No.8:郡ファシリテータとシニアファシリテータの能力強化

2016年10月24日

本プロジェクトの対象自治体は、「ファシリテーション」という新しい機能を持つことによってコミュニティ・イニシアティブ(注1)(Community Initiatives: CIs)を促進していくことを目指します。具体的には、既存のCIsを強化し、新規のCIsを創出し、それらを適切に支援するとともに、コミュニティの積極性を持続させていくことが期待されています。そのための鍵となるのが、ファシリテータたちです。

自治体は、以下の2つのカテゴリのファシリテータたちを活用していきます。

1)郡ファシリテータ:自治体に選出され、改良O&ODの研修を受けた郡レベルの普及員(自治体職員)。現場で継続的に「ファシリテーション(注2)」を行う役割を持つ。

2)シニアファシリテータ:2〜3年の改良O&ODのフィールド経験を有し、パフォーマンスが優れ、かつシニアファシリテータ研修を受けた郡ファシリテータ。決められた基準に沿って選出・登録され、以下の役割を持つ。

  1. 所属する自治体内外の経験の浅い郡ファシリテータの能力強化を支援する
  2. 所属する自治体内での改良O&ODの普及・展開の中心部隊となる。

プロジェクトは、郡ファシリテータ及びシニアファシリテータの能力を強化するため、以下のような活動を行ってきました。

1.経験共有ワークショップ

2016年1月26日〜27日、プロジェクトは、6対象県(モロゴロ、キロンベロ、ウランガ、キサラウェ、バガモヨ、コンドア)より20名の郡ファシリテータを集め、2日間の経験共有ワークショップを行いました。参加者は、シニアファシリテータに加え、シニアファシリテータ候補を含む、本プロジェクト前フェーズから2〜6年のコミュニティファシリテーションの経験を持つ郡ファシリテータたちです。

参加者は、自らのファシリテーションの経験を振り返り、分析し合いながら、コミュニティでの信頼構築、意識改革を上手く促す方法について議論しました。ファシリテーション方法についての共通の理解を構築し、経験の浅い郡ファシリテータへの指導・アドバイスに備えるためです。

【画像】

ワークショップにおけるグループ議論

2.キリマンジャロ州・コンドア県におけるシニアファシリテータによる郡ファシリテータへの現場指導

2016年1月28日、シニアファシリテータ及びシニアファシリテータ候補にて構成されたチームが、キリマンジャロ州のハイ県、シーハ県、サメ県の6パイロット村を訪れました。第一の目的は、昨年ファシリテーションを始めたばかりの郡ファシリテータたちに対し、コミュニティ・イニシアティブ促進のためにどのようにコミュニティに働きかけるか、について実践的なアドバイスを提供することです。そして、シニアファシリテータ及びシニアファシリテータ候補たちの、郡ファシリテータへの現場指導経験の蓄積が第二の目的でした。

チームは、郡ファシリテータとともに、これまでの彼らのファシリテーションの進捗を振り返り、自らの経験をもとに実践的なアドバイスを提供しました。また、チームのサポートを受けながら、郡ファシリテータが、2016年8月のコミュニティ計画策定プロセス(注3)後のコミュニティ・イニシアティブの進捗を村のリーダーたちとともに振り返り、今後とるべき行動について話し合いました。

2016年2月10日、ファシリテータ歴2年のコンドア県の郡ファシリテータたちに対しても、同様の機会を提供しました。

【画像】

コンドア県ムクルムジ村にて現場指導を行うシニアファシリテータ

3.シニアファシリテータワークショップ

2016年2月23日から25日にかけて、プロジェクトは5対象県(ウランガ、キロンベロ、モロゴロ、キサラウェ、バガモヨ)より5名のシニアファシリテータを集め、3日間のワークショップをドドマにて開催しました。ワークショップの目的は、以下の3点でした。

1)シニアファシリテータのコミュニティ・イニシアティブ及びファシリテーションの重要性に関する理解を強化する
2)郡ファシリテータ研修の改善方法について議論する
3)経験共有プラットフォームを構築する

