【大学生・大学院生向け国際協力理解講座】全講座実施報告

2019年9月13日

2019年度「大学生・大学院生向け国際協力理解講座」実施報告

2019年度は、「国際協力実務講座(初級編)」、「稲作技術向上」「小規模農家向け農機具の利用促進」、「天水稲作のための稲栽培・種子生産及び品種選定技術」、「小規模農家の生産工場のための野菜生産技術」の5つのコース(実務講座1、農業コース4)を実施し、のべ37名の大学生および大学院生が参加し、無事終了しました。

実務講座(初級編)は、国際協力に関心のある学生から広く希望者を募り、国際協力の現場で働くJICA職員や開発コンサルタント、NGOの職員などの講師による講義、ならびにグループワーク(アフリカルチャーゲーム)を通じて、国際協力の基礎知識を養いながら、更なる学びや進路へのきっかけづくりを目指しています。
農業各コースは、世界各国からJICA筑波に来て農業を学ぶ技術研修員受入のコースに、日本の大学生・大学院生が一緒に参加し、JICA研修員と共に各プログラムの専門的知識や技術を学び、日本国内における国際協力の現場を体験します。

「国際協力実務講座(初級編)」

実務講座_アフリカルチャーゲームの様子

実務講座_PCM研修の様子

実務講座 研修員交流会

日時:2019年8月26(月)~8月30(金)
参加者数:31名
【概要】
・国際協力概論(ODA・JICA事業概要説明、援助事業計画策定、農業・農村開発分野におけるJICAの協力事業)、
・アジア、アフリカなどから来日しているJICA研修員との交流
・ODAがつなぐ多様なアクター(民間企業の海外展開、NGOとの連携、ボランティア事業)
・アフリカ農村の疑似体験(アフリカルチャーゲーム)  
・案件形成、事業マネジメントのためのツール(PCM手法) 
・国際協力分野におけるキャリア開発(自分らしいキャリアの発見、JICA筑波職員との交流)   など
※注;PCM;Project Cycle Management

【参加者の声】
・この5日間での私にとっての一番の学びはどんな物事に対しても多角的な視点を持つことの大切さでした。この考え方を常に持つことで自分の中にある“当たり前”という概念をたくさん壊していけたらと考えています。また、この先私がどのようなキャリアを選択するかにかかわらず、ここでの学びを忘れずに過ごすことで焦らずに自分の将来について向き合っていけると考えています。
・JICA筑波に来ている研修員の方との交流の中で、彼らの誰に対してもフレンドリーなところ、家族、親戚、友人を非常に大切にするところ、たくさんしゃべりたくさん笑い、いつも明るいところなど彼らの素敵なところをたくさん見つけることができた。その中には日本人が普段忘れてしまっていること、軽んじてしまっていることもあり、自分の生活を見直すきっかけになった。私たちが彼らから学ばなければならないことはたくさんあると感じたので、国際協力の現場でもお互いに学び合うことを大切にしていけたら…と思った。 
・開発援助にも多くの方法、役割があるということと、またそこに民間企業が携わっている事を知らなかったので、今回のプログラムで自分の視野が広がりどのような位置で開発援助に関わりたいのか選択肢が増えた。

「小規模農家の生産工場のための野菜生産技術」

野菜生産技術 ボカシ肥を作る実習

野菜生産技術 畑で研修員の研究の説明を受ける

日時:2019年7月22(月)、23(火)、24(水)、26(金)、29(月)、31(水)
参加者数:1名
【概要】
・ボカシ肥の生成 
・採取実習(ニンジン、トマト、タマネギなど)
・鮮度保持実験
・圃場で採取された病原菌の顕微鏡による観察

【参加者の声】
・本講座を受講して,実際に研修員としてJICA筑波に研修を受けに来ている方々、JICAで働いている方々、コンサルタントや講師としてJICAの活動に関わっている方々からたくさんのお話を伺うことができ、国際協力に対する考え方や自分の目指す将来像の構築に新たなアイディアを加えることができた。今までは漠然と将来国際協力に関わる仕事に就きたいと考えていたが、今回の講座を通して、今後自分がどのような経験をしてどのような意思を持つことが重要であるかを明確にすることができたと思う。
 今回講座の大半を研修員たちと過ごすことができ、自分でも積極的に関わろうとすることができたと評価できる。しかし、やはり自分自身や日本のことを聞かれた時や、自分が何かを伝えたいときに英語が十分に話すことが出来なくて悔しい思いをしたことが多かった。

