2018年度 一年間の活動のまとめ

2019年5月29日

第1回

2018年3月 森林分野専門作業部会の立ち上げ

本プロジェクト日本人専門家とプロジェクト実施機関である森林研究省の呼びかけで、「ソロモン国森林分野専門作業部会」が立ち上がりました。メンバーは、森林研究省やソロモン国立大学、森林関連セクターで事業を展開している援助機関やそのプロジェクト、またNGO等です。2018年3月13日に開催した第1回会合で、同作業部会が担う役割や会合の頻度等にかかる議論や、メンバー間のコミュニケーションを促進するためのメーリングリスト立ち上げ、今後のメンバー拡大に向けた意見交換等が積極的に行われました。また本プロジェクトが向こう2年間、同作業部会の運営を森林研究省と協力して行う事務局としての役割を担うことが決まりました。

【画像】第1回森林分野専門作業部会 集合写真

4月~6月 試験事業地選定に向けた準備

本プロジェクトでは試験活動という位置づけで、住民自身による持続的森林資源管理の実現可能性を模索している森林研究省の取り組みを支援しています。これは多民族・多文化国家であるソロモン国において、各コミュニティが有する独自の文化や社会的風土に適した「持続的森林資源管理」の多様な在り方を前提に、森林研究省職員(以下、「省職員」)の対コミュニティ支援能力向上を目的とした活動です。そのため、コミュニティに関する情報収集から、サイトの選定、活動実施にかかるコミュニティとの合意形成、コミュニティとの森林資源管理計画作り、そしてその実施やモニタリングに至る一連の活動に、省職員が主体的に取り組むことが求められています。本プロジェクト日本人専門家はこの一連のプロセスを省職員が実施できるような体制作りを支援しています。

試験事業地の選定に向けた準備作業として、森林研究省が考える「住民参加型持続的森林資源管理」の方向性の検討や、試験事業地候補のリストアップ及び同事業地についての情報収集、そして森林研究省とJICAとの間ですでに合意されている選定基準に基づいた選定過程及びスケジュールの検討に取り組みました。

第2回

6月 第2回JCC会議及び第2回森林分野専門作業部会会合

プロジェクト実施機関である森林研究省は4年毎に事業計画として「コーポレートプラン(森林研究省中期計画)」を策定しています。現行の「コーポレートプラン2015-2018」が2018年で終了するため、本プロジェクトでは、旧コーポレートプランのレビュー及び課題分析を行った上で、より持続的な森林資源管理の実現に向けた次期「コーポレートプラン2019-2022」の策定支援を行っています。

6月に開催した第2回合同調整委員会(Joint Coordinating Committee、以下、「JCC」)では、これまで進めてきた「コーポレートプラン2019-2022」草案作成作業及び試験事業地選定にかかる進捗を報告し、2018年下半期のプロジェクト活動計画への承認を得ました。コーポレートプランの策定及び試験事業地の選定は2018年末までに終える計画です。

【画像】第2回JCC 集合写真

JCCの翌日には第2回森林分野専門作業部会の定例会合を開催しました。第1回会合時に提案のあった民間セクターの利害関係者を巻き込むべく、製材会社及び木材輸出会社で組織されているソロモン国木材加工・輸出協会を新たなメンバーとして迎えました。また、森林分野において現在どの組織がどのような活動やプロジェクトを展開しているのか森林研究省及び参加メンバーが把握できるよう、第一回会合で共有された各メンバーの活動概要を本プロジェクトで取りまとめるとともに、ソロモン国の最上位開発計画である「国家開発戦略(National Development Strategy)の枠組みに沿って整理した『森林分野支援活動一覧』を発表し、承認されました。同活動一覧は今後も定期的にアップデートを実施していきます。

【画像】第2回森林分野専門作業部会会合 集合写真

7月~10月 試験事業地候補の絞り込み

森林研究省が推薦する複数の試験事業地候補に対して、省職員と共に収集した情報に基づいて絞り込みを行い、事業成功の可能性が高いと思われるコミュニティ6か所を選定し、順番に訪問して回りました。その際、省職員の対コミュニティ支援にかかる能力強化を図ることを目的に、コミュニティに対して「持続的森林資源管理」についての啓発活動と、参加型手法・ツールを用いた情報収集及びコミュニティのプロファイル(基礎情報票)作成を実施しました。

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女性グループによるマッピング(注1)作業風景

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持続的森林資源管理に係る啓発活動の様子

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男性グループによるマッピング作業風景

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作成した季節カレンダー(注2)の発表の様子

(注1)参加型開発手法で使用される参加型ツールの一つ。参加者自身が生活圏や村の様子などを地図に描くことにより、自身を取り巻く環境・状況への理解を深めることを目的とする。

(注2)参加型開発手法で使用される参加型ツールの一つ。参加者の一年間の生活リズムを可視化するために作成される。

第3回

11月 国際熱帯木材機関(International Tropical Timber Organization)年次総会へのオブザーバー参加

ソロモン国のような熱帯地域の森林資源の保全と持続可能な経営・利用、そして持続的かつ合法的に管理された熱帯木材資源の貿易拡大・多角化を促進する国際熱帯木材機関(International Tropical Timber Organization。以下「ITTO」)は横浜に本部を置く国際機関です。ITTOでは毎年、加盟している熱帯木材産出国及び木材輸入国が一堂に会する総会を開いていますが、ソロモンは木材産出国にも関わらずITTOに未加盟なため、これまで参加していませんでした。

