プロジェクト概要

プロジェクト名

(和)ジュバ市きれいな水供給プロジェクト
(英)The Juba City Clean Water Supply Project

対象国名

南スーダン

署名日(実施合意)

2021年11月30日

プロジェクトサイト

ジュバ

協力期間

2022年3月22日から2025年3月21日

相手国機関名

(和)南スーダン都市水道公社本部、ジュバ支所
(英)South Sudan Urban Water Corporation(SSUWC)

背景

南スーダンは、国家開発戦略2018-2021において、基礎的サービスの回復と拡張を優先課題の一つに位置付け、経済クラスターの中で都市部の水・衛生施設の建設・修復を優先アクションの一つとして打ち出している。しかし、内戦中に施設の維持管理が行われておらず、加えて独立後は国内外帰還民による人口増に伴う水需要急増に政府が対応することは難しく、基礎的な給水サービスにアクセスできる人口が41%と、サブサハラアフリカ地域の平均の65%を大きく下回っている(JMP、2021年)。
2005年に締結された包括和平合意で南部スーダンの首都と制定されて以降、ジュバ市の人口は国内外からの帰還民の流入等により推定で2005年の約16万人から2018年で約37万人(UN、2018年)と2.3倍に増えており、今後も更なる増加が予測されている。ジュバ市の上水道施設は1930年代に建設され、2009年にマルチ・ドナー信託基金(Multi Donor Trust Fund。以下、「MDTF」という。)により修復され一応の機能回復を果たしたが(7,200立方メートル/日)、人口増に対応できておらず、また、配水管網は老朽化により多くの箇所で漏水が生じている。この結果、ジュバ市における上水道の普及率は2010年時点で8%程度にとどまっている。多くの住民は浅井戸や河川水をそのまま運搬・販売する給水車に頼っているが、これらの劣悪な水質による水因性疾病の発生や、水購入による家計への圧迫等の問題を引き起こしている。

JICAは2008年から2009年に開発調査「ジュバ市水道事業計画調査」を実施し、必要な水道水供給量及び水道施設を提案する基本計画を作成した。同計画に基づき、日本政府は無償資金協力「ジュバ市水供給改善計画(Project for Improvement of Water Supply System of Juba in South Sudan)」(以下、「無償案件」という。)を実施中である。同無償案件により新規浄水場(10,800立方メートル/日)が完成すれば、ジュバ市では約35.5万人が安全な水にアクセスできる計画となっている。南スーダンの都市水道事業を担う南スーダン都市水道公社(South Sudan Urban Water Corporation:SSUWC)には水道施設の適切な運営と維持管理の知識と技術が不足しており、安全な水を効率的に配水することが困難であることが上述の基本計画で指摘されたことを受け、南スーダン政府は日本政府にSSUWCジュバ支所及び監督する一部の本部職員の能力向上の支援を要請した。この要請に対し、JICAは技術協力プロジェクト「都市水道公社水道事業管理能力強化プロジェクト(Project for Management Capacity Enhancement of South Sudan Urban Water Corporation)」(2010年10月から2013年9月)にて水道事業体としての基礎的能力開発支援を実施し、現在、後継の「都市水道公社水道事業管理能力強化プロジェクトフェーズ 2(The Project for Management Capacity Enhancement of South Sudan Urban Water Corporation Phase 2)」(2016年2月から2022年2月)(以下、「フェーズ2技プロ」という。)にてSSUWCジュバ支所の能力向上及び本部の監督能力強化を図った。フェーズ2技プロは2016年2月から開始されたが、2016年7月に南スーダンで起こった騒擾により、JICA専門家は南スーダンから退避を余儀なくされ、無償案件による水道施設の整備にも遅れが生じている。フェーズ2技プロは2019年3月までの間、ウガンダやケニア等の近隣国での第三国研修の機会を活用して活動を継続した。その後、治安情勢が改善し、2019年4月にJICA専門家はジュバでの活動を再開した。しかし、コロナ禍の影響で2020年3月以降はジュバに渡航できず、2021年5月まで本邦からオンラインでの技術指導を実施した。これまで遠隔及び第三国での活動が主であったものの、水道事業体として基礎的な給水サービスを行うために必要な業務に少しずつ取り組んだことで、浄水場運転時間の増加、浄水池の水質の改善、顧客数の増加、料金徴収率の改善等の成果が確認されている。

