ザンビア共和国MOReDePプロジェクト紹介Vol.4-市場志向型稲作の普及

2022年1月25日

市場志向型稲作振興プロジェクト(MOReDeP:Market Oriented Rice Development project)は「稲作の振興」を通じた「農家の所得向上」を目的として様々な活動を行っています。今回のプロジェクト活動紹介では、本プロジェクトの大きな特徴の一つでもある「市場志向型稲作の普及」を紹介します。

プロジェクト活動3:市場志向型稲作の普及

これまでの2回のプロジェクト活動紹介では、「技術の研究開発」、「技術の普及とコメ産地の形成」についてお話ししました。これら二つの活動により、開発された技術が農家に普及し、形成されたクラスターにおいて既存の稲作農家や新たに稲作を始めた農家によって、今までよりも多くの米が生産されることが期待できます。一方、本プロジェクトの⽬的は「稲作の振興」を通じた「農家の所得向上」ですので、各農家の所得が実際に向上することがとても重要です。また、さらなる稲作の振興には、米が農家にとって魅力のある作物でなくてはなりません。そこでMOReDePでは、「儲かる稲作」をテーマに市場志向型稲作アプローチを開発し、生産した米の販売によって実際に所得を向上するために有用な知識や技術を農家に習得してもらったり、稲作農家の市場へのアクセスを向上するための活動も行っています。

これまでの活動では、コメのバリューチェーンや市場、稲作農家の米の販売の現状を把握するための調査を行い、その結果にもとに市場志向型稲作アプローチに関する教材を作成しました。例えば、調査によって「米の取引価格を販売前に得ている農家は半分ほどしかいないものの、そのような情報を得ている農家の米の売値は、情報を得ていない農家よりも24%高い」ということが分かりましたので、「市場情報へのアクセス」に関する内容を教材に含めました。また、「精米した米を販売する場合の純利益は籾の販売の1.7倍以上であるが、98%の農家は実践していない」との結果から、「精米した米の販売」に関する情報を組み込みました。教材には、その他の調査結果も踏まえて、コメの品質向上(市場の求める品質に近づける)、販売時期の工夫(時期による買取価格の違いを考慮して販売する)、共同出荷(他の農家と共同で出荷してコストを削減する/交渉力を増大させる)といった内容などが含まれています。西部州やルアプラ州においては、この教材を使用して、既に講師の育成研修や農家研修を実施しました。農家に対する研修では、知識や情報を習得してもらうだけではなく、どの内容を実践するかについての検討と決断を各農家に委ねつつ、習得した知識を活用した自らのビジネスプランを作ってもらい、ただ「作って売る」のではなく、「売るために作る」ことを促しています。研修受講者のモニタリング結果によれば、既に成果が表れてきており、例えば、市場の籾取引価格は2019/2020から2020/2021の作期にかけて下がっているのにも関わらず、研修を受講した農家の売値は8.9%上がったことが分かっています。

今後も本アプローチを普及する活動は継続されますが、参加した農家を定期的にモニタリングするほか、市場志向型稲作の導入による効果をしっかりと調査し、それらの結果に基づいて、市場志向型稲作アプローチの改良を続ける予定です。また、「89%の農家は米の売り先に課題を感じている」という調査結果がでていますので、農家と市場(精米所や仲介業者)を繋ぐ機会を創出するなど、各農家が適正な価格で販売可能な安定した販売先を確保できるよう、農家の市場開拓についても支援していきます。

これまでのプロジェクト紹介を通して「研究と技術開発」、「クラスター形成型普及」、「市場志向型稲作」の概要についてご紹介してきましたが、「ザンビア農業研究機構(ZARI)の研究・研修施設の整備」、「優良種子生産の改善」や「農業機械の利用促進」(どちらも研究と技術開発の活動の一部)、アフリカ開発銀行や国連難民高等弁務官事務所(UNHCR)等の「他機関との連携した活動」など、紹介できなかった活動もたくさんあります。今後、それらの活動についても、随時、紹介していきます。

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農家研修の様子

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作成された教材