プロジェクト概要

プロジェクト名

(和)森林伐採モニタリングシステム改善を通じた商業伐採による森林劣化に由来する排出削減プロジェクト
(英)Capacity development project for reducing carbon emissions from forest degradation through commercial logging in PNG by improving monitoring system of forest logging operations

対象国名

パプアニューギニア

署名日(実施合意)

2021年12月7日

プロジェクトサイト

ポートモレスビー市、中央州 マーシャルラグーン、西セピック州 アマナブ ブロックス1-4、東ニューブリテン州 オープンベイ

協力期間

2022年4月14日から2025年4月13日

相手国機関名

(和)パプアニューギニア森林公社
(英)Papua New Guinea Forest Authority

背景

パプアニューギニア独立国(以下、「PNG」)政府は2005年の気候変動枠組条約締約国会議(COP11)において、途上国における森林減少・劣化による温室効果ガス排出削減(REDD)をコスタリカ共和国と共に提案し、2008年には気候変動関連政策立案などを担う気候変動室を設置するなど、気候変動対策を重要な政策課題の一つとして推し進めている。
PNGの憲法(1975)では森林を含む天然資源の持続的な保全・活用が謳われるなど森林セクターは同国の重要な開発政策に位置付けられている。また、PNG政府の開発戦略計画2010-2030(2010)では、持続可能で高収益な森林セクターの構築を目指すとしており、その戦略として森林資源インベントリ整備、持続可能な森林管理の促進などが示されている。PNG政府は、2021年に開催されたCOP26において、2030年までに森林の消失などを食い止め、森林保全や回復保全などに取り組む「森林・土地利用に関するグラスゴー・リーダーズ宣言」に署名し、森林減少に世界の国々と共同で取り組むこととするなど、森林減少・劣化対策を重要な政策課題の一つとして推し進めるだけでなく、また気候変動への適応・緩和の重要な対策として位置付けている。
このような背景を踏まえ、同国政府は、REDD+(開発途上国における森林の減少・劣化に由来する排出の削減等)を重要な政策課題に据え、その政策・制度面の策定に取り組んでおり、JICAを含め、FAOやUNDPなどのドナーが連携して、森林セクターへの協力が行われてきた。
我が国は、太平洋島嶼諸国地域への気候変動対策支援の一環として、森林資源情報を把握・解析するための機材を供与する「環境プログラム無償資金協力」を2010年より実施し、これと連携して、PNGでは、2011年3月からの3年間で「気候変動対策のための森林資源モニタリングに関する能力向上プロジェクト」、2014年8月からの5年間で「気候変動対策のためのPNG森林資源情報管理システムの活用に関する能力向上プロジェクト」を実施し、全国レベルの森林被覆図の整備、PNG森林資源情報管理システム(以下、「PNG-FRIMS」)の構築及びその活用による森林計画関連業務、森林モニタリング改善、REDD+関連の情報整備などにより、気候変動対策に資する持続可能な森林管理に向けた環境整備支援を行ってきた。
これまでの協力で、森林資源情報については基礎的なデータが整備され、またモニタリング体制に関しても一定の能力向上が図られてきた。一方、PNGにおいては、持続可能な森林管理や気候変動対策を進める上で、木材生産・輸出が財政的に重要な位置を占めている(注)が、森林局職員が伐採業者に対し、伐採活動が持続可能な方法で行われるかチェックするための指導監督業務が効率的に行われておらず、課題となっている。
このような状況を踏まえ、本プロジェクトでは、PNGにおける温室効果ガス排出の最大要因である森林劣化・減少の改善に直接的に貢献する、関係者による伐採活動に関する規則や手順の順守、天然更新、環境負荷の低い伐採などに関する技術などについて関係者の能力向上を図り、あわせて森林から排出される温室効果ガスの測定などREDD+の実施能力向上を図ることにより、森林の減少や劣化の改善を図り、同国の持続可能な森林管理の促進及び森林由来の温室効果ガスの排出の削減に寄与し、NDC(Nationally Determined Contribution:国が決定する貢献)のPNGにおける実施に直接的に貢献する内容となっている。

大洋州地域に対する我が国のODA基本方針として、2021年7月に開催された第9回太平洋・島サミット(PALM9)における首脳宣言の中で、「気候変動・防災」を重点分野の1つとして掲げており、温室効果ガス排出削減(緩和)及び持続可能な森林経営の支援を表明している。外務省の「対パプアニューギニア独立国 国別開発協力方針(2017年7月)」では、重点分野のひとつに「環境・気候変動・防災」を揚げており、その支援の一環として「緩和策・適応策の両面から森林保全等の気候変動対策」について支援を行うことが謳われている。2022年11月に開催された国連気候変動枠組条約第27回締約国会議(COP27)では、我が国とPNGの間で二国間クレジット制度(JCM:Joint Crediting Mechanism)の構築に関する協力覚書の署名が行われ、JCMを通じたPNG国内の温室効果ガスの排出削減等に関する事業の実施による、両国のNDC(国が決定する貢献)への貢献が期待されている。
また、本案件はPNG国内の伐採業者に対し、天然林における適切な森林伐採の手続きや天然更新技術の普及を図ることにより持続的森林管理を推進することから、JICAのグローバルアジェンダ「自然環境保全」におけるクラスター1)「陸域持続的自然資源管理」の実現を目指すものである。
本事業はSDGsゴール13「気候変動に具体的な対策を」およびゴール15「陸の豊かさも守ろう」に貢献する。

