プロジェクト概要

プロジェクト名

(和)市場志向型稲作振興プロジェクト
(英)Market-Oriented Rice Development Project(MOReDeP)

対象国名

ザンビア

署名日(実施合意)

2019年6月26日

プロジェクトサイト

全国(但し、首都のあるルサカ州に加え、ルアプラ州、西部州をエントリー州とする)

協力期間

2019年10月1日から2025年9月30日(6年間)

相手国機関名

(和)農業省
(英)Ministry of Agriculture

背景

ザンビアでは、労働力人口の約67%が農業に従事しており、農業部門のGDPは9.8%を占めています。ザンビアでは長年、主食であるメイズに対する偏重した農業政策を行っており、2017年度の農業部門の予算の69.9%がこのメイズ農家向け支援に充てられ農業部門の財政を大きく圧迫しています。農家保護の観点からこの政策の急激な転換が難しいものの、政府は食糧安全保障の面からも、メイズに極端に依存した作付け体系からの脱却を目指しており、「第7次国家開発計画(2017-2021)」では穀物の多様化の一つにコメが挙げられています。ザンビアにおけるコメの消費量は都市部を中心に増加傾向にありますが、栽培技術や収穫後処理技術が未熟なため、生産性は全国平均で1.16t/haと低く、隣国マラウイの1.92t/ha、ジンバブエの2.26t/haより低位です。国内の需要(約62,500トン/年)を国内供給量(約47,500トン/年)で賄えず、不足分は近隣国や東南アジアから輸入しています。
ザンビア政府は、2016年から2020年を対象とする「第二次国家農業政策(Second National Agricultural Policy、以下「SNAP」)」を策定し、農業セクターを鉱業セクターに次ぐ経済成長の原動力と位置づけた上で、多くの小規模農家が居住する地方の貧困問題の解決のためには、農業セクターが果たす役割が大きいと総括しました。ここでも換金作物としてのコメは作物多様化の観点から重点作物と位置付けられており、本事業が目指す稲作振興は、国家開発計画、国家農業政策に沿う協力となります。日本も策定を支援した「第二次国家稲作振興戦略(The 2nd National Rice Development Strategy 2016-2020、以下「NRDS-2」)では、5年間で単収を25%増加、栽培面積を2020年までに20%拡大、コメのバリューチェーン全体の強化を謳っており、本事業が目指す方向と一致しています。なお、本事業の前フェーズである技術協力プロジェクト(「コメ普及支援プロジェクト2015年1月~2019年9月」、以下「前フェーズ」)では、農業省試験場でのイネの研究の基盤整備、栽培ガイドラインなどの稲作普及教材の体系化、カスケード式普及手法を利用したマスタートレーナー、農業普及員、デモ圃場を管理する篤農家向けの陸稲研修プログラムを実施しました。この結果、5,000人を超える人材(農業普及員・篤農家)が稲作技術を得ましたが、引き続き、研修教材や開発した技術の現場での検証、試験研究を通じた技術の整理、農家の市場アクセス強化など、継続して取り組むべき課題が残されました。
本事業では、それらの残された課題を解決すべく、前フェーズで強化した稲研究や普及体制を活用した陸稲の普及に加えて、天水低湿地用の研究開発と技術普及、および市場志向型稲作モデルの構築等を通じた稲作振興及び農民の所得向上を目指します。

目標

上位目標

ザンビア全土において、稲作によって農家所得が向上する

プロジェクト目標

プロジェクトのエントリー州(西部州、ルアプラ州)で換金作物としてのコメの生産振興が図られる

成果

成果1.コメ生産性向上のために必要な情報、技術の提供を通じて栽培技術が改良される
成果2.プロジェクト対象地域において、技術普及を通じて稲作クラスターが形成される
成果3.プロジェクト対象地域における稲作農家による市場へのアクセスが向上される

活動

成果1関連

1-1.ZARIが過去に実施した稲作試験・研究のレビュー・分析を行う。
1-2.対象地域の稲作栽培環境の詳細な分類化と栽培技術改善優先栽培環境の特定。
1-3.稲作クラスターの候補や既存稲作クラスターが稲作普及を行うために想定される技術的な課題を把握する。
1-4.新規参入農家の拡大と既存農家の生産性・付加価値向上を目的とした栽培技術開発と農業試験場の基盤強化(人材育成含む)に関する、5年間の中期計画(毎年更新)おとび年次計画を策定する。
1-5.対象地域の試験場および農家圃場(on-farm)での栽培試験を実施する。
1-6.試験結果の取り纏めと教材の作成を行う。研究成果を発表する(Journalや他の手段を通じて)。
1-7.プロジェクト活動に用いる優良種子の維持管理及び生産を行う。

成果2関連

2-1.既存稲作クラスターや精米業者・バイヤーの情報の収集・分析(ベースライン調査の実施)。
2-2.稲作クラスターの選定基準策定し候補地を選定する。
2-3.稲作クラスター候補地及び既存稲作クラスターで、稲作普及に関する技術的課題を把握し稲作普及計画を策定する。
2-4.ZARIスタッフと普及員が稲作研修及び普及を実施する。
2-5.研修受講農家の稲作をモニタリングし、モニタリングで収集した情報を分析し、普及計画を改訂する。
2-6.フィールドデー(収穫祭)や農業展示会(Agricultural Show)などを通じて、新規顧客(精米所、バイヤー、消費者など)開拓を目的として、新規クラスターをプロモーションする。
2-7.情報共有のため、稲作クラスター内の農家間の意見交換を促す。

成果3関連

3-1.コメのバリューチェーン・市場の現状を把握する。
3-2.市場志向型アプローチを含む農家研修計画の策定と教材準備を行う。(研修計画には、1)対象地域及び対象者の選定、2)対象地域別研修カリキュラム、3)市場での取引を優位に進めるための技術指導を含む)
3-3.市場志向型アプローチに関する講師研修(ToT)を実施する。
3-4.市場志向型アプローチ研修を実施する(1)マーケティング、2)稲栽培・営農記録、3)収穫後処理、4)栄養など)。
3-5.農家と市場(精米所と仲介業者)を繋ぐ機会を提供する。
3-6.大規模精米所と農家間の商談を支援する。
3-7.プロジェクト活動の成果とその分析結果に基づき、研修プログラムを改訂する。
3-8.成果と教訓を蓄積して、他州での稲普及活動に情報提供する。

投入

日本側投入

専門家派遣

長期3名:チーフアドバイザー/稲作研修、稲作研究、業務調整/人材育成計画

短期専門家(必要に応じて検討)

イネ育種、稲作栽培技術、収穫後処理技術、アグリビジネス、社会経済調査、栄養改善、SHEP(小規模農家向け市場志向型普及)

海外協力隊員

機材供与

プロジェクト車両、農機等

研修員受入

カウンターパートの第三国及び本邦研修

その他の活動経費

必要に応じてプロジェクト活動に係る現地経費

相手国側投入

カウンターパートの配置

施設・機材

プロジェクト実施に必要な事務所及び施設の提供

プロジェクトにかかわる現地経費

プロジェクト実施に必要な支出
プロジェクト実施に必要な運用経費(電気、水道、通信費等)