2019年度 一年間の活動のまとめ

2020年6月16日

2019年4月 第4回森林分野専門作業部会会合の開催

約40名の関係者が参加して、第4回森林分野専門作業部会会合を開催しました。今回は初めての試みとして参加者全員で「森林認証制度の経済的な実現可能性」についてオープンディスカッションを行いました。森林認証制度は素晴らしい制度ではあるものの、ソロモンでは経済的に実現の可能性は低いのではないかとの結論に至りましたが、森林分野専門作業部会にふさわしい活発なオープンディスカッションとなりました。

【画像】第4回森林分野専門作業部会会合 集合写真

5月~6月 試験活動用林地のドローン調査及びGPSトランセクトウォークの実施

試験活動用林地(パイロットサイト)として選定された、ガダルカナル州コムニボリコミュニティー及びマライタ州ファラケコミュニティーのドローン調査及びGPSトランセクトウォークを実施しました。ドローン調査については、別にレポートをしていますので、そちらをご参照下さい。

GPSトランセクトウォークとはカウンターパート(C/P)、住民との資源・地図情報の共通認識の醸成を目指す「Integrated Map Making 活動」の一環としてGPSやタブレット端末、そして大判印刷地図を活用して特定地域内の資源位置情報を確認するものです。専門家がパイロットサイトコミュニティーに対して住民による土地利用計画策定の準備段階として「住民参加型モニタリング」の一部手法を取り入れて、GPSトランセクトウォークの目的や意義、具体的な活動内容について説明しました。GPSトランセクトウォーク前には、住民自身が作成した資源マップをレビューし、衛星画像を大判印刷したものに資源情報を書き込んでもらう作業を行いました。

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高橋専門家によるドローン調査の様子

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高橋専門家による調査前のドローン研修の様子

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資源マップのレビューの様子

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金子専門家によるタブレット端末及びAvenza Map利用にかかる指導

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Avenza Map上で取得した資源の位置情報及びアクセスロード(ファラケコミュニティー)

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Avenza Map上で取得した資源の位置情報及びアクセスロード(コムニボリコミュニティー)

7月 第5回JCC会議の開催及び第三国研修の実施

第5回Joint Coordinating Committee(JCC)が開催されて、2019年前半の活動進捗を報告すると共に今後1年間の活動が承認されました。パイロットサイトにおけるコミュニティーでの活動が本格化したことを報告しましたが、他の省庁も含めてコミュニティーでの活動に対する関心はとても高く、これまでプロジェクトで実施してきたパイロットサイトにおける活動に高い評価をいただきました。加えて今後のコミュニティーにおける活動の継続性や拡張性から、参加者全員が予算と人員確保が重要であることを改めて認識しました。

また(Papua New Guinea)PNGで第三国研修が開催され、森林研究省からは事務次官、次官補2名、マッピング担当職員が参加しました。研修参加者はPNGで実施されていたJICA森林プロジェクトから森林情報ツールなど多くのことを学んだほか、PNG森林省やPNG Forest Authorityとも意見交換を行いました。森林を取り巻く状況が似ている両国が今後も密接に協力していくことは重要であり、JICAがその橋渡しの役目を果たすことが期待されています。

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第5回JCCの記事が掲載された新聞

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第三国研修の最終セミナーで挨拶をするソロモン森林研究省事務次官

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第三国研修でVarirata National Parkを視察した際の様子

7月~8月 森林資源調査にかかる能力強化研修及び2019年度カウンターパート研修の開催

プロジェクトはパイロットサイトの森林調査、ドイツ国際協力公社(GIZ)は森林インベントリ研修が各々の活動項目にあったことから、森林研究省、プロジェクト、GIZが共同で「森林資源調査にかかる能力強化研修」を開催しました。約2ヵ月間に亘る研修は森林省職員の能力を大いに向上させるものでした。この研修でプロジェクトの両パイロットサイトの森林を隅々まで調査しましたが、何れのパイロットサイトでも通常考えられる森林施業は行われていませんでした。草木の成長が早く、多少森林が劣化しても直ぐに回復する森林に対して、継続的に人の手を入れることが容易ではないことが良く理解できました。今後はパイロットサイトで適切な森林施業をコミュニティーが主体となって実施することになりますが、十分な準備が必要であることを実感しました。

森林研究省から森林資源管理・技術部長ほか職員4名が参加して2019年度のカウンターパート研修が実施されました。研修の1~3週目は、ドローン、3D解析、SATOYAMAイニシアティブ、官民連携、水源林の保全活動、野生動物モニタリング、日本の林木育種の課題や手法などを学んだ後、北海道へ移動してGIS/リモートセンシングを学習しました。このカウンターパート研修に参加した森林研究省職員からも有意義な研修であったといった高い評価を得ています。

