(和)PRTR制度と市民参加によるエコインダストリアルタウン新規汚染管理モデル構築
(英)Development of New Pollution Management Model using PRTR and Public Participation Principles for Eco Industrial Town
タイ
2018年11月27日
2019年1月20日から2021年6月30日
工業省 工場局(DIW)
天然資源・環境省 公害規制局(PCD)
工業団地公社(IEAT)
タイ国では1980年代初頭から1990年代前半にかけて工業化を推進する「東部臨海開発計画」が推し進められ、我が国は国際協力事業団(旧JICA)を通じた技術協力や、海外経済協力基金(OECF)を通じた円借款(供与額約1787億円)を実行した。同国が1980年代後半以降達成した毎年11.0~13.0%の経済成長は東部臨海開発計画による工業化が大きく貢献したとされており、現在においても東部臨海地区は東南アジアを代表する工業地帯である。一方、同地区に立地する化学工場の集積地であるラヨーン県マプタプットでは次第に悪臭問題が顕在化し、1997年には原因不明の大気汚染によって工場付近の小学校の児童・教師数十人が入院するという事態が発生した。またバンコク首都圏を中心とした都市化やモータリゼーションの進行により深刻な大気汚染問題が指摘されていた。これらの問題があり、タイ天然資源・環境省(MONRE)は一般的な大気汚染物質の環境基準を設け、バンコク首都圏を中心にモニタリングを実施していた。
しかし、光化学オキシダント等の大気汚染物質を生成する揮発性有機化合物(VOC)の対策が十分でなかったことから、JICAは2006年から2008年にかけ「環境基準・排出基準設定支援プロジェクト」(技術協力プロジェクト)を実施した。VOC対策は一定の成果を上げたものの、MONRE公害規制局(PCD)は国内の化学物質の排出量・移動量を把握できないため、策定した環境基準に基づき化学物質対策を継続的に実施できるような状況になかった。そこで、JICAは「環境汚染物質排出移動量登録制度(PRTR制度)構築支援プロジェクト」(技術協力プロジェクト)を2011年から2016年にかけて実施し、ラヨーン県においてPRTR制度のパイロットプロジェクトが実施された。協力の成果として2014年、2015年のPRTRデータブックが作成・公開されており、続くフォローアップ協力(2016年4月から2017年12月)ではデータ公開にかかるセミナー等が実施された。
PRTRデータは行政・市民による活用がなされて初めて有用なツールとなる。具体的には事業所毎の化学物質排出量が公開されると、突出した値が顕在化した場合、排出した特定の事業所に対して社会的圧力がかかり、当該事業所の自主的な削減努力が見込めるほか、化学物質が漏出した際には速やかな発生源の特定に繋がり、行政による早期の対応が可能となるなどである。しかしタイ側にはこれらの活用に係るキャパシティが十分でないことから、2016年8月、工業省(MOI工場局(DIW)より技術協力プロジェクトの要請が出され、翌年3月に日本政府により採択された。一方、タイ国内ではPRTRの制度化に係る自助努力がなされており、引き続き協力の必要性及び妥当性は認められるものの、技術協力プロジェクトによる大きな投入よりもむしろ迅速かつ効率的な活動実施のため、個別案件(専門家)にスキームを変更することが妥当であるとの判断がなされ、右の方針にタイ政府も合意した。
情報公開-市民参加-自発的管理の促進を基にする新規汚染管理モデルが構築されると共に成果が周辺国に展開される
PRTR制度を用いた「情報公開-市民参加-自発的管理」を基にする新規汚染管理モデルのパイロット試行
1.パイロットエリアにおいて、情報公開されたデータを利用し、市民が工業団地の活動を監査するプログラムが開発される
2.PRTR制度によって情報公開された化学物質データが活用される
3.リスクコミュニケーション及び市民参加メカニズムに携わる市民/地方行政官の能力が強化される
4.教訓・経験の周辺国展開が検討される
タイ政府は経済の持続可能な成長を目指し「エコインダストリアルタウン構想」を掲げており、マスタープランを策定している。成果1では、同構想と親和性の高いPRTR制度を活用し、市民による工業団地の監査プログラムを実施する。
PRTRデータの活用に係る能力強化を実施する。特にVOC/臭気を対象とした市民参加型環境モニタリングの試行に係る活動では、機器を調達し、市民の手による環境モニタリングを行うことが想定される。
主な活動は既存のPRTRデータの情報公開システムの改良であり、データアクセスの改善や、可視化などが想定される。
これまでの協力の教訓・経験の周辺国展開として、マプタプット地域の産業界における環境管理に関する教訓及び提言を整理したベトナム向けの普及啓発用資料を作成する。
日本人専門家2名及びローカル専門家1名など
カウンターパート配置など