プロジェクト活動

1.事業概要

(1)事業目的(協力プログラムにおける位置づけを含む)

本事業は、対象となる3つの教員養成校(マルコム・モファット(中央州)、ムフリラ(コッパーベルト州)、チャールズ・ルワンガ(南部州))にて、1)国立科学センターの能力向上、2)教員養成校理数科教官の教授のための教科知識の向上、3)各州における教員養成校と学校との連携強化を行うことにより、プロジェクト目標「対象教員養成校の理数科教員養成の質が協力校との連携(授業研究・教材研究)により改善する」ことを目指す。それを以て上位目標「全ての教員養成校の理数科教員養成の質が改善する」ことに寄与するもの。
本プロジェクトは教員養成校と学校現場との協働(授業研究・教材研究)により、教員養成校教官及び協力校教員の能力強化、授業案、サンプル教科書、教員養成校教官指導書、学生用教科書といった成果物を開発することを目指す。これらの成果物をこれまでの技術協力プロジェクトにより構築してきた校内研修の仕組みで活用することで、教員養成課程だけでなく、現職教員にも裨益する支援を行う。

(2)プロジェクトサイト/対象地域名

3州(中央州:人口約120万人(2010年、以下同じ)、コッパーベルト州:約190万人、南部州:約160万人)

(3)本事業の受益者(ターゲットグループ)

直接裨益者:対象3教員養成校(注1)(初中等両方の教員養成を行うマルコム・モファット、中等教員養成を行うムフリラ、初等教員養成を行うチャールズ・ルワンガ)の教官約50名、及び協力校(プロジェクトにおいて教員養成校と協働の活動を行う初等・中等学校)の教員(各教員養成校で3校の拠点校と協働する場合、全体で最大720名程度)

間接裨益者:対象3教員養成校の学生(1,800名)と協力校(初等・中等学校)の児童・生徒(最大で15,000人)※協力校は教材研究に継続的に取り組む意欲のある学校をベースライン調査を通じて選定予定。なお、教材研究の対象学年は初等5年生、中等8年生(注2)とする見込み。

(注1)ザンビアには15の公立教員養成機関(4大学、1特別教育機関、10教員養成校(うち初等のみを扱うのは7つ、初中等は1つ、中等のみは2つ)がある。これまでの授業研究への取り組み、理数科教官の体制、初等と中等のバランス、地理的な配置を考慮し、この3つの教員養成校が選定されている。
(注2)これまでの技術協力プロジェクトではまず理数科教官の教科知識が高い中等学校への支援から開始し、初等学校に展開することが多かったが、本案件の形成時にザンビア側から中等学校よりも学習達成度で課題を抱える初等学校に早期に協力を開始することが要望されたため、初等学校5年生、中等学校8年生を対象学年として学校現場での取り組みを行うことで合意。

(4)事業スケジュール(協力期間)

2016年1月1日から2019年12月31日

(5)総事業費(日本側)

約4.5億円

(6)相手国側実施機関

(7)投入(インプット)

1)日本側

i)人材

a)長期専門家3名(分野の組合せは人材の確保状況による)
チーフアドバイザー
数学教育/業務調整
理科教育
b)短期専門家(必要に応じ)

ii)研修

プロジェクトのザンビア側リソース・パーソンに対する本邦及び第三国での研修

iii)資機材

a)事務所用機材(コンピューター、プリンター等)
b)理数科教育に関する教材・参考書
c)車両

iv)経費

a)技術移転に関する現地業務費(必要に応じ)
b)日本人専門家の旅費・交通費

2)ザンビア国側

i)人材

a)教育省教師教育局教員養成課(課長他シニアスタッフ4名)、国立科学センター職員(センター長他シニアスタッフ5名)
b)SMASTEフェーズ1&2及びSTEPSプロジェクトで育成されたコア・テクニカル・チーム(教育省教師局現職教員課課長他シニアスタッフ10名)と教材研究チーム(教育省シニアスタッフ、教員養成校教官、州教科コーディネーター等理科6名、数学9名)を含む研修チーム
c)教員養成校理数科教官と協力校教員

ii)資機材

a)プロジェクト活動に必要な事務所その他の施設
b)事務所用機材
c)車両及び燃料
d)教材研究に必要な教材

iii)経費

プロジェクト活動の実施に必要な経費

(8)環境社会配慮・貧困削減・社会開発

1)環境に対する影響/用地取得・住民移転

1)カテゴリ分類(A,B,Cを記載)C
2)カテゴリ分類の根拠 本事業は、「国際協力機構環境社会配慮ガイドライン」(2010年公布)に掲げる影響を及ぼしやすいセクター・特性及び影響を受けやすい地域に該当せず、環境への望ましくない影響は最小限であると判断されるため。