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森林資源調査にかかる能力強化研修の土壌調査の様子

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森林資源調査にかかる能力強化研修の実技演習の様子

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森林資源調査にかかる能力強化研修の実技演習の様子

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森林資源調査にかかる能力強化研修用に作成したプロットマップ(ドローン調査による写真を活用)

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本邦研修において研修員がSATOYAMA イニシアティブの概要と事例を学習する様子

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本邦研修において研修員がGIS/リモートセンシングを学習する様子

9月 第5回森林分野専門作業部会会合の開催及び社会経済調査・マーケティング・アグロフォレストリー調査とGPSトランセクトウォークのフィードバックを実施

41名の関係者が参加して、第5回森林分野専門作業部会会合を開催しました。ソロモン政府が中国と国交を樹立したこともあり、ドナーを中心としてこの作業部会へ高い関心が寄せられた結果、新たにニュージーランドハイコミッション、Non-Governmental Organization(NGO)、Community Based Organization(CBO)、製材会社協会、木材伐採企業協会が参加しました。冒頭で、森林研究省からソロモンの森林の現状を数値データなどによる丁寧な説明がありました。CBOの代表からは「森林資源及び土地の所有者は国家でも政府でもなく、教育を十分に受けていない地方住民です。政策の策定には地方住民が森林管理の実施主体といった視点が必要ではないでしょうか」などのコメントがありました。ソロモンの貴重な森林資源に対する利害関係が垣間見える会合になりましたが、プロジェクトでは今後ソロモンの森林セクターにおける関係者間の協力体制を更に強化する必要があることを再認識しました。

住民参加型森林モニタリング専門家、社会経済分析専門家、アグロフォレストリー専門家、マーケティング/バリューチェーン分析専門家による調査とGPSトランセクトウォークのフィードバックが行われました。これらの専門家による調査活動は、長期専門家より1.5年程遅れて調査せざるを得なくなったことから、多くの調査時期が重なりましたが、コミュニティーでの活動計画が練られること、調査結果をプロジェクトのベースラインデータにすることを目的に、集中的な調査活動が実施されました。またコミュニティーによる土地利用計画策定の準備段階として、GPSトランセクトウォークの結果のフィードバックがコミュニティーに対して行われました。今後プロジェクトでは、コミュニティーに対してよりわかりやすく、利用しやすい形で情報を提供するために、現場の情報を記載した大判の地図を作成する予定です。

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第5回森林分野専門作業部会会合 集合写真

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金子専門家によるGPSトランセクトウォークの分析結果のフォローアップの様子

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山内専門家によるアグロフォレストリーにかかる理解・実践についてのヒアリングの様子

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奈良原専門家による社会経済分析調査の様子

10月 土地利用計画の策定及び2019年度カウンターパート研修のフォローアップの実施

ファラケとコムニボリの両パイロットサイトコミュニティーに対して、GPSトランセクトウォークの結果のフィードバックが行われたことを受けて、コミュニティーの住民が主体になって土地利用計画を策定しました。まず両パイロットサイトで土地利用計画のフォローアップが実施されました。その後プロジェクトがドローン画像や衛星画像などのデジタル技術を使ってコミュニティーを支援しつつ、現在の土地利用状況の確定と将来の土地利用計画を議論したうえで土地利用計画が策定されました。

また森林研究省においてカウンターパート研修のフォローアップを実施しました。フォローアップではGPSタブレット端末を使用した森林モニタリング研修の復習が実施され、森林情報ツールに関する仕様検討のワークショップも実施されました。ワークショップでは森林情報ツールのデモ版を使用して画面仕様と業務ワークフローが検討されました。森林情報管理の導入については、森林研究省のマッピング技術担当者が日常業務に追われていることから多少の困難が予想されますが、森林研究省の能力強化を図るためにこれからもドローン研修とワークショップを継続して実施する予定です。

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加藤専門家による土地利用計画のフォローアップの様子

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コムニボリコミュニティーでの土地利用計画の様子

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ファラケコミュニティーでの土地利用計画の様子

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吉村専門家と高橋専門家によるカウンターパート(GPS)研修のフォローアップの様子

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吉村専門家と高橋専門家によるカウンターパート研修のフォローアップ(森林情報ツールのデモ)の様子

11月 ドローン研修及びアグロフォレストリー研修の実施

森林研究省でドローン研修が実施されました。このドローン研修もカウンターパート研修のフォローアップという位置付けですが、カウンターパート研修の中で要望の高かったドローンの研修を改めて実施しました。このドローン研修と合わせて森林情報ツールに係るワークショップも実施されました。そのワークショップでは画面仕様の共有、ワークフローの資料化、基本設計の資料化を行いました。

