プロジェクト概要

プロジェクト名

(和)ピアンジ県・ハマドニ県上下水道公社給水事業運営能力強化プロジェクト
(英)The Project for Strengthening the Water Service Management of Pyanj and Khamadoni Vodokanals

対象国名

タジキスタン

署名日(実施合意)

2016年12月27日

協力期間

2017年4月25日から2021年6月30日

相手国機関名

住宅サービス公社、ピアンジ上下水道公社(VK)、ハマドニ上下水道公社(VK)

背景

タジキスタンでは、安全な水を利用する人口の比率が国全体で73.8%、都市部で93.1%、農村部では66.7%に留まっていた(2015, UNICEF/WHO Joint Monitoring Programme)。なかでも、ピアンジ県、ハマドニ県が位置するハトロン州は、約300万人の州人口のうち約8割が農村部に居住し(2014, タジキスタン国家統計局)、安全な水を利用する人口の比率も47%と低い水準に留まっていた(2013, JICA)。この原因として、旧ソ連時代に建設された給水施設の老朽化、独立後の不十分な維持管理が挙げられている(2009, JICA)。また給水水質にも課題を抱え、ハトロン州における国家水質基準への不適合率は69.7%(全国平均は46.2%)であり、全州の中で最も低い値であった(国家公衆疫学センター, 2004)。さらに、料金徴収に関しても課題を抱えており、メータ設置と従量料金制の導入が政府規定により推奨されているが、ホジャンド、ドゥシャンベなど援助機関による支援が実施されている主要な都市を除いて、従量料金制は導入されていなかった。このため、規定された給水原単位に契約世帯の構成人数を乗じて料金徴収を行っており、使用量と比較して不十分な料金徴収や住民の過剰な水使用などの問題が生じていた。
このような課題に対し、JICAは無償資金協力事業にて、老朽化したハマドニ県・ピアンジ県の給水施設の改善を行い、ピアンジ県では各戸メーターを全顧客に設置して従量料金制が導入された。しかしピアンジ上下水道公社(以下「上下水道公社」を「VK(タジク語でVodokanal)」という。)が建設された給水施設を最大限に活用して従量料金制に基づく水道料金を徴収することや、さらに安定した給水サービスを実現するためには、ピアンジVKの給水事業運営能力を強化する必要があった。ハマドニVKでも各顧客にメーターを設置して従量料金制を導入するには至っておらず、水需要の大きい夏場には配水管網の末端部では十分な給水ができない等の給水事業運営能力面では課題が残されていた。
こうした状況に鑑み、タジキスタン国政府はわが国に対し、VKの運営能力改善に関する技術協力プロジェクト「ピアンジ県・ハマドニ県上下水道公社給水事業運営能力強化プロジェクト」(以下、本プロジェクト)の実施を2013年に要請し、住宅サービス公社(State Unitary Enterprise “Khojagii Manziliyu-Kommunali”、以下、「KMK」という)、ピアンジVK、ハマドニVKをカウンターパート(C/P)機関として、本プロジェクトが2017年に開始された。

目標

上位目標

従量料金制の継続によって、ピアンジVKおよびハマドニVKの給水区域における給水サービスが改善される。

プロジェクト目標

ピアンジVKおよびハマドニVKの給水事業運営能力が強化される。

成果

1.VKの給水事業運営に必要なデータが整備される(注1)。
2.VK営の関係者の水道事業経営能力が強化される。
3.[ピアンジVK対象]従量料金制が定着する。
4.[ハマドニVK対象]一部顧客に対して従量料金制が導入される。
5.給水施設(注2)が適切に維持管理される。

(注1)データには、月間水生産量、月間請求水量、無収水率、顧客管理台帳、資産台帳を含む。
(注2)給水施設は「井戸から各戸メータの間の施設」を指す。

活動

1-1.ハマドニVKにて、バルク流量計及び関連資材を調達する
1-2.ハマドニVKにて、バルク流量計を設置する
1-3.各VKにて、月間水生産量を計測・集計する
1-4.各VKにて、月間水請求水量を集計する
1-5.各VKにて、無収水率を計算する
1-6.各VKにて、給水事業運営に必要なその他のデータの管理をレビューし、チェックリストを作成する
1-7.各VKにて、レビューに基づき、データ管理を改善する
1-8.各VK用に、タジク語及び英語のデータ管理マニュアルを作成する

2-1.水道事業経営全般(中長期計画、投資計画、水道企業会計、顧客サービスなど)に係る研修の参加者を決定する
2-2.研修参加者の水道事業経営全般に対する理解度を把握する
2-3.水道事業経営全般に係る研修を本邦で実施する
2-4.研修参加者に対して研修内容のフォローアップとなるワークショップを実施し、理解を促進する
2-5.研修参加者の水道事業経営全般に係る理解の定着度を確認する
3-1.従量料金制導入にあわせて会計/料金請求システムを改善する
3-2.検針員/料金徴収員に対し、検針、顧客対応等に係る研修を行う
3-3.節水、ユーザー負担の原則、及び従量料金制に係る住民の意識向上を促進する
3-4.検針員/料金徴収員の作業スケジュール及び配置計画を改善する
3-5.従量料金制に係る活動をモニタリングする
3-6.検針員/料金徴収員用のマニュアルを作成する

4-1.各戸メーターを設置する顧客を特定する
4-2.各戸メーター及び関連資材を調達する
4-3.特定された顧客に対してメーターを設置する
4-4.従量料金制導入にあわせて会計/料金請求システムを改善する
4-5.検針員/料金徴収員に対し、検針、顧客対応等に係る研修を行う
4-6.節水、ユーザー負担の原則、及び従量料金制に係る住民の意識向上を促進する
4-7.検針員/料金徴収員の作業スケジュール及び配置計画を作成する
4-8.メーターを設置した顧客に対してシミュレーションを目的とする検針を行う
4-9.検針した使用水量に基づき、メーターを設置した各顧客の従量料金制導入後の水道料金を推計する
4-10.推計した水道料金をメーターを設置した顧客に通知し、従量料金制導入の効果に対する理解を促進する
4-11.メーターを設置した顧客に対して従量料金制を開始する
4-12.従量料金制に係る活動をモニタリングし、教訓をまとめる
4-13.検針員/料金徴収員用のマニュアルを作成する

5-1.ピアンジVKにて、運転・維持管理マニュアルを策定する
5-2.ハマドニVKにて、既存の運転・維持管理マニュアルをレビューし適宜改善する
5-3.ハマドニVKにて、共同水栓の利用状況を調査する
5-4.ハマドニVKにて、共同水栓の管理計画を策定する
5-5.各VKにて、井戸ポンプの運転管理を改善/モニタリングする
5-6.各VKにて、塩素注入技術を改善/モニタリングする
5-7.各VKにて、塩素注入設備及び井戸ポンプの維持管理を改善/モニタリングする
5-8.各VKにて、配水管の補修を改善/モニタリングする
5-9.各VK用のマニュアルを適宜更新する

投入

日本側投入

・短期専門家:延べ7人
・本邦研修:18人
・供与機材:金属探知器、ポータブル残留塩素計、水道メータおよび関連資機材、1Cソフトウェア、PC、プリンター等

相手国側投入

・カウンターパートの配置
・ローカルコスト負担
・JICA専門家とナショナルスタッフの事務所スペース及び水道・光熱費