本プロジェクトが2月に実施した本邦研修で森林研究省幹部を日本に招聘した際、森林研究省幹部はITTO事務局を表敬訪問し、ITTOが推進する熱帯地域における持続可能な森林資源管理や貿易等にかかる取り組みついての理解を深め、この訪問をきっかけに、ソロモン政府内でITTO加盟を検討する動きが生まれました。さらにITTO事務局より年次総会へのオブザーバー参加を求める書簡がソロモン森林研究省に届いたため、11月の2018年度ITTO年次総会にソロモン国政府代表として森林研究省事務次官たちが初めて参加しました。なお、ITTO年次総会に参加した森林研究省幹部が作成したITTO加盟にかかる意見書は、2019年にソロモン政府内閣に提出される予定です。

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ITTO年次総会にオブザーバー参加した森林研究省幹部と本プロジェクト加藤専門家

11月~12月 試験事業地の決定と第3回JCC会議及び第3回森林分野専門作業部会会合の実施

森林研究省幹部と進めてきた事業計画「コーポレートプラン2019-2022(森林研究省中期計画)」の草案は11月上旬に完了し、プロジェクト会議で最終化されました。また試験事業地選定では、絞り込まれた試験事業地候補のうち、最も事業成功可能性が高いと判断されたガダルカナル州のコムニボリ村とマライタ州のファラケ村の両コミュニティから「持続的森林資源管理にかかる関心表明(Expression of Interest)」が森林研究省に提出され、同コミュニティと森林研究省、本プロジェクトとの間で試験活動実施にかかる覚書(Memorandum of Understanding)を締結いたしました。最終化された「コーポレートプラン2019-2022」及び試験事業地選定結果は12月に開催された第3回合同調整委員会(Joint Coordinating Committee。以下、「JCC」)会議で正式に承認されました。

また11月後半には第3回森林分野専門作業部会会合を開催しました。今回はソロモン国に2社しか存在しない民間造林会社のうち、ベニヤ製造を行っているEagon Pacific Plantation Ltd社が参加し、同社の事業概要について発表しました。加えて、新たなメンバーとして、ウェスタン州で育種研究及び小規模林家(注3)の木材加工支援などを行っているオーストラリア国際農業研究センター(Australian Centre for International Agricultural Research:ACIAR)支援プロジェクトからも参加があり、これまで10年近くに渡って続けられてきた同プロジェクトの取り組みを発表しました。

(注3)1ha以上の私有林(個人有林)を保有する世帯のこと

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コーポレートプラン会議で説明する本プロジェクト西川チーフアドバイザー

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コミュニティとの覚書締結の様子

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第3回森林分野専門作業部会会合でプロジェクト概要を説明するACIAR ProjectのDr. Tim氏

第4回

2019年1月 短期専門家チームの着任と第4回JCC会議

本プロジェクトに、7名の専門家で構成される短期専門家チームが加わり、2019年の活動がスタートしました。その第一次派遣として、1月13日から高橋専門家と奈良原専門家が、1月20日からは短期専門家チームの総括である原口専門家が着任しました。同派遣に併せて第4回合同調整委員会(Joint Coordinating Committee。以下、「JCC」)会合を開催し、短期専門家チームから担当する業務内容が説明され、修正版の事業実施計画(Plan of Operation)がJCCで承認されました。短期専門家チームは主に森林情報ツールの開発及び長期専門家と共同して、森林研究省の試験事業活動実施を支援します。

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原口総括による短期専門家チームの業務内容にかかるプレゼンテーション

2月 試験活動開始ミーティング

試験事業活動支援を担当する奈良原専門家と共に、試験事業地コミュニティを訪問し、試験事業活動開始ミーティングを開催しました。同ミーティングでは2019年の活動計画を説明し、住民からの同意を得ました。また同ミーティングに先駆けて、試験事業地のあるガダルカナル州とマライタ州に駐在している森林研究省職員を対象に、対住民・コミュニティ支援にかかる基本姿勢についてワークショップ形式で学んでもらう導入研修を実施しました。

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奈良原専門家による森林研究省職員への導入研修の様子

3月 試験活動用林地の境界線調査

試験事業地に選ばれたコミュニティはこれからプロジェクト終了まで、森林研究省の支援の下で持続的森林資源管理に向けた試験事業活動を実施します。2019年は、その活動計画作りと計画作りに必要な調査を主に実施していく予定です。その第一弾として、試験事業活動用に割り当てられた林地の境界線調査を行いました。これは住民自身が予めコミュニティ内で相談し合って決めた森林資源を自ら管理したい林地(対象地)の地理情報を全地球測位システム(Global Positioning System, 以下「GPS」)を使って正確に測定する調査です。今回の調査では、事前に確定していた対象地の境界線をGPSを使って位置情報を確認しながら、その境界線の目印として、境界線上にある木に塗料で目印を付けていきました。また取得した境界線のGPS位置情報は地理情報システム(Global Information System、以下「GIS」)のマップ情報に落とし込み、対象地の面積測定に利用されます。次はこの対象地内にどの程度の森林資源があるのか確認するドローン調査及び森林資源調査(注4)を行う予定です。

(注4)森林資源の把握、森林施業計画の立案等のために実施される調査で、樹木の胸高直径や樹高、樹種等を測定・同定し、材積量等の対象林地内における森林資源の確認を行うものである。

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森林研究省職員によるGPSを使った境界線調査の様子

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境界線の目印となる木に住民が印をつけている様子