プロジェクト概要

プロジェクト名

(和)産業集積地におけるArea-BCMの構築を通じた地域レジリエンスの強化
(英)The project on regional resilience enhancement through establishment of Area-BCM at industry complexes in Thailand

対象国名

タイ

署名日(実施合意)

2018年2月16日

プロジェクトサイト

タイ バンコク ロジャナ工業団地

協力期間

2018年7月16日から2023年7月15日

相手国機関名

チュラロンコーン大学 人口学研究所・工学部、チュラロンコーン大学 経済学部・大学院、内務省都市計画局(DPT)、内務省防災減災局(DDPM)、国家経済社会開発庁(NESDB)、工業省産業局、工業団地公社(IEAT)、ロジャナ工業団地、他2工業団地

日本側協力機関名

名古屋工業大学、防災科学技術研究所(NIED)、東京大学、水災害・リスクマネジメント国際センター(ICHARM)

背景

2011年6月から10月の間に、4つの熱帯低気圧及び一つの台風による記録的な降雨が次々とタイ王国を襲い、チャオプラヤ川流域において大洪水が発生した。長引いた洪水は、約18,000平方キロメートルの浸水面積、800人以上の死者、1.4兆タイバーツ相当の経済被害をもたらし(内、1兆タイバーツは製造部門における被害)、バンコク北部の8つの工業団地が水没して日系企業469社を含む808社の企業が浸水被害にあい、世界全体のサプライチェーン、とりわけ本邦企業関連のチェーンへ大きな打撃となった。
浸水の直接被害を受けた企業群は、操業・営業停止や国外での代替生産などの期間を経て、再開、移転(タイ内外)、拠点二重化、あるいは撤退を判断し、直接被害を受けた企業の取引先(仕入・納入の両方)やサプライチェーン上に存在する国内外の企業群は、連鎖的に操業・営業停止、同等品の緊急調達、製品の設計変更、新製品の販売延期などの対応で事態の収拾に向けて奔走した。
2011年の洪水被害をきっかけとして、グローバル・サプライチェーンにおける重要な生産・物流拠点となっているタイの工業団地においては、従来の個別企業単位での事業継続マネジメント(Business Continuity Management、BCM)では限界があり、官民連携による地域型事業継続マネジメント(Area-BCM)を主要な工業団地を中心に構築し、タイ全体の産業・経済における競争優位性を維持・向上させる基盤の構築が必要と認識されるようになっている。

目標

上位目標

Area-BCMが導入される産業集積地の自然災害に対するレジリエンスが向上する

プロジェクト目標

タイの産業集積地においてArea-BCMを導入・運用する手法が確立される

成果

1.タイの産業集積地において水害リスク(含内水氾濫)を解析し、評価する手法が開発される。
2.タイの産業集積地において自然災害によるビジネスインパクト(BIA)を分析する手法が開発される。
3.タイの特定の産業集積地においてArea-BCM運営体制が確立する。
4.タイ国内外にArea-BCMを展開するための研修・演習プログラムが開発され展開の枠組みが開発される。

活動

1.災害リスクの解析・評価にかかる活動

1-1.(ロジャナ工業団地他の選択基準を関係機関と作成し)タイの産業集積地における水害リスクに関する基礎データを収集し、評価する。
1-2.タイの産業集積地(同上)における上記リスクについて、ハザードの予測手法を開発し、評価する。
1-3.タイの産業集積地(同上)のビジネスインパクト分析(BIA)で抽出された重要リスク要素をモニタリング・評価するモデルを構築する。
1-4.リスク評価結果・モニタリング状況をWeb上でGISに表示するツールキットの開発を行う。
1-5.開発したツールキットをタイ国内で展開できるように標準化し、Area-BCMのISO規格化に向けた提案書(ISO/TC292)に反映する。
1-6.開発したリスク評価・モニタリング手法およびツールキットをタイ国内で展開するための研修手法を開発する。
1-7.1-6で開発したリスク評価・モニタリング手法およびツールキットを関係者と共有する。

2.ビジネスインパクト分析にかかる活動

2-1.ビジネスインパクト分析(BIA)手法の体系化を行う。
2-2.(選択基準を関係機関と作成し)ロジャナ工業団・他が依存する重要インフラ(電気・ガス・上下水道・通信・道路・交通など)の水害リスク(起こりやすさとインパクト)を評価する手法の開発を行う。
2-3.重要インフラ被害・復旧評価手法を開発する。
2-4.ロジャナ工業団地他(同上)内外の事業者間の相互依存性を考慮した水害リスクを評価する手法の開発を行い、事業者間相互リスク(サプライチェーンリスク)評価手法を開発する。
2-5.選択された工業団地全体の水害リスクとインパクトを評価する手法の開発を行い、マニュアルを作成すると同時に、Area-BCMのISO規格化に向けた提案活動(ISO/TC292)に情報提供する。
2-6.水害リスクのBIA評価結果をWeb-GIS上で可視化する手法を開発し
ツールキットの機能に反映する。
2-7.ビジネスインパクト分析(BIA)の展開を行うための研修手法を開発し、研修教材・指導マニュアルを作成する。
2-8.研修教材・指導マニュアルを関係者と共有する。

3.Area-BCM運用体制の確立にかかる活動

3-1.工業団地内の企業・関係組織のArea-BCMを広域的に開発・導入運営する手法を開発し、Area-BCM策定マニュアルを作成する。
3-2.各工業団地の企業・組織の個別BCMを連携させたArea-BCMを設計し、Area-BCM設計概要書に取り纏める。
3-3.個別BCMを連携させたArea-BCMを開発する手法を開発し、各工業団地に導入し、Area-BCM開発マニュアルを作成する。
3-4.Area-BCM開発手法の展開のための標準化を行い、更にISOの新規提案活動(ISO/TC292)に情報提供する。
3-5.Area-BCMをタイ国内の工業団地に展開するための研修手法を開発し、Area-BCM研修マニュアルを作成する。
3-6.Area-BCMの展開のための持続的な研修コースを開設する。
3-7.3-6で開設した研修コースを実施する。

4.Area-BCMの普及・展開に関する活動

4-1.Area-BCMの研修・演習プログラムへのニーズの確認を行い、ステークホルダーを特定する。
4-2.Area-BCMの日本企業をモデルとした普及策の検討を行い、Area-BCM普及策概要書に取り纏める。
4-3.Area-BCMの個別研修・演習プログラムを策定し、実施する。
4-4.研修・演習体系を仕様書に取り纏め、ISOの新規提活動に情報提供する。

投入

日本側投入

1.専門家
2.研修員受け入れ
3.供与機材
4.プロジェクトオペレーションコスト

相手国側投入

1.相手側人材
2.プロジェクト執務室
3.プロジェクト実際に必要なデータ
4.プロジェクト実施に必要な管理費、オペレーションコスト
5.演習・研修ルーム