「学校を越えた学び合いの場-長期休暇を利用した教員の研修会が各地で開催」

2017年10月2日

8月はザンビアの学校も学期末休暇。ザンビア全土では、授業のないこの期間を利用して、地域の学校から集まった先生方がそれぞれの実践や課題について意見を交換し合うための「ステークホルダーズワークショップ」が催されています。
「ステークホルダーズワークショップ」は、2005年にJICAの協力で授業研究が導入された際に、授業研究を確実に定着させて多くの学校へと広げるための工夫として始められた取り組みです。州や郡、地区単位で学校の管理職の先生方が集まり、授業研究の成果や課題について共有し合う大切な場となってきました。現在このワークショップでは、授業研究に関する意見交換の場としてだけでなく、さらに広く学校運営の実践や課題まで議論できる場としても活用されるなど、それぞれの地域のニーズや状況に合わせて計画・実施されています。
8月末に中央州のカピリムポシ郡で行われた5地区合同のステークホルダーズワークショップは、対象地域内の140名以上の先生方が泊まりがけで集う2日間のプログラム。一日目は、教材研究に関する全体講義の後、地域ごとに分かれて前学期の授業研究実施に伴う各学校の授業研究の課題について話し合われました。多くの学校が、「教師が一方的に教えるのではなく、同時に生徒からも多くのことを学べるという認識を持てた」「生徒のパフォーマンスが向上した」といった授業研究の効果に言及する一方、「授業研究に積極的でない教員がいる」などの課題も明らかになりました。続く二日目は、教科別のワークショップ。ベテランの教員が自作の教材を披露したり、若い教員がPCソフトウェアの使い方を他の教員に指南したり、学校を越えた交流の中で互いの経験から多くの学びと新しい実践のアイディアが生まれました。日本の「授業研究」がザンビア独自の「Lesson Study」として根付き、多くの教員にとっての貴重な学びの機会となっていると実感しました。
こうしたザンビア教育省の取り組みを視察する中で必ず目を引くのが、JICAにより実施された日本やマレーシア、ケニアでの研修の参加経験者が発揮するリーダーシップです。今回のワークショップで全体講義を担当したカンディンダ先生は、今から10年以上前にJICA事業の一環として行われたケニアでの理数科授業実践研修、その後2012年には日本での研修に参加しました。研修から数年が経った今でも、教育への熱い思いを胸に地域の中心人物として活躍されています。今回は講師として、以前の研修での学びを生かし、日本語の「Kyozai Kenkyu(教材研究)」という言葉を用いながらその実践の重要性を伝えられていました。JICAザンビア事務所が毎年他国に送り出す研修員の数は、教育分野だけでも30人から40人にのぼります。研修に参加した一人一人から、より良い実践が学校に、さらに地域に広がりつづけていくことが期待されます。
9月11日はザンビア全土の公立学校の2学期始業式。休暇を終えた子どもたちが学校へと戻ってきました。休暇中にワークショップを通して多くの学びを得た先生方によって、さらなるより良い授業が子どもたちのもとへ届けられるのが楽しみです。

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教材研究に関する全体講義。多くの教員が熱心にメモを取り、積極的に質問していました。

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各地域の前学期の課題が共有され、解決策が話し合われました。

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情報科のワークショップでは、実際に授業で扱うソフトを使いながら生徒がつまずきやすいポイントとその対策を確認。

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数学科のワークショップ。ベテラン教員と若手教員がともに一つの授業案を考える過程で、多くの経験や知識が伝えられていきました。