2)ジェンダー・平等推進・平和構築・貧困削減

一般に女子学生の方が理数科を苦手とする者が多いと報告されていることから、拠点校での女子生徒の学習改善、また教員養成校課程への支援により、将来的に教職につく女性理数科教員に裨益することが期待される。

(9)関連する援助活動

1)我が国の援助活動

・教育政策アドバイザーを中心に「教員の質の向上を通じた基礎教育の質の向上プログラム」を形成しており、本プロジェクトは協力プログラムの中核的事業との位置づけ。
・これまでに「理科研究授業支援プロジェクト(SMASTE)」(フェーズ1:2005-2007)、「授業研究支援プロジェクト(SMASTE)」(フェーズ2:2008-2011)、「授業実践能力強化プロジェクト(STEPS)」(2011-2015)を実施。本プロジェクトは現職教員に導入してきた授業研究・教材研究を教員養成課程に導入するとともに、先行案件の成果も踏まえて改訂された教員養成カリキュラムに合わせて教官用指導書、教員養成校学生教科書を開発するもの。
・教育省に教育政策アドバイザー専門家が派遣されており、政策や予算策定に係る情報収集と助言、教育省関係機関との調整を行っており、本プロジェクトとも政策、予算面で相乗効果が期待される。
・日本はアイルランドと協調して教育省のプール・ファンドに貧困削減戦略無償(PRS無償)を拠出(これまで6億円を供与済み)しており、このプールファンドから本プロジェクトにかかるザンビア側活動が手当される予定。
・対象とする教員養成校の一部及び対象地域の初等・中等学校に協力隊員(理数科教師隊員を含む)が派遣されており、教員養成校教官や初等・中等学校教員と活動を実施している。
・アフリカ域内に向けて授業研究の取り組みを紹介する技術会合を2013年6月にザンビアで開催するなど、域内での学びあいを積極的に推進している。本プロジェクトでもこうした域内及びグローバルな学びあいを促進する予定。

2)他ドナー等の援助活動

対象の教員養成校に対する援助を行っている他ドナー機関は現在なし(過去にはベルギーのVVOBがチャールズ・ルワンガ教員養成校に対するアクション・リサーチ及びICT分野の支援を実施)。本プロジェクトは教員養成校への支援を行うため、教員養成校へのこれまでのベルギーの支援との相乗効果が期待される。

2.協力の枠組み

(1)協力概要

1)スーパーゴール:

小学校及び中学校での理数科教育の質が向上する
【指標】
(1)ザンビア試験カウンセルによる試験の理数科科目の合格率が改善する
(2)ザンビア試験カウンセルによる小学校5年生の試験結果が改善する
(3)東南部アフリカ諸国連合の地域学力試験結果が改善する

2)上位目標:

小学校及び中学校での理数科教育の質が向上する
【指標】
(1)ザンビア試験カウンセルによる試験の理数科科目の合格率が改善する
(2)ザンビア試験カウンセルによる小学校5年生の試験結果が改善する
(3)東南部アフリカ諸国連合の地域学力試験結果が改善する

3)プロジェクト目標:

対象教員養成校の理数科教員養成の質が協力校との連携(授業研究・教材研究)により改善する
【指標】
(1)対象教員養成校の理数科教官が実施する授業が改善する
(2)協力校の教員が実施する授業が改善する

