プロジェクト概要

プロジェクト名

(和)脱炭素社会に向けた炭酸塩化を利用したカーボンリサイクルシステムの開発
(英)Development of a Carbon Recycling System toward a Decarbonised Society by Using Mineral Carbonation

対象国名

南アフリカ共和国

署名日(実施合意)

2021年9月12日

プロジェクトサイト

西ケープ州およびハウテン州を中心とした南アフリカ全国

協力期間

2022年1月27日から2027年1月26日

相手国機関名

ケープ半島工科大学(代表)、他

日本側協力機関名

東北大学(代表)、他

背景

南アフリカ政府は、「パリ協定」に基づき国連へ提出した自国で決定する貢献(Nationally Determined Contribution;NDC)において、2025年までに2005年時点の温室効果ガス(Greenhouse Gas;GHG)より42%削減し、更に2025年から2030年の間に398~614百万t-CO2eq(注)の削減を目標に掲げるとともに、他のアフリカ諸国に先駆けて2019年6月から炭素税を導入している。この流れを受けて、製造業界全体で低コストのGHG排出削減技術が切望されており、中でも本事業の対象としているセメント産業においては、省エネ技術の導入に加え、セメント製造プロセス由来のCO2排出量を削減することが喫緊の課題となっている。また、廃棄物管理の面において2020年に改訂された「国家廃棄物管理戦略2020:National Waste Management Strategy 2020」は廃棄物減量化の促進を掲げており、特に廃コンクリート等の建設・解体廃棄物の減少および再利用の促進を重要課題としている。同戦略を受け、同国で第2位の経済規模を有する西ケープ州は建設廃棄物の再利用を念頭にした適正処理を義務付けているものの、技術及び経済的な観点から効率的な処理方法が確立されていない。また、各種金属の製錬工程から排出されるスラグ(金属製錬の際に生じるかす)や石炭火力発電所からのフライアッシュ(石炭を燃焼する際に生じる灰;飛散灰)等の廃棄物についても適正な処理方法の確立が課題となっている。
本事業は、南アフリカにおける主要なCO2排出源の一つであるセメント産業から排出されるCO2を削減するため、解体コンクリート等の建設廃棄物、生コンクリートの利用に伴い発生するコンクリートスラッジ(汚泥)、火力発電に伴い生成されるフライアッシュ(飛散灰)等の塩基性廃棄物を利用したCO2固定と副生成物の再利用技術の開発を目的としている。具体的には、塩基性廃棄物に直接あるいは物理的・化学的処理を施し、カルシウムあるいはマグネシウムイオンを抽出し、セメントキルン排ガス等に含まれるCO2と反応させる炭酸塩鉱物化(MCC&U:Mineral Carbon Capture and Utilization)の開発を行う。また、プロセスで得られた副生成物(石灰石)はセメント製造に資源循環し、さらに循環が不可能な資源については環境浄化材として、同国で深刻化している酸性坑廃水処理への活用を想定している。

(注)t-CO2は二酸化炭素1トンを意味する単位。また、t-CO2eqは、各種の温室効果ガスの排出量に地球温暖化係数を乗じてt-CO2相当量に換算した値に付される単位。

目標

プロジェクト目標

本事業は、南アフリカにおいて、塩基性廃棄物を活用する炭酸塩鉱物化(MCC & U)によるカーボンリサイクルシステム開発にかかる研究及び社会実装に向けた活動を通じ、セメント産業におけるCO2排出削減を図り、もって循環経済の概念に基づく脱炭素社会の構築促進に寄与するもの。

成果

1.廃コンクリートの直接炭酸化法(MCC&U1)が開発される
2.パイロットプラントが設置され、コンクリートスラッジの間接炭酸化法(MCC&U2)が開発される
3.バイポーラ膜電気透析法を利用した間接炭酸化法(MCC&U3)が開発される
4.MCC&U技術の社会実装に向けた戦略が提示される

投入

日本側投入

1)専門家:二酸化炭素の有効利用、環境化学工学、金属資源循環システム等の分野
2)供与機材:二酸化炭素の炭酸塩鉱物化反応装置(パイロットプラントを含む)、誘導結合プラズマ発光分析装置等の分析機器類
3)本邦研修受入

相手国側投入

1)カウンターパートの配置
2)プロジェクト事務所、事務所用資機材(家具や什器等)
3)現地活動費:パイロットプラント稼働にかかるランニングコスト(水光熱費など)、プロジェクト事務所の水光熱費、カウンターパート日当旅費等