「小規模農家向け農機具の利用促進」

農機具の利用促進 脱穀機の組み立て

農機具の利用促進 部品の改良

日時:2019年8月13(火)~16(金)
参加者数:1名
【概要】
・脱穀機のテスト、評価
・脱穀機の解体と修理、再組立て 
・農業経営計画の分析

【参加者の声】
・就職先は未定であるが、何かしらのサービス(ハードウェア、ソフトウェアetc.)を提供する仕事に携わる際には、設計現場の声や導入先の状態を理解した上で実態に即した的確な仕事がしたいと思う。
・研修員の方とのコミュニケーション・共同作業は貴重な体験となった。学校・職場だけでなく日常生活でも海外の方と接する機会が増えてきているため、意思疎通を的確に取れるように心がけたい。

「稲作技術向上」

稲作技術向上 場外圃場で稲穂の観察

稲作技術向上 刈り取り実習後

日時:2019年8月26(月)~30(金)
参加者数:1名
【概要】
・チッソ含有量算出
・収量調査(五斜線法、坪刈り)
・稲穂の分別方法  
・バインダーやコンバインによる収穫実習
・脱穀機による脱穀実習

【参加者の声】
・現在、日本の農業分野における外国人労働者の経済的行動について研究を行っており、今回の研修への参加は、使用言語や、研修生への教育方法、母国での農業市場の状況に関して様々な示唆を得る機会となった。
また、今後JICAの研修制度が研修員それぞれの母国でどのような効果をもたらしているか、研究課題の一つとしていきたいと考えている。今回のような講座は国際協力や開発に興味を持つ学生にとっても非常に有益な機会であると感じた。在籍校の後輩にもこの取り組みを紹介したいと思う。

「天水稲作のための稲栽培・種子生産及び品種選定技術」

陸稲 研修員から研究の説明を受ける

陸稲 プレゼンテーション後集合写真

日時:2019年8月26(月)~30(金)
参加者数:3名
【概要】
・収量構成要素の調査
・稲の品種登録・育苗
・窒素量の稲栽培に与える影響、水量が稲栽培に与える影響など(研修員の研究テーマによる) 

【参加者の声】
・大学では、開発学や開発途上国における農業に関して、様々なことを講義で実習や講義を受けてきたが、稲に関してはNERICAの概要については学習したものの、実際に触れる機会がなかった。今回の講座では、NERICAを実際に栽培、研究している環境に入り、NERICAを栽培するにあたり、起こりうる問題、必要となる知識が明確になった。
・研修員の方々が講義に非常に積極的に参加し、意見や質問を投げかけているのが印象的だった。また、忙しいであろう中自分たちの研究内容などについて熱心に教えてくださったり、食事の際積極的に話しかけてくださったりしたのが嬉しかった。アフリカ出身の方と関わる機会が今まであまり無かったのだが、皆さんとてもフレンドリーで陽気で面倒見が良く、アフリカが大好きになった。
・私は農業経済学分野で途上国における農業開発を対象に研究活動を行っています。現在は博士課程への進学も視野に入れていますが、一方で、学術的な視点のみを学び、開発現場での実情や現地の方々の本来のニーズを理解する視点が薄れてしまうことへの危惧を常に抱いています。そういった観点から、本講座より得られた知見が、より広域かつ柔軟な視点で自身の研究を見つめ直すということを可能にすると思われます。また、進学以外の選択肢(国際協力系の職業はもちろんのこと、さらには国際協力から離れた職に就いた場合でも)を選択した際にも、上記のような本講座で得られた学びや、本講座で出会った多くの関係者の皆様との関係が、今後の人生において重要な意味を持つと確信しています。

 ※今回、参加いただいた大学生、院生の皆さん、せっかくの夏休み期間、有意義な時間となりましたでしょうか?JICA筑波には、ほぼ1年中、次々に開発途上国から新しい知識、ノウハウを求めて、研修に来られている研修員がいますので、気軽にお立ち寄りいただけると嬉しいです。来年度も開催予定です。興味、関心抱いていただいた方、ご参加をお待ちしています。
以上