プロジェクト概要

プロジェクト名

(和)世界の台所を目指すタイにおける家畜生産と食品安全に関する新技術導入による畜産革命の推進プロジェクト
(英)The Project for the Acceleration of Livestock Revolution in Thailand aiming to be the Kitchen of the World through the Development of Novel Technologies for Stable Livestock Production and Food Safety

対象国名

タイ王国(以下「タイ」という。)

署名日(実施合意)

2020年2月21日

プロジェクトサイト

チョンブリ県、ナコンパトム県、サラブリ県及びRegion 2(OIEによる口蹄疫フリーゾーン対象地域)

協力期間

2020年10月23日から2025年10月22日

相手国機関名

(和)
・農業・協同組合省畜産開発局(DLD)
・OIE/FAO口蹄疫東南アジア地域リファレンスラボラトリー
・チュラロンコン大学獣医学部
・マヒドン大学獣医学部
・チェンマイ大学獣医学部

(英)
・Department of Livestock Development, Ministry of Agriculture and Cooperatives
・OIE Regional Reference Laboratory for FMD in South East Asia
・Faculty of Veterinary Science, Chulalongkorn University
・Faculty of Veterinary Science, Mahidol University
・Faculty of Veterinary Science, Chiang Mai University

日本側協力機関名

宮崎大学

背景

アジア諸国では、現在、急速に畜産振興が進んでおり、「畜産革命」と表現されている。とりわけ、畜産業の発展が著しいASEAN地域は、世界における畜産物生産量の30%を支える存在として、2050年までに世界の畜産拠点へ発展することが期待されている(タイ畜産局、2018)。

ASEAN諸国の中でもタイでは、第一次産業(農畜水産)生産がGDPに占める割合は、他産業の発展に伴い徐々に縮小し、現在8%程度となっているものの、就業人口の比率は30%以上を占めており(2017年タイ労働省)、タイ経済において第一次産業は依然重要な役割を果たしている。このため、タイ政府は2000年代前半から「世界の台所(Kitchen of the World)」や「肉用牛・水牛生産振興策」など、畜産物(鶏肉、卵、豚肉、牛肉や酪農製品)の生産増加と輸出振興に関する政策を積極的に進めてきた。この結果、畜産物の国内消費量、輸出量とも増加した。
他方、タイは口蹄疫や鳥インフルエンザなど越境性家畜感染症の発生のため、長年にわたり畜産物の輸出が制限されるなど経済的な損失を被ってきた。さらに食中毒菌の食肉への汚染も、安全な食糧の供給の阻害要因となっている。この背景には、2015年のASEAN経済回廊の開通により、隣接するミャンマー、ラオス、カンボジアからタイへの畜産物の輸入が増加し、越境性家畜感染症の侵入リスクが以前よりも高まったことがある。

ASEAN経済回廊の中心に位置し、ASEAN経済発展の先導的役割が期待されているタイにおいて、畜産業のさらなる発展に寄与するとともに、将来、移転技術の周辺諸国への波及を通じて、ASEANが目指している「畜産革命」を推進してゆくために、家畜感染症及び食中毒菌の制御技術を開発・確立することが喫緊の課題となっている。
かかる状況を踏まえ、タイ政府は地球規模課題対応国際科学技術協力(SATREPS)の枠組みにおけるタイ農業・協同組合省 畜産開発局(DLD)をタイ側代表機関とし、宮崎大学を日本側代表機関とする日本側実施機関との協力による技術協力プロジェクトの実施を我が国に要請した。

目標

上位目標

タイ国において統合防疫技術を用いた最適な家畜感染症予防・制御および安全な食肉生産が実現する。

プロジェクト目標

タイ国において新規統合家畜防疫技術が確立される。

成果

1.家畜における口蹄疫と類似水疱性疾患、および生産性に影響を及ぼす重要感染症(牛呼吸器病症候群など)の迅速診断キットを用いた鑑別診断システムが確立される。
2.疫学モデルを用いた家畜感染症流行予測情報配信システムや農場のリスク予見システムなどの初動防疫システムが確立される。
3.食肉の病原体汚染防止のための新規技術(病原体除去装置、病原体吸着物質による畜舎環境浄化法、病原体吸着物質含有飼料)が確立される。
4.国際共同研究をとおして家畜防疫に資する研究開発・人材育成の実施体制が構築される。

活動

1-1.Pen-side.Testingとして実用性のある口蹄疫迅速診断キットの開発
1-2.口蹄疫および鑑別対象となる類似水疱性疾患の病原体を同時に検出できるマルチ診断キットの開発
1-3.上記した試験導入を通じて、口蹄疫迅速診断キット、マルチ診断キットを用いた水疱性疾患鑑別診断のためのStandard.Operating.Procedures.(SOPs)の作成(手順、コスト分析等を含む)。
1-4.家畜生産性の観点から重要である家畜感染症の病原体を同時に測定するにマルチ診断キットの開発
1-5.アフリカ豚コレラ(ASF)など家畜における新興再興感染症に対する実験室診断法(遺伝子、抗原、抗体の検出法)の確立(注:本活動はタイにおける備えのニーズが生じた場合に、日泰の関係機関合意の上で実施する。)
1-6.プロジェクトで開発した診断法の、タイ国内公定法として公式試験レポートによる評価

2-1.初動防疫のためのアプリケーションの開発
2-2.初動防疫システムの有効性評価
2-3.システムの導入、運用に係わるプロセスや必要な人的、財政的リソースに関する情報等のパッケージ化
2-4.連携(または統合)に向けて、関係当局や協力企業等との協議

3-1.高圧パルスジェット水流を用いた食肉からの病原体除去装置の開発
3-2.土壌由来病原体吸着物質を用いた畜舎環境浄化法の確立
3-3.抗菌剤を使わずに鶏におけるカンピロバクターおよびサルモネラを検出限界以下にできる病原体吸物質含有飼料の開発

4-1.日タイの研究機関、教育機関、行政機関により構成される包括的な家畜防疫のためのコンソーシアム設立
4-2.プロジェクト期間をとおして、タイおよび日本人若手研究者を対象にコンソーシアムが開発した国際防疫に関するグローバル人材育成教育プログラム提供
4-3.少なくとも年1回以上の頻度で、共同研究に係るシンポジウムやジョイントセミナー開催

投入

日本側投入

・長期専門家(業務調整)
・短期在外研究員(チーフ・アドバイザー兼細菌学、ウイルス学、免疫学、疫学、病理学、分子生物学、生物情報科学、迅速診断キット開発他)
・供与機材(研究開発活動に必要な機器、教育活動に必要な資機材等)
・研修員受け入れ(細菌学、ウイルス学、免疫学、疫学、病理学、分子生物学、生物情報科学、その他必要な専門領域)

相手国側投入

・カウンターパートの配置(プロジェクト・ダイレクター、副ダイレクター、プロジェクト・マネージャー、プロジェクト副マネージャー、プロジェクト活動に必要な専門性を有する研究者、技術者、行政官等)
・案件実施のためのサービスや施設、現地経費の提供(情報・データ、プロジェクト事務所、実験室、光熱費、カウンターパートの旅費等)