フェーズ2技プロには開始当初、無償案件で整備される新施設の運営維持管理に関する一連の活動が含まれていた。しかし無償案件による施設整備がフェーズ2技プロ期間中には完了しない見込みとなったことを受け、無償案件で建設予定の新施設の運営と維持管理に関する活動のうち、既存の施設の活用では対応不可能な活動は計画から削除した。無償案件の新施設の稼働は、2023年前半となる見込みである。新施設の稼働前に、SSUWCは新施設を適切に運営、維持管理し、持続可能な運営のための管理能力を強化する活動を必要としている。また、フェーズ2期間中はジュバでの活動が非常に短い期間に限られたが、技術の定着のためには現場(ジュバ)での直接指導が重要である。そのため南スーダン政府は、フェーズ2で当初計画されていたが現場での実施が困難であった活動(新設の給水車給水拠点・公共水栓の管理方法・料金体制構築、新設施設の運営維持管理、新設施設水道サービスに係る啓発活動等)を含むSSUWCジュバ支所の能力開発及び本部の監督能力強化支援を継続する技術協力プロジェクト「ジュバ市きれいな水供給プロジェクト」(以下、「本事業」という。)を日本政府に要請した。

目標

上位目標

ジュバ市で安全で清潔な水が確実な方法で供給される。

プロジェクト目標

SSUWCジュバ支所のサービス提供能力が強化される。

成果

1.SSUWCジュバ支所のコストリカバリー達成のための事業計画が策定され履行される。
2.無償案件で新規建設する施設を含む、運営維持管理能力が向上する。
3.無償案件で新規建設する施設の水道料金徴収体制が確立する。

活動

1-1.顧客満足度調査を含むベースライン調査を実施する。
1-2.事業計画作成のための既存情報を収集する。
1-3.事業計画を履行する。
1-4.半期ごとに事業計画を見直し、必要に応じて修正する。
1-5.SSUWC本部によるジュバ支所のパフォーマンス・モニタリングを実施する。

2-1.新設・既存施設管理のための新組織体制を構築する。
2-2.新設・既設施設の新しい管理システムを構築する。
2-3.新規給水施設の標準作業手順書(SOP)およびマニュアルを作成する。
2-4.フェーズ2で作成したマニュアルに基づいた無収水管理活動を実施する。
2-5.運転維持管理計画を履行する。
2-6.ジュバ支所職員に対する研修を実施する。

3-1.無償案件で建設される給水車給水拠点の管理体制を構築する。
3-2.無償案件で建設される公共水栓の管理体制を構築する。
3-3.上記2つの確立された管理体制をモニターし、必要に応じて修正すること
3-4.啓発活動を実施する
3-5.ジュバ市の水道事業管理、施設運営・維持管理、顧客満足度に関するエンドライン調査を実施する。

投入

日本側投入

1.専門家派遣(合計約78.00M/M)
2.研修員受入:第三国研修
3.研修棟建設(PCやコピー機などの供与含む)
4.機材供与:車両、維持管理機材、漏水探査機器、水質試験用キット及び試薬、給水車給水拠点・公共水栓用水道メーター等
5.その他:プロジェクト運営費、インターネット通信

相手国側投入

1.カウンターパート人材配置
2.プロジェクト実施に必要な執務室および施設設備の提供
3.その他プロジェクトによって供与された機材の保守管理、C/Pの人件費及び活動諸手当(日当宿泊、交通費)、プロジェクトによって供与された施設・設備・機材の維持管理費