2022年5月11日
このサイトでは、復興に向けて力強く進んでいく地域の様子や、日本ではあまり知られていないその土地の魅力をお伝えするため、連続してプロジェクトの事業対象地の紹介を行ってきました。
今回は、シリーズ第一弾の締めくくりとして、ゴルカ郡パロンタール市を紹介します。
リグリグ(Liglig)の丘
女性グループによるバナナの栽培活動
ゴルカ郡南部に位置するパロンタール市は、首都カトマンズから西に約140kmの距離にありますが、国道プリティヴィ・ハイウェイに面しているため、ゴルカ郡の中でもアクセスが良い事業地です。本プロジェクトの対象地の多くは山岳地帯に位置していますが、パロンタール市はダラウディ川をはじめとする大きな川の流れる肥沃な平野や森林の面積が多く、材木を含む様々な天然資源に恵まれています。気候が比較的温暖なこともあって、バナナやライチなどの栽培が盛んに行われており、人口の8割近くが農業に従事しています。また、第1区のコプランという地には、 万病を治すと地元民に信じられている温泉もあります。
パロンタールには、実はもう1つ大きなセールスポイントがあります。それは、パロンタールが近代ネパールの基礎を作ったゴルカ王朝(西暦1559~2008年)の興った地だということです。海抜1437メートルにある「リグリグの丘」には今もリグリグ王国の城址が残っており、多くの観光客が訪れます。「リグリグ(Liglig)」とは景色が美しく澄み渡っている様子を指すマガール語で、その名のとおり丘の頂上からの美しい眺めが有名です。言い伝えによると、当時リグリグ王国では毎年この丘のふもとから頂点を目指すマラソンが開かれ、勝者が翌年の王に選ばれたのだそうで、今でも毎年この地で王者を決めるマラソン大会が行われています。パロンタールの人々はこの歴史に残るリグリグの丘を誇りに持っており、市のビジョンにも「観光と商業の町、リグリグ(美しい)・パロンタール」と謳われています。
こうした有利な条件を活かして農業や観光を中心に経済発展を目指しているパロンタール市も、2015年の震災では甚大な被害を受けました。震災後、JICAも含め多くの支援を受けて住宅、学校、病院等の社会インフラの再建が着実に進められてきました。地域の人々は復興に向けて今もたゆまぬ努力を続けており、より災害に強いインフラ、住宅再建を進めると同時に、経済再建や防災能力向上を目指すBuild Back Better(より良い復興)の考えが浸透している地域であるとも感じられます。今後プロジェクトでは、地域の開発計画の中に復興・防災の観点を盛り込んでいく支援および、住民参加型で生業面のより良い復興を後押しする取り組みを行っていきます。
JICA支援により再建されたアンピパル病院
震災後再建されたダーモダヤ・セカンダリー・スクール。ゴルカ郡を含む重被災地6郡でJICAは300校近くの再建を支援した。
2020年、2021年は、新型コロナウィルスにより、ネパールでも多くの人が苦しみ、プロジェクトも様々な計画の変更を余儀なくされましたが、2022年は感染予防に最大限の注意を払いつつ活動を展開しています。今後の記事では実際の活動の様子をお届けしていきたいと思います。