プロジェクト概要

プロジェクト名

(和)バイオマス・廃棄物資源のスーパークリーンバイオ燃料への触媒転換技術の開発
(英)The Project for Comprehensive Conversion of Biomass and Waste to Super Clean Fuels by New Solid Catalysts

対象国名

タイ

署名日(実施合意)

2017年3月13日

協力期間

2017年8月31日から2022年8月30日

相手国機関名

(和)チュラロンコン大学、タイ石油公社、北部再生可能エネルギー株式会社
(英)Chulalongkorn University(CU), PTT, Northern Renewable Energy Co., Ltd.

日本側協力機関名

国立大学法人富山大学、一般財団法人石炭エネルギーセンター、ENEOS株式会社、株式会社巴商会

背景

タイでは、近年、エネルギー需要が年率約5%で成長し、国内でのエネルギー供給量やエネルギー輸入量の増加が見込まれていることから、経済負担や温室効果ガス排出量の増大が懸念されている。この対策の一環として、化石燃料を代替する燃料の利用が促進されており、すべての燃料に占めるバイオ燃料の割合を高めることが喫緊の課題となっている。他方で、従来のバイオ燃料では、可食系資源を利用した際の穀物市場の混乱等の課題があった。また、農業国であるタイでは、豊富に賦存する農産副産物や加工残渣などの非可食系バイオマスからバイオ燃料を生産することに取り組んでいるが、バイオエタノールやバイオディーゼルは、対象資源が限られ、既存石油系燃料と品質や利用特性も異なることから普及障壁に直面している。
タイ政府はバイオ燃料の効果的な活用を推進すべく、2015年に改定した“Alternative Energy Development Plan”において、総燃料に占めるバイオ燃料の割合を2036年までに25%まで高める目標を掲げている。
係る状況の下、本事業では、当該国に豊富に賦存するバイオマス資源から各種バイオ燃料・化学品(軽油・ガソリン・メタノール・LPG)を製造する技術の開発を行う熱化学的変換(C1化学)により、特に非可食系バイオマスを原料とした既存石油系燃料と同品質の「先進バイオ燃料」を開発し、係る技術を国内へ普及、促進することを目指すものである。

目標

上位目標

本プロジェクトにより開発された化石代替燃料技術を活用したバイオ燃料事業化への基盤が促進される。

プロジェクト目標

非可食系バイオマス(木質、農業、廃棄物系)資源を利用した化石代替燃料の製造技術を開発し、社会実装に向けた提言がなされる。

成果

1.非可食系バイオマス資源からの合成ガス製造技術が開発される。
2.触媒転換によるバイオ燃料等製造技術が開発される。
3.利用検証や全体システム構築にかかる取り組みにより社会実装提案がなされる。

活動

1.非可食系バイオマス資源からの合成ガス製造技術が開発される。

1-1.タイの非可食系バイオマスの種類に応じた前処理条件の決定

1-2.バイオマスのガス化技術が開発される
1-2-1.ガス化ガスの組成で、[H2]/[CO]の比が1~2、[H2]+[CO]の割合が約80%となる運転条件(process condition and operation skill)の確立
1-2-2.ガス化ガスの炭素転換率あるいは冷ガス効率で60%以上となる運転条件の確立
1-2-3.ガス化ガス中の不純物を触媒転換工程が受け入れ可能なレベルまで低減する運転条件の確立
1-2-4.触媒転換工程との連結運転に適したガス化工程の確立

2.触媒転換によるバイオ燃料等製造技術が開発される。

2-1.バイオ軽油製造技術が開発される(触媒+運転技術)
2-1-1.高活性触媒の開発(sty=600g-oil/kg-cat-h)(生産能力目標)
2-1-2.実用特性の高い触媒の開発(低圧合成特性・不純物耐性・選択性(C11-19留分割合)の向上))
2-1-3.合成ガス製造との連結運転によるバイオ軽油製造の実証

2-2.バイオマスガソリン製造技術が開発される
2-2-1.高活性触媒の開発(sty=500g-oil/kg-cat-h)
2-2-2.実用特性の高い触媒の開発(低圧合成特性・不純物耐性・選択性(C4-10,iso体留分割合)の向上))
2-2-3.合成ガス製造との連結運転条件の確立

2-3.バイオメタノール製造技術が開発される
2-3-1.高活性触媒の開発(sty=500g-oil/kg-cat-h)
2-3-2.実用特性の高い触媒の開発(低温低圧合成特性・不純物耐性・選択性の向上)
2-3-3.合成ガス製造との連結運転によるバイオメタノール製造の実証

2-4.バイオLPG製造技術が開発される
2-4-1.高活性触媒の開発(sty=450g-LPG/kg-cat-h)
2-4-2.実用特性の高い触媒の開発(低温低圧合成特性・不純物耐性・選択性の向上)
2-4-3.合成ガス製造との連結運転によるバイオLPG製造の実証

3.利用検証や全体システム構築に係る取り組みにより社会実装提案がなされる。

3-1.化石代替燃料等として、バイオ燃料等が利用できることが確認される
3-1-1.試作された化石代替燃料と既存化石燃料との分析比較による、製造プロセス及び運転条件の確立
3-1-2.試作されたバイオ燃料等の比較優位性(効率・燃費、排ガス特性)の特定
3-1-3.試作されたバイオ燃料等の利用方法(組成・品質調整、供給方法)の把握

3-2.各種バイオ燃料等の社会実装のためのロードマップがドラフトされる
3-2-1.プロセス解析により各種バイオ燃料の製造に係るエネルギー回収率・エネルギー収支・収率・想定コストの算出
3-2-2.LCA分析により各種バイオ燃料等の製造に係るCO2削減効果の算出
3-2-3.プロセス解析、LCA分析を通じたロードマップ(ビジネスモデル、時間軸、政策提言等を含む)のドラフト作成

3-3.バイオ燃料等の製造・利用に係る人材が育成される
3-3-1.バイオ燃料等の製造試験(合成ガス製造・触媒転換の連結一貫運転試験)をカウンターパート機関で実施するためのマニュアル作成
3-3-2.現地での合成ガス製造・触媒転換の研究に必要な設備の整備
3-3-3.カウンターパート機関の若手研究者による本プロジェクトに関する国際学会発表、研究論文等の実績数

3-4.プロジェクトによって、開発された技術や得られるバイオ燃料等の社会的認知が高められる

投入

日本側投入

ア.日本人研究者等の派遣
イ.供与機材
ウ.本邦研修

相手国側投入

ア.カウンターパートの配置
イ.バンコクとサラブリキャンパスでの事務所スペース、プロジェクトに必要な資機材の提供
ウ.備品、消耗品の提供
エ.機材の設置場所の整備
オ.医療サービスの提供・受診支援
カ.タイ研究者の移動手段、国内旅費、日当、宿泊等
キ.身分証明書
ク.プロジェクトに関するデータ(写真を含む)、情報の提供
ケ.運転費用
コ.供与機材の輸送、据え付け、保守費用