ザンビア共和国MOReDePプロジェクト紹介Vol.2-研究と技術開発

2021年12月13日

市場志向型稲作振興プロジェクト(MOReDeP:Market Oriented Rice Development project)は「稲作の振興」を通じた「農家の所得向上」を目的としています。その達成を目指し、本プロジェクトでは、ザンビアの環境に適した栽培技術を研究開発し、農家にその技術を普及しつつ、コメ産地を形成し、さらに、生産した米の売却によって実際に所得を向上するために有用な知識や技術を農家に習得してもらうといった活動を行っています。これから3回にわたり、私たちが行っている活動を紹介します。

プロジェクト活動1:研究と技術開発

ザンビアにおける稲作の生産性(単位面積あたりの収穫量)は全国平均で1.20トン/ヘクタール(ton/ha)と、米の生産が盛んではない他のアフリカ諸国と比較しても低く(注1)、稲作農家が少ないことや米の耕作面積が小さいこととともに、ザンビアの米の生産量が低い主な原因となっています。これだけザンビアの稲作の生産性が低いのは、栽培環境が稲作に適していないということではなく、農家が実施している基本的な栽培や収穫・収穫後処理方法などに課題があることが私たちの実施した農家調査から分かっています。例えば、種子を蒔いてから収穫までの間に通常最低2回は必要である除草を、66%の農家は1回または全く実施していません(注2)。また、種子については、他品種の種子などが46%も混じっている、質の低いものが使われています(注3)。本プロジェクトでは、このような農家調査から明らかとなった稲作の課題に、日本人の稲作専門家がカウンターパートである国立の農業研究機関(ザンビア農業研究所(ZARI))の研究員とともに取り組んでいます。協働して研究を行うことで、ザンビアのコメ研究能力の向上を図りつつ、課題に対する実践的な解決策となる、ザンビアの多様な環境に適した米の栽培や収穫・収穫後処理技術の開発を進めています。これまでの活動を通して、様々な技術をモジュール化し、各農家がそれぞれの栽培環境に合わせて必要な技術を組み合わせることができる技術パッケージ(Good Rice Practice(GRiP))を開発しました。今後、研究と技術開発をさらに進め、その結果をパッケージに反映することで、さらなる生産性の向上を目指しています。

(注1)アフリカ地域平均は2.27ton/ha、サブサハラアフリカで最も生産性が高いケニアは6.84ton/ha、日本は6.83ton/haとなっている(全てFAO2019年)
(注2)除草の回数が少なすぎる場合、稲にわたるはずの養分や光、水が他の雑草に回ってしまうことから稲が十分に成長しない可能性があり、その場合、生産性に影響がでてしまう。
(注3)農家が使用している種子を調査したところ、すべての農家の種子で他品種等の混ざりが見られ、その純度は平均で54%ととても低いことが判明した。品種によって米の成熟期時期が異なるため、純度が54%の場合、54%の稲が熟していても、混じっている46%の品種の米は、まだ熟していない、または、既に熟しすぎている可能性がある。そのため、適切な収穫時期に収穫されないことで、生産性が下がってしまう。

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研究圃場の専門家とカウンターパート

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生育調査をするカウンターパート

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試験場の種子生産圃場

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稲作農家の聞き取り調査