プロジェクト概要

プロジェクト名

(和)ジェンダーの視点に立った金融包摂促進支援プロジェクト
(英)Project for Promoting Gender-Responsive Financial Inclusion through Vietnam Women’s Union

対象国名

ベトナム

署名日(実施合意)

2018年11月28日

協力期間

2019年3月24日から2021年3月23日

相手国機関名

ベトナム女性連合

背景

ベトナムは、「ドイモイ(刷新)政策」導入以降、市場経済の導入などで著しい経済成長を遂げ、同国の貧困率は1993年の58%から2014年には13.5%に減少し、著しい改善を見せている。一方で、都市・地方間の格差が拡大傾向にあり、同国の持続的発展にとって、全人口の7割が居住する地方部と都市部の格差是正が大きな課題となっている。ベトナムで正規の金融機関の口座保有率は成人人口の31.0%、貧困層に限ると18.9%であり、その内、金融機関に貯蓄ができている割合は9.1%であることから、貧困層の金融アクセスが大きな課題となっている。
ベトナムでは、市中銀行にアクセスできない貧困層・低所得者世帯向けに、ベトナム社会政策銀行(VBSP)をはじめとする政府系金融機関が過度に優遇的な低利貸付を展開し、また規制当局による監督を免除されるなど、健全な競争に基づくマイクロファイナンス産業の発展を阻害しているのが現状である。また、マイクロファイナンスに限れば顧客は大多数が女性であるが、提供されているサービスは極めて限定的である。商品は短期少額融資かつグループ貸出制が主流で、付帯サービスは預金と振込に限定されているなど、顧客、特にBOP層の女性の置かれた状況やニーズを十分に反映していないといった課題がある。他方、近年、政府では金融包摂戦略策定の動きがみられ、また限定的ではあるがデジタルファイナンスサービスも提供され始めており、女性を含め良質な金融サービスを十分に活用できていない層への働きかけ強化の機運も見受けられる。
国際的にも金融包摂におけるジェンダー格差の問題は指摘されているが、女性の金融サービス活用促進は単に彼女ら自身の経済活動支援のみならず、家族の他構成メンバーの厚生水準の向上、さらには、地域や国家経済へ貢献することが指摘されている。しかし、こうしたジェンダー格差是正に向けては、女性の口座保有率を向上させることのみならず、女性が抱える課題(低い金融リテラシー、限定的な資産保有、制限されたモビリティ、低い携帯電話保有率等)に対応し、女性のライフサイクルに応じた金融ニーズに合致するサービスを提供すること、加えて女性にアウトリーチするための適切なデリバリーチャネルを構築することが重要であることが指摘されている。また、それらアプローチを可能にするためには、ジェンダーの視点を金融包摂戦略に統合していくことが不可欠である。
本プロジェクトの協力相手機関であるベトナム女性連合は、全国1600万人以上の成人女性会員を抱え、国・省・郡・コミューンに亘る広範なネットワークを有し、女性の教育、保健、福祉、生計向上等の分野でサービスを提供している。また、女性の権利や利益を代表し、ジェンダー平等推進のためのアドボカシーや政策提言を行うナショナリマシーナリとしての機能を果たしている。金融セクターにおいては、VBSP等を通じたマイクロファイナンスの仲介を行うと同時に、独自のマイクロファイナンスプロジェクトを実施しており、正規マイクロファイナンス機関及びインフォーマルなマイクロファイナンス組織を傘下に有する。マイクロファイナンスの顧客の多くは女性であることからも、女性連合のネットワークは強みを有する一方で、提供されている金融サービスは限定的で女性特有の役割や視点を踏まえた商品が十分に提供されていないことに加え、女性連合職員は十分な専門知識や経験を有していないこと、そのためジェンダーの視点に立った金融包摂に向けた啓発や政策提言活動にも限界があることが課題である。ベトナムにおける金融包摂を促進するためには、地方、特にBOP層の女性に対するニーズに即したマイクロファイナンスの提供を、女性連合関連以外の金融機関も巻き込み促進することが求められている。

目標

上位目標

BOP層の女性のニーズに応じたジェンダー視点に立った金融・非金融サービスがターゲット層の女性たちに活用され、それらサービスの提供が強化される。

プロジェクト目標

本事業は、ジェンダーの視点に立った金融包摂の促進に向けて、ベトナム女性連合および金融サービス提供機関の能力強化を通じて、貧困層および低所得層(BOP層:Base of the Pyramid)の女性のニーズに応じた金融・非金融サービスの開発と提供を促進することを目的とする。

成果

1.ジェンダーの視点に立った金融・非金融サービスのデザイン、開発手法やプロセスに加えて、ジェンダーの視点に立った金融包摂を促進するための教訓および提言をまとめた報告書が作成される。
2.パイロット活動、研修・セミナー並びに提言作成のプロセスを通じて、女性連合および対象FSPのジェンダーの視点に立った金融包摂にかかる能力が向上する。

活動

1.ジェンダーの視点に立った金融包摂に関する研修・セミナーの実施
2.ジェンダーの視点に立った金融関連サービスの需給ギャップ調査
3.ジェンダーの視点に立った金融関連サービス提供促進に向けての提案
4.金融サービス提供機関向け研修の実施
5.政策・規制監督機関を含むステークホルダー向けセミナーの実施

投入

日本側投入

(a)コンサルタント:総括/金融包摂政策、金融サービス/ジェンダー、金融サービス提供機関能力強化、研修管理/業務調整
(b)その他 研修員受入れ:第三国研修

相手国側投入

カウンターパート、オフィススペース