またファラケとコムニボリの両パイロットサイトでは、アグロフォレストリー導入研修を実施しました。アグロフォレストリー活動に関する詳細計画策定の準備段階として、季節カレンダーの作成と活動のモニタリングもコミュニティーで実施できるようにベースライン取得方法を指導しました。加えて、アグロフォレストリー導入研修において、パイロット活動の主体はコミュニティーであり、プロジェクトからの物的・経済的支援は限定的であることを改めて説明しました。

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高橋専門家によるドローンの現場研修の様子

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原口専門家による森林情報ツールワークショップの様子

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高橋専門家によるドローンの現場研修の様子

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山内専門家によるファラケコミュニティーでのアグロフォレストリー導入研修の様子

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山内専門家によるコムニボリコミュニティーでのアグロフォレストリー導入研修の様子

2020年1月 第6回森林分野専門作業部会会合及び第6回JCC会議の開催

約40名の関係者が参加して、第6回森林分野専門作業部会会合を開催しました。ソロモンの森林分野に対する関心は引き続き高く、Millennium Challenge Corporation(MCC)、European Forest Institute(EFI)などのドナー関係者も新たに参加したうえで今後の活動の連携について活発な意見交換が行われました。プロジェクトはこの作業部会の事務局として、参加者に対して部会の運営規約・要綱を提起したほか、今後2年間も継続して作業部会の事務局を務めることを提案し、参加者から承認をいただきました。これまでと同様に作業部会を通じて森林研究省と関係者間の協力体制の強化を図る予定です。

また第6回JCCが開催され、2019年後半の活動進捗を報告すると共に今後1年間の活動が承認されました。短期専門家チームはこのJCCにおいて森林情報ツールの公式名称を仮決定するとともに、最終化されたマーケティング/バリューチェーン分析の報告書を共有したほか、社会経済分析専門家の交代について森林研究省へ報告しました。加えて、JCCに合わせてカウンターパート研修とJICA課題別研修の帰国報告会が行われ、研修参加者が日本で学習した研修内容を発表しました。

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第6回森林分野専門作業部会会合 集合写真

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第6回JCC 集合写真

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研修参加者によるカウンターパート研修帰国報告会の様子

2月 森林管理計画の策定及びGIS・マッピング・森林情報ツールの研修を実施

佐藤専門家がコムニボリパイロットサイトとファラケパイロットサイトで森林管理計画案の策定支援を行いました。コムニボリパイロットサイトの森林は共有林的な考え方であり、ファラケパイロットサイトは組合林の様な形態ですので、それぞれのパイロットサイトに対して異なるアプローチを実施しなければいけないところが難点になります。パイロット活動詳細計画策定の準備として、アグロフォレストリー専門家と社会経済分析専門家も両パイロットサイトでの調査を再開しました。

またリモートセンシング/GIS専門家とリモートセンシング/ドローン解析/GIS専門家が森林研究省森林開発・造林部の職員を対象とした第2回GIS・マッピング・森林情報ツール研修を実施しました。GPS活用マニュアルを作成するとともに、森林情報ツールのコンテンツとなる流域界・High Conservation Value(HCV)マップの研修も行い、マップ作成の体制を整えました。

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吉村専門家によるGPS研修の様子

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高橋専門家によるドローン研修の様子

3月 アグロフォレストリ-を含む生計向上計画の策定及び「コーポレートプラン2020‐2023」最終版の完成

コミュニティーの住民が作成した土地利用計画に基づいて、アグロフォレストリー詳細計画策定のワークショップが両パイロットサイトで開催されました。そのワークショップでは植栽樹種と作物の選定、アグロフォレストリーサイトの区画設定を行いました。加えて、アグロフォレストリー以外の代替生計活動計画に係る詳細計画策定作業にも着手しました。この作業ではWealth rankingを導入し、両パイロットサイトコミュニティーに合意を得たうえで基準や指標の設定を行いました。

また2018年12月に最終化した「コーポレートプラン 2019‐2022」に新政府の"Democratic Coalition Government for Advancement (DCGA)"政策を盛り込んだ「コーポレートプラン」を作成して欲しいという要望が森林研究省からあがってきました。これを受けて「コーポレートプラン2019‐2022」の改訂に着手しました。森林研究省幹部職員を集めて、2回のレビューを実施し「コーポレートプラン2020‐2022」を最終化しました。

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山内専門家によるアグロフォレストリーサイト区画設定の様子

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山内専門家によるアグロフォレストリーワークショップの様子

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福山専門家によるWealth rankingワークショップの様子

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コーポレートプラン2020-2022表紙