第1回災害医療に係るASEAN学術会議およびASEAN学術ネットワーク準備会合の開催

2021年12月9日

2021年12月1~2日にかけて、第1回災害医療に係るASEAN学術会議がオンライン開催され、ASEAN加盟10か国、ASEAN事務局等および日本からの災害医療関係者ら、総勢120名以上が参加しました。

タイ国家救急医療機関総裁(Atchariya Pangma氏)、ASEAN災害医療連携強化プロジェクト(ARCHプロジェクト)国内支援委員会委員長(甲斐達朗氏)、ASEAN事務局 社会・文化共同体 人間開発局長(Rodora T. Babaran氏)により開会が宣言されました。

初日に行われた世界保健機構のFlavio SALIO氏による基調講演では、緊急医療チーム(EMT)認証制度を取り巻く現状とARCHプロジェクトへの期待が述べられ、2日間にわたって企画された4つのセッション、2部構成のパネルディスカッションを通じて、以下の通り、活発な議論が交わされました。

・セッション1:ARCHプロジェクト、ASEAN地域メカニズム、EMTに向けた国際イニシアティブ
ASEAN域内外、世界全体の災害保健医療に関する政策や能力開発に対して、ARCHプロジェクトは、どのようなインパクトを残し、貢献をしてきたのか、そして、ASEANと日本の協力の枠組みにおいて、今後さらに取り組むべき課題についての議論が行われました。

・セッション2:ARCHプロジェクトによるASEAN加盟国と日本の災害医療キャパシティと政策へのインパクト
ARCHプロジェクトへの参加によってASEAN加盟各国にどのようなインパクトが見出されたのか、また日本および、地域連携演習の主催国であるタイ、ベトナム、フィリピン、インドネシアより、災害保健医療に関する経験、各国の政策や能力開発へのARCHプロジェクト参加によるインパクトが共有されました。

・セッション3:ASEAN加盟国と日本の実災害における災害医療の経験
ASEAN加盟国各国および日本より、ARCHプロジェクトが開始された2016年以降に発生した大規模災害や公衆衛生危機への緊急医療対応について報告が行われました。

・セッション4:災害医療マネジメントのASEAN学術ネットワーク
ARCHプロジェクトの支援で設立が進められている災害医療に係るASEAN学術ネットワークの将来像や戦略、学術雑誌の創刊に向けて、日本災害医学会、世界災害救急医療学会、災害・健康危機管理に関するWHOグローバルリサーチネットワーク、ASEAN域内の様々な関連ネットワークの現状や経験も踏まえ、議論が行われました。

・パネルディスカッション:災害医療分野でOne ASEAN One Responseをどう実現するか
2部構成で実施され、2022年1月より開始予定の「ASEAN災害保健医療管理に係る地域能力強化プロジェクト(ARCH2プロジェクト)」が、ASEAN加盟国の災害医療に関する能力開発にどのように貢献すべきか、また新型コロナウイルス感染症のような公衆衛生上の緊急事態に対してどのような取り組みをすべきかについての意見交換が行われました。

ASEAN学術ネットワーク準備会合の開催(2021年11月30日)

ASEAN学術会議の開催に先駆けて、災害医療に係るASEAN学術ネットワーク準備会合がオンラインで開催されました。

ASEAN保健開発会議は、2021年11月に災害医療に関するASEAN学術ネットワークの設立計画を承認しました。今回の会議では、同ネットワークを正式に立ち上げ、活動を開始するために、ASEAN加盟各国における災害医療の教育や研修の中核を担う代表者が集い、このネットワークの目的、機能とネットワーク参加メンバー機関の役割を周知徹底するとともに、今後の運営方針についての協議を行いました。

今回のASEAN学術会議の開催や学術ネットワークの設立は、2017年に採択された災害医療に係るASEAN首脳宣言を実現するための行動計画におけるASEAN地域達成目標の一つでした。

ARCHプロジェクトは、2021年12月をもって終了しますが、この行動計画のさらなる実施を支援するために、ARCH2プロジェクトとして2022年1月より2026年3月までの予定で実施されます。

【画像】タイ国家救急医療機関総裁(Atchariya Pangma氏)による開会あいさつ

【画像】ASEAN加盟10か国および日本の災害医療関係者ら、総勢120名以上が参加

【画像】世界保健機構Flavio SALIO氏による基調講演