プロジェクト概要

プロジェクト名

(和)公共放送組織体制強化プロジェクト
(英)The Project for Capacity Development of Public Service Broadcaster of Ukraine

対象国名

ウクライナ

署名日(実施合意)

2016年6月9日

協力期間

2017年1月18日から2022年3月31日

相手国機関名

(和)ウクライナ公共放送局
(英)Public Broadcasting Company of Ukraine

背景

ウクライナにおいては、1991年の旧ソ連邦崩壊後、市場経済への移行プロセスの中で、メディア関連企業が急増し、2014年末時点で放送メディアはTV・ラジオ合わせて1622社、活字メディアが3万4002社となっている(国家登録局集計)。しかし、実態は少数の新興財閥(オリガルヒ)が主要メディアを独占しており、4つのメディア・コングロマリット(複合企業)が、情報を統制し表現の自由を阻害し続けていると言われている。その結果、ウクライナのメディアセクターでは、作為的な世論操作、多数の政治広告、メディア・オーナーによる自社の報道内容の検閲、失業を恐れるジャーナリストの自己検閲等の問題が顕在化し、「真のジャーナリズムは存在しない」(コンラッド・アデナウアー財団調査。2012年)状況と言われる。こうしたメディア分野に対する政府による影響力の強化、市場を独占するオリガルヒによるメディアの私的利用による情報操作の影響が深刻化している。マスメディアが権力の監視や国民の知る権利の保証など、本来の役割を果たすためには、政府及び市場のいずれからも独立し、「民主主義の礎石となり得る」(UNESCO年次報告、2009年)公共放送局の育成が喫緊の課題である。
EU加盟を目指すウクライナ政府は2014年3月、EUとの連合協定締結のための条件(「コペンハーゲン基準」政治的要件)を満たすため、国営放送局の公共放送局化方針を決定した。また、2015年4月、同国最高会議が「公共サービスTVラジオ放送法」を採択し(5月、大統領署名により発効。)、同年11月、閣議決定により、新放送局を株式会社とすることを決めた。2017年1月、同法規定に基づき、キーウの国営テレビ局(National Television Company of Ukraine:NTU)を核として、全国の23地方局(クリミア、ドネツクを含む。)、国営文化TV・ラジオ局、映画制作会社等、計32社を統合したウクライナ公共放送局(Public Broadcasting Company of Ukraine:PBC)が設立された。
PBCには、国民のための放送局として、視聴者の信頼を獲得することが求められているが、従来、政府の広告塔としてのイメージが強く、平均視聴者率は1%以下という状況が続いており、広告収入も伸び悩んでいる。4年間の移行期間中は国営時代と同様、上限20%の広告収入が認められており、また、移行期終了後は、受信料制度の導入が決まっているが、番組の質、信頼性が向上しない限り、受信料徴収も困難になるものと見られ、スタッフの能力向上とコンテンツ改善が急務となっている。
本事業は、ウクライナにおいて、1)PBCスタッフのテレビ放送機材に係る運用及び維持管理能力の強化、2)PBCスタッフの教育・文化番組制作能力の強化、3)災害時及び非常時の報道体制の構築への協力を行うことにより、ウクライナ全土において正確・中立・公正な情報を提供する公共放送局として放送番組の質が向上することを図り、もって、PBCがウクライナ全土において信頼されるマスメディアのモデルとなることに寄与するものである。

目標

上位目標

PBCがウクライナ全土において、信頼されるマスメディアのモデルとなる。

プロジェクト目標

ウクライナ全土において正確・中立・公正な情報を提供する公共放送局として、放送番組の質が向上する。

成果

1.PBCスタッフのテレビ放送機材に係る運用及び維持管理能力が強化される。
2.PBCスタッフの教育・文化関連テレビ番組の制作能力が強化される。
3.災害及び緊急時に、ウクライナ全土で関連ニュースを正確・迅速に報道するための体制がPBCに構築される。

活動

成果1にかかる活動

1-1.PBCの技術者が、日本人専門家と協力し、PBCのテレビ放送機材に係る運用及び維持管理システムの現状分析を行い、課題を特定する。
1-2.PBCが公共放送局としての機能を果たす上で必要な機材を供与する。
1-3.PBCの技術者が、日本人専門家と協力し、PBCのテレビ放送機材に係る運用及び維持管理システムを改善するためのアクション・プランを作成する。
1-4.1-3で策定されたアクション・プランに基づき、PBCの技術者が、日本人専門家と協力し、技術スタッフのためのOJTを行う(運用管理簿の作成含む。)。

成果2にかかる活動

2-1.PBCの教育番組制作部門のスタッフが、日本人専門家と協力し、PBCにおける番組制作の現状分析を行い、課題を特定する。
2-2.2-1を踏まえ、PBCの教育番組制作部門のスタッフが、日本人専門家と協力し、「番組制作方法に関するハンドブック」を作成する。
2-3.2-2で作成するハンドブックを活用し、PBCの教育番組制作部門のスタッフが、日本人専門家によるOJTを通じ、教育番組を制作する。

成果3にかかる活動

3-1.PBCの報道部門のスタッフが、日本人専門家と協力し、災害及び緊急時の報道行う体制を構築するための現状調査とニーズ調査を行う。
3-2.3-1を踏まえ、PBCのスタッフが、日本人専門家と協力し、災害及び緊急時の報道にかかわる部署の改編を行う。
3-3.PBCスタッフが日本人専門家と協力し、災害及び緊急報道のマニュアルを作成する。
3-4.3-1を踏まえ、PBCのスタッフが、災害及び緊急時の情報を収集するために関係する公的機関と報道体制のネットワークを形成する。

投入

日本側投入

1.日本人専門家派遣
(緊急報道、番組制作、機材管理、業務調整等の分野)
2.機材供与
3.本邦研修
4.現地活動費

相手国側投入

1.カウンターパートの配置
プロジェクトダイレクター:PBC会長
プロジェクトマネジャー:PBC技術部長
ワーキンググループ1:PBC技術スタッフ
ワーキンググループ2:PBC番組制作スタッフ
ワーキンググループ3:PBC報道スタッフ
2.施設と機材
(日本人専門家の執務スペース、ワーキンググループ活動のための会議室/セミナールーム、活動で使用する放送機材等)
3.ローカルコスト
(活動に参加するPBCスタッフの人件費、活動で利用するPBC施設・機材の維持管理費等)