「国家健康保険政策カウンシル」本格稼働に向けた準備セミナーの開催

2019年10月30日

健康保険制度の運営には、多くの関係者の協力が不可欠です。ベトナムの場合は、保健省が健康保険についての政策立案を行っていますが、健康保険制度を担っているのは、ベトナム社会保障(VSS)です。また、健康保険による給付の対象となる医療サービスは、多くが保健省の傘下にある公立病院や診療所を通じて提供されています。さらに、健康保険への予算配分には保健省と財務省の連携が必要であり、勤労者の健康保険加入や、貧困層の保険制度の適用については、労働・傷病兵・社会省や各省の人民委員会との連携が求められます。政府機関のみでなく、各種の研究機関、医科大学、医療従事者の職能団体との調整や、薬品や医療機材を扱う企業との協力も必要です。

2008年の健康保険法制定以降、健康保険に関わるさまざまな組織の代表者が集まり、意見交換をする必要性が生まれたことから、2016年8月、「国家健康保険政策カウンシル」設置についての保健大臣令が発令されました。以降、大臣令に基づいて、保健省内でのカウンシルメンバーを集めた会議は行われましたが、これまでに、保健省以外の組織に所属する委員を招く機会はありませんでした。そこで、本プロジェクトは、ベトナムでの「健康保険政策についてのカウンシル」を本格的に機能させるための活動を進めてきました。この一環として、まずカウンシルの目的や重要性について関係者の理解を促すために、準備セミナーを行うことになりました。

同セミナーは2019年8月30日、首都ハノイにおいて開催されました。参加者は計31名で、ベトナム保健省、司法省、ベトナム社会保障、保健政策研究院などの公的機関の他、国立病院や医師会、民間病院協会などの診療サービス側、労働者連合、商工会などの被保険者側、医薬品協会、医療機器協会などの医業関係者も参加し、幅広い関係者を交えた会となりました。

セミナーでは、保健省から「国家健康保険政策カウンシル」についての大臣令の内容や、カウンシルの運営規定やメンバーについての案の紹介が行われました。また、プロジェクトのチーフアドバイザーから、ベトナムのカウンシルの参考事例として、日本の「中央社会保険医療協議会」や各種部会の役割について説明が行われました。その後、質疑応答の時間には、「保健大臣令では他の省庁に対する拘束力がないため、カウンシルについての法整備が必要」、「カウンシルの専門性を高めるため、有識者を招聘して参考意見を集めたほうが良い」、「カウンシルに中立性を持たせるために、政府行政官は参加しないほうが良い」など、参加者から数々のコメントが寄せられました。

こうしたコメントに対して、保健省健康保険局長は「現在、健康保険法の改訂作業を進めており、カウンシルについての記載を含めることを検討したい」と回答しました。さらに、参加者に対して、「できるだけ早くカウンシルを本格的に稼働させるため、関係者の協力をお願いしたい」という要請が行われ、セミナーは終了しました。

2019年10月現在、プロジェクトでは、セミナー参加者からのコメントを踏まえて、カウンシルの運営規定やメンバーのリストの最終化を行っています。今後、関係者からの協力を得て、第1回カウンシル総会の開催に向けて準備を進める方針です。

【画像】

保健省健康保険局長によるプレゼンテーション

【画像】

質疑応答の時間には、参加者から多くのコメントが寄せられた