ワークショップでは、まず、コミュニティファシリテーションの重要性を再確認するため、改良O&ODの背景を復習しました。次に、適切なファシリテーションを行うためにどのようにコミュニティを分析すべきか、また、コミュニティの特徴に応じどのようにファシリテーションの方法を変えるべきかについて議論を交わしました。

また、郡ファシリテータ研修に関するセッションでは、シニアファシリテータたちによる現状の研修モジュール及び構成の見直しが行われ、研修をより効果的かつ効率的にするための改善方法について意見が出されました。

最後のセッションでは、経験共有の必要性について議論しました。シニアファシリテータ同士や、経験の浅いファシリテータへの経験共有もさることながら、コミュニティ開発におけるファシリテーションの重要性への理解を広範囲に浸透させるためには、担当地域における村を超えた経験共有も重要であることが確認され、その方策として、既存の村レベルのメカニズム(各種会合等)の活用が挙げられました。そして、SNS(ソーシャル・ネットワーキング・サービス)を活用するというアイデアが実行に移され、シニアファシリテータによる日常的な経験共有のためのWhatsApp(タンザニアでポピュラーな、LINEに似たSNS)グループが立ち上がりました。

一連の議論とエクセサイズを通じて、参加者のファシリテータとしての自信はより一層深まり、現場に戻って提言やアイデアを実践する心の準備は万端のようでした。5名のシニアファシリテータには、今回のワークショップで得た学びを現場に持ち帰り、継続的なファシリテーションを通じてさらに自信をつけ、加えて、様々なステークホルダーに対して改良O&ODのインパクトを発信していくことが期待されています。

【画像】

ファシリテーションにおけるコミュニティの分析方法を考えるエクセサイズに取り組むシニアファシリテータたち

【画像】

SNSの活用を実行に移すシニアファシリテータたち

4.コンドア県におけるM&Eワークショップ

2016年3月16日から17日にかけ、プロジェクトは、コンドア県においてM&E(モニタリング・評価)ワークショップを開催しました。ワークショップは、同県の県タスクフォース(注4)(District Taskforce: DTF)及び郡ファシリテータを対象にし、以下の目的および構成のもと、進められました。

1)O&ODプロジェクトフェーズ2の変更後のプロジェクトデザインの説明
2)コミュニティ・イニシアティブ及びファシリテーションの重要性についての再確認と理解強化
3)コミュニティレベルにおけるM&Eの重要性についての基本的理解の構築(コミュニティの人々及び郡ファシリテータの経験蓄積を通じた学習の一環として)

上記3点について、O&ODチームによるプレゼンテーションが行われたのち、対象村において、どのように1)個別のコミュニティ・イニシアティブ、2)村全体の変化についてM&Eを実践するか、をテーマにグループワークが行われました。

郡ファシリテータは、グループワークで挑戦したことを現場に持ち帰り、実践してみることを約束。プロジェクトは、2016年5月に実施予定のM&Eワークショップ第二弾にて、郡ファシリテータのフィードバックを集め、効果的かつ現場で実行可能なM&Eのあり方について方向性を定めていきます。

【画像】

O&ODチームによるプレゼンテーションに耳を傾けるキコレ郡の郡ファシリテータたち

(注1)住民が自発的且つ主体的に意思決定と実施プロセスに参加をしている開発活動

(注2)改良O&ODの文脈における「ファシリテーション」とは、CIsを促進・再生産することを目的に、経験蓄積を通じた学習によってコミュニティの問題解決・自己組織能力の強化を支援すること。具体的には、コミュニティ開発プロセス全体において(計画策定のみならず、意識変革、組織強化、CIsの実施及びモニタリング・評価を含める)コミュニティを支援することを指す。

(注3)プロジェクトニュースNo.6:キリマンジャロ州でコミュニティ計画策定プロセスを実施しましたをご覧ください。

(注4)改良O&ODの実施部隊として選ばれた県庁職員5〜6名にて構成されたチーム。