(注)PNGの丸太輸出額は約1,226百万キナ(約393百万USドル)(2018年、PNG森林公社)、輸出総額26,012百万キナ(PNG国家統計局)の約5%となっている。

目標

上位目標

PNGの森林が保全され、持続的な形で管理され、そして同時に気候変動に対する重要な対策として推進される。

プロジェクト目標

森林劣化の状況の改善と低排出伐採の促進に向け、伐採作業や天然更新の規則及び手続きの実施のための関係者の能力が強化される。

成果

1.プロジェクト関係者(政府、木材産業等)に、PMCP(Planning, Monitoring, and Control Procedures for Natural Forest Logging Operation)とLCoP(Logging Code of Practice)が十分に理解され、利用される。
2.天然更新を効果的に実施するための関係者(政府、木材産業、土地所有者等)の能力が向上される。
3.伐採作業での現場の炭素モニタリング手法が開発される。

活動

成果1関連

1-1.PMCPやLCoPの利用実態や伐採活動に関連する情報フローを調査し、課題を抽出する。
1-2.活動1-1で整理された情報を踏まえ、PMCPやLCoPを遵守した森林管理を効率的に進めるためのPNG-FRIMSの強化及びGIS(地理空間情報システム)やリモートセンシングに関する新たな技術の活用方法について検討し、特定する。
1-3.PMCPやLCoPを遵守した森林管理を試行するパイロットサイト選定のための条件を設定し、パイロットサイトを決定する。
1-4.パイロットサイトにおいて、活動1-2で特定された技術を試行する。
1-5.関係者を対象としたPMCPとLCoPの効果的な普及方法を特定し、PNG森林公社職員に対して研修を行う。
1-6.PNG森林公社職員が伐採業者職員を対象としたPMCP及びLCoPの普及活動を実施する。
1-7.PNG森林公社がプロジェクトの成果を関係者に普及するための、活動の成果に関するプログラムと資料を準備し、ワークショップを開催する。

成果2関連

2-1.伐採後の天然更新が確実に行われるにあたっての課題を抽出する。
2-2.活動2-1で抽出された課題を解決するための主要な関係者の特定と実施体制及び技術的改善策を検討する。
2-3.活動1-3で決定されたパイロットサイトにおいて、PNG森林公社職員と主要な関係者による天然更新に関するパイロット活動を実施する。
2-4.主要な関係者と協力して、使用者マニュアル案を作成する。
2-5.天然更新を普及させるための使用者マニュアルを最終化し、PNG森林公社職員と主要な関係者に共有する。

成果3関連

3-1.PMCPやLCoPの遵守が低排出な伐採作業に及ぼす影響についてレビューする。
3-2.低排出な伐採作業を評価するための指標(搬出路や土場の面積、伐倒時の支障木など)を特定する。
3-3.パイロットサイトでの検証により、伐採作業による炭素排出量をモニタリング、記録、報告または低減するための手法を特定し、開発する。
3-4.PNG森林公社の現地職員へ、炭素モニタリングを導入するための研修プログラムを策定し、実施する。
3-5.低排出伐採が行われているサイトに対してインセンティブを与えるための具体策を取りまとめる。
3-6.活動3-1から活動3-5を踏まえ、森林炭素モニタリング及び伐採活動からの排出削減に関する具体策を取りまとめる。
3-7.プロジェクト活動の成果を普及させるためのワークショップを開催する。

投入

日本側投入

・専門家:長期専門家2名(チーフアドバイザー/森林政策、業務調整)、短期専門家6名(総括、森林管理、森林炭素モニタリング、森林更新、森林情報/測定、研修/出口戦略)
・研修受け入れ:課題別研修:持続可能な森林経営のための政策立案の強化、国別研修:持続可能な森林管理
・機材供与:車両、研修や調査に必要な機材、その他プロジェクトの実施に必要な機材

相手国側投入

・カウンターパートの配置:プロジェクト・ディレクター、副プロジェクト・ディレクター、プロジェクト・マネージャー、副プロジェクト・マネージャー、PNG森林公社技術職員、その他の支援職員
・その他:適切な執務室と必要な設備、機械、装置、器具、車両、工具、予備部品、その他必要な資材の提供または交換、PNG森林公社施設への入室管理カード、プロジェクトに関連するデータ(地図、写真を含む)情報等、プロジェクト運営経費