指導員を育成する
活動4-4.日本人専門家の補助の下、育成された指導員による研修を試行する
活動4-5.PRI指導員により研修が定期的に行われる

活動5-1.PRIにおける研修に必要な資機材の仕様等について、「マニラ首都圏地下鉄事業」詳細設計チームに対して必要な情報を提供する
活動5-2.PRIにおける研修に必要な資機材の建設・調達等について「マニラ首都圏地下鉄事業」の施工監理コンサルタントから必要な情報を入手し、進捗に応じた対応を検討する

活動6-1.日本の鉄道関連研究に関する事例を紹介する
活動6-2.フィリピンに必要な鉄道に関する研究開発分野について検討する

活動7-1. 有識者会議のワークプランを策定する
活動7-2. 事務局として、開催支援と協議のファシリテートを行う
活動7-3. 今後予定のマスタープラン調査への示唆を行う

活動8-1. 有識者会議のワークプランを策定する
活動8-2. 事務局として、開催支援と協議のファシリテートを行う
活動8-3. 鉄道に関する規制改革のための制度整備への提言を行う

活動9-1. 有識者会議のワークプランを策定する
活動9-2. 事務局として、開催支援と協議のファシリテートを行う
活動9-3. 提言を鉄道事業者の選定に反映させる

投入

日本側投入

短期専門家:総括、チーフアドバイザー、組織・制度整備/研修所運営1、組織規程(総務・人事等1、経理・財務・調達・資材管理等1)、制度整備(事業者手続き規定・監査規程1、運転免許制度1、技能認定制度1)、研究企画、広報戦略/ITインフラ構築支援、研修計画(リーダー)/研修所運営2、安全マネジメント、運行安全/業務安全、運転(計画1、理論1、技術1)、駅務(計画1、規則・実務1)、工務(計画1、軌道1、土木1、建築1)、車両(計画1、本体・機器1、電気設備1)、電気(弱電計画1、強電計画1、設備1、信号・通信1、電力1)、業務調整/研修管理
本邦研修:全4回程度を予定

相手国側投入

カウンターパートの配置
プロジェクト事務所
プロジェクト運営費