4)成果

成果1:教員養成校理数科教官に教授のための教科知識に関する研修を実施し、他の教員養成校に対する研修の実施・展開を担う国立科学センターの能力が向上する
【指標】
(1-1)活動の結果を反映した他の教員養成校向けの研修パッケージが開発され、品質保証チームに承認される。
(1-2)活動の結果を反映したサンプル教師用指導書とサンプル教科書が開発され、品質保証チームに承認される
成果2:協力校との教材研究を通じ3教員養成校理数科教官の教授のための教科知識が向上する
【指標】
(2-1)3教員養成校の教授能力の評価結果
  • -教官の授業に関する研修チーム/3教員養成校の学生の質問票による評価結果
  • -教員養成校の教授法のコースにおける教材研究の理論と実践の割合
  • -教材研究を通じて得た教授のための教科知識
(2-3)少なくとも○セットのサンプル授業案、学生用教科書、教員養成校教官用指導書が教材研究の結果、開発される。
成果3:州における学校ベースの継続的職能開発の活動と対象3教員養成校との連携が強化される
【指標】
(3-1)州/郡/ゾーンの各レベルにおいて、ファシリテーター/ステークホルダー・ワークショップでファシリテーターを担当した教員養成校教官の数
(3-2)教員養成校と協力校が協働して実施した公開授業やグッドプラクティス紹介ワークショップの件数
(3-3)教員養成校と協力校が協働して実施した公開授業やグッドプラクティス紹介ワークショップの参加者の満足度

※なお、成果2で開発したサンプル授業案やサンプル教科書は成果3の公開授業やワークショップを通じ、対象州内の初等・中等学校に配布される予定。

3.前提条件・外部条件(リスク・コントロール)

(1)前提条件

・ザンビア側が2015年中にベースライン調査、教員養成校への啓発活動、教材研究の試行等のプロジェクト開始にあたっての必要な準備を行う。
・ザンビア側が研修チームに必要な人材(コア・テクニカル・チーム及び教材研究チームのメンバー、国立科学センター職員)を配置できる。
・対象3教員養成校の協力校がプロジェクトに反対しない。
・初等・中等学校において、学校ベースの継続的な職能開発(SBCPD)が継続的に実施される。

(2)成果達成のための外部条件

・研修を受けた人材が引き続きプロジェクト活動に関与する。
・開発した教材がザンビア側機関により印刷され対象者に配布される。

(3)プロジェクト目標達成のための外部条件

対象3教員養成校と協力校の学習環境が維持される。

4.評価結果

本事業は、ザンビア国の開発政策、開発ニーズ、日本の援助政策と十分に合致しており、また計画の適切性が認められることから、実施の意義は高い。

5.過去の類似案件の教訓と本事業への活用

(1)類似案件の評価結果

インドネシア初中等理数科教育拡充計画(1998-2003年)では3つの教員養成大学がパイロット活動を通じて学校現場とのつながりを重視し、学部レベルにおいて理数科教育の質の改善を目指す取り組みを行った。終了時評価調査で得られた教訓は次のとおり。1)大学間の連携が成果物の作成だけでなく、関係者の意識面においても連携機関全体に対し責任感をもつことにつながり効果的であった、2)大学—現場学校間の連携は、両者にとって大変有効。大学は、現場に直結した成果物の開発を行うことで、初・中等教育の改善に自らがかかわっているというコミットメントの意識が強化。現場学校においては、大学との連携を通じて教授法の改善に対して強力な支援者が得られた。

(2)本事業への教訓

本事業でも対象3教員養成校の連携、取り組み方法、結果の共有を事業実施面で最大限に行う。また、拠点校での教材研究が教員養成課程と学校現場双方にとって有益な取組みを受け止められるように取組む。

6.今後の評価計画

(1)今後の評価に用いる主な指標

2.(1)のとおり。

(2)今後の評価計画

事業開始前(2015年中)
ベースライン調査(ザンビア側で実施)
事業開始後6か月毎
定期モニタリング
2019年4月
エンドライン調査
事業終了3年後
事後評価

7.広報計画

(1)当該案件の広報上の特徴

1)相手国にとっての特徴

「授業研究」や「教材研究」の方法論や具体的な単元での指導方法を教員養成課程のカリキュラムに盛り込み、教官用ガイドや学生用教科書を作成していく本プロジェクトの取り組みはアフリカ域内の中でも先進的なもの。ザンビアの授業研究の実践は世界の授業研究の実践が共有される国際会議でも注目。本案件とその取組みの共有、発信を通じて、ザンビアがアフリカの授業改善の実践をリードする国のひとつとして認知されうる。

2)日本にとっての特徴

本プロジェクトで取り組む「授業研究」及び「教材研究」は日本発の取り組みであり、日本が世界に発信できる豊富な実績、経験を有する。また、日本各地で取り組まれている教員養成大学と大学付属校との連携が本プロジェクトの中核的な活動となっている。

(2)広報計画

・プロジェクト概要資料(和文、英文)
・授業研究にかかる国際学会、国際会議、技術会合でのプロジェクト取り組み紹介