WAMCAB対象3郡においてSHEPワークショップを開催しました

2022年9月15日

現在、WAMCABは「技術指導フェーズ」を2023年3月までの予定で実施しており、対象3郡(ギサガラ、ルワマガナ、ンゴマ)のモデル地区において灌漑水利組合(IWUO)や農協の組織強化、研修の実施を進めています。2023年4月からは「制度化・普及準備フェーズ」に移行し、「技術指導フェーズ」で確立された技術や普及モデルを、郡内へ面的普及する計画です。

プロジェクト上位目標「IWUOによる灌漑地区管理のモデルがターゲット郡で実践される」は、5つの成果で構成されています。そのうち成果5「モデル地区における営農活動が促進される」では、灌漑施設のエンドユーザーである、農協や農家の営農活動支援を行っています。具体的には、適正技術の習得及び生産性向上を目指した、デモ圃場における栽培技術研修やマーケティング研修や、農協組織強化を目指した運営管理・ジェンダー研修を実施しています。また、農家の関心をひくために、市場価値の高い野菜や輸出作物の試行栽培も行っております。

この一環として、2022年8月にSHEP(Smallholder Horticulture Empowerment and Promotion)ワークショップ(以下、SHEP WS)を実施しました。SHEPは従来の作付け体系に基づいた“作って売る”から市場需要を視野に入れた戦略的な“売るために作る”という発想のもと、農家のマインドセットに変化を与え、営農スキルや栽培技術の改善によって所得向上を目指す普及アプローチです。
WSは7名のTFメンバー(注1)に加え、対象郡のセクターアグロノミスト(以下、SA)を招待しました。ルワンダの行政単位は郡→セクター→セル→村の順で、各セクターにSAが配置されています。SAはより現場に近い職員で、セル・村単位で農家に様々な営農支援・管理業務を行っており、ルワンダの農業振興に不可欠な存在です。現場の末端までSHEPアプローチを広く普及していくためには現場に近い人材の活用が成功の鍵になると考え、SAを参加対象としました。

WSは対象3郡において、各2日間かけて実施されました。研修講師は日本人専門家に加え、JICA課題別研修「市場志向型農業振興(行政官)コース」の受講者(注2)が研修講師を務めました。座学と演習の2パートで構成され、座学ではSHEPの目的やコンセプト等の説明、演習ではSHEPのステップに沿ってマーケット調査、作物選択、作物カレンダーの作成が行われました。SAの日常業務はCIP(注3)作物の栽培振興、圃場管理が主要であり、マーケティング関連の業務経験が少ないため、彼らにとって新しい気づきの連続でした。

参加者は、ルワンダ政府が取り組んでいるTwingire Muhinzi(注4)といった既存の普及アプローチとの違いに当初は困惑していましたが、グループワークの演習を進めていくうちに白熱した意見交換が繰り広げられ、疑問点が解消し、SHEPに対する理解が次第に深まっていきました。後半はPCM手法に沿って問題分析・目的分析を行い、担当のセル・村で直面している問題や課題を洗い出し、目的分析では自身の業務範囲で対応できる解決策を提示していきました。そしてこれらの分析結果を活用し、最終的に各SAはSHEPを普及していくためのアクションプランを作成しました。

SAは自らが作成したアクションプランの実行に積極的な姿勢を示し、日常の業務にSHEP普及の活動を取り入れることを約束しました。WAMCABは引き続きSAの活動を支援していきます。そして本WSがToT(講師育成研修)の機能を果たし、今後、参加者から周辺の地方職員や末端農家にSHEPが共有・移転されることを期待します。

(注1)TF(タスクフォース)とは中央レベルと地方政府機関との縦連携、組織間・部署間の横連携の強化を図っていくために設立された組織で、RAB(Rwanda Agriculture and Animal Resources Development Board, ルワンダ農業・動物資源開発庁)のステーション職員と郡庁職員で構成される。
(注2)2022年5月に実施された。当該受講者はRABステーション職員であり、TFメンバーの1人。
(注3)ルワンダ政府が食料安全保障と自給率改善に向けて策定したプログラムで、メイズやコメ等の穀物の栽培振興を図るもの
(注4)政府が取り組んでいる農家間の農業普及プログラム

(WAMCAB専門家:BENINKA Geraldine、望月沙紀)

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作物カレンダーの作成(ギサガラ郡)

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グループワークによる問題分析(ルワマガナ郡)

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ローカルマーケットで市場調査(ンゴマ郡)

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ギサガラ郡長による激励挨拶