プロジェクトパイロットサイト(ミルンベイ州)における踏査結果について

2015年8月10日

2015年8月2日から8日にかけ、プロジェクトのパイロットサイトである伐採事業実施箇所の踏査のため、カウンターパート機関から3名、日本人専門家チームから3名の計6名により出張しました。当プロジェクトではパイロットサイトとして、2つの伐採プロジェクトを選定のうえプロジェクト活動に取り組んでいます。2つのパイロットサイトはウェストニューブリテン州及びミルンベイ州にそれぞれ所在しており、前回(本年5月)はウェストニューブリテン州に所在する「Aria Vanu Blk2」というサイトを踏査のうえ現地の状況を確認しましたが、今回の出張ではもう一つのサイトであるミルンベイ州ファーガソン島(図1)に所在する「East Fergusson」という伐採プロジェクトを踏査のうえ、前回踏査と同様に現地の状況を確認しました。

今回の踏査では、伐採業者が行う伐採・集材方法の確認に加え、前回のウェストニューブリテン州のパイロットサイトと同様に、衛星写真等の空間情報によって、小規模な焼畑(Gardening)、林道・作業道(Logging Road)、択伐(抜き切り(Selective Logging))、及び集材路(Skidding Track)がどの程度検知可能なのか検証を行いました。検証に当たっては、Rapid Eye(注1)、Landsat Annual Greenest Pixel(注2)、及びPALSAR(注3)という衛星画像に加え、Landsat画像を利用して森林減少を解析したHansen data(注4)、CLASlite(注5)を用いてLandsat 画像を解析し、森林減少・森林劣化箇所を推定した結果を利用しました。

前回及び今回訪問した2つのパイロットサイトの踏査を終え、現時点ではデータが整備されておらず確認できなかったものや、状況や程度により検知の可否が異なるもの等もありますが、概ねどの空間情報で何が検知できるのかを確認のうえ、結果を取りまとめました(表1)。今後はこれらの情報を効果的に組み合わせて、プロジェクト成果として挙げられている、1)地図の更新を目的とした衛星画像解析、2)業者から提出される伐採計画の審査、監督等の伐採事業進行管理の改善、及び3)REDD+に取り組むための森林減少・劣化のドライバー(要因)の解析に役立てていく予定です。

(注1)Rapid Eye:カナダBlackBridge社が運用するドイツの衛星。同一の軌道上を5基の衛星が周回のうえ撮影を行う。解像度5m。2012年の日本の無償資金協力により、PNG全土の画像が供与された。
(注2)Landsat Annual Greenest Pixel:米国の地球観測衛星Landsatが1年間に同一地点にて撮影した最大20枚程度の画像の中から、最も雲が少なく、最も植生の活性度が高いピクセルをつなぎ合わせたもの。Google社と当プロジェクトの短期専門家派遣元である国際航業(株)との協定により高度な利用が可能となった画像。PNGにおいては1年の大半を雲で覆われている地点が多く、画像解析の支障になっていたが、この技術により雲の少ない画像の入手も可能となった。解像度30m。
(注3)Phased Array type L-band Synthetic Aperture Rader:我が国の陸域観測技術衛星「だいち2号(ALOS-2)」に搭載されている天候や昼夜に影響されないマイクロ波センサ。マイクロ波センサにより雲を透過して地上の状況を探査することが可能。解像度25m〜10m。
(注4)Hansen data:米国Maryland大学のHansen教授のチームによる森林減少データであり、Landsat 7号機及び8号機の画像を元に、一定のアルゴリズムを用いて5m以上の高さの植生が減少した箇所を検出したもの。
(注5)The Carnegie Landsat Analysis System Lite:米国カーネギー研究所のGreg Asnerとそのチームによって開発されたプログラム。森林の変化を検出するアルゴリズムを使うことにより森林減少(deforestation)及び森林劣化(degradation)を検出することができる。

【画像】(図1)今回訪れたパイロットサイト(赤丸の位置)

【画像】(表1)衛星画像等の空間情報により何が確認できたのかを取りまとめた表

現地で撮影した写真等

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ファーガソン島までは、大荒れの海の中、船で移動。船の名前(LAST BET(最期の賭け))が気になるが無事に到着。

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ファーガソン島周辺のマングローブ林。この地域においても区域は狭いがマングローブが見られる。

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上記の注釈で説明した3つの衛星画像。(a)Rapid Eye、(b)Landsat Annual Greenest Pixel、(c)PALSAR

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CLASliteの情報をLandsat Annual Greenest Pixelの画像上で重ねたイメージ。(青色が森林減少、緑色が森林劣化として探知された箇所)

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伐採予定地。この伐採区域には「Dillenia」と呼ばれる樹皮が赤いビワモドキ科の樹木が多く見られた。

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伐採現場付近の農地内にあった小屋。農作物の保存用に利用される。

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伐採現場で見つけたヤスデ。体表から黄色い毒液を出して外敵から身を守るとのこと。

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ミルンベイ州で購入した特産のネックレスとペーパーナイフ。ネックレスは「Bagi」と呼ばれ、同州で採れる貝を材料にして作られており、お金として使われることもある貴重品。