コロナ禍でのプロジェクト運営-日本から遠隔での活動-

2021年3月22日

新型コロナウイルス感染症の感染が拡大する中、本プロジェクトの日本人専門家も2020年3月下旬に日本へ一時帰国せざるを得なくなりました。その後、遠隔でプロジェクトを運営していく試行錯誤の日々が始まりました。一刻も早くアンゴラに戻りたいとの思いでいっぱいの中、現地スタッフやカウンターパートと連絡を取りながら、私たちにできる活動を精一杯、一歩一歩、実施しました。

プロジェクトが開始して4年目で、最終年にあたる2020年には、プロジェクト終盤に向けて多くの活動が予定されていました。4月にはテクニカルマニュアル(医療従事者向け母子健康手帳使用のためのマニュアル)改訂のための母子健康手帳委員会の開催、ウアンボ州でのモニタリング&スーパービジョン(M&S)、5月にはルアンダ州での新人医療従事者研修、6月からはベンゲラ州5市での母子健康手帳導入のための医療従事者研修と手帳の配布開始、そしてインパクト評価のエンドライン調査…等々、活動予定が盛沢山な時期でした。予定していた活動の実施が難しい状況下でも「プロジェクトを止めない」という強い意志を持って、「アンゴラ保健省が今必要としていることは何か」、「現地スタッフを通してできることは何か」などについて、カウンターパートと共にメールやオンライン会議で話し合いながら活動を進めていきました。
日本人専門家が現地渡航再開できたのは、2021年2月下旬でした。それまでの約1年間、一度もアンゴラに戻ることはできませんでした。コロナ禍での現地渡航が叶わなかった期間、遠隔で行った活動の一部を紹介します。慣れない遠隔での活動であったからこそ、新たな活動の可能性が広がったり、カウンターパートや現地スタッフとの絆が強くなった1年でした。

アンゴラ保健省国家公衆衛生局へのニーズ調査

2020年3月に、アンゴラでは非常事態宣言等が出て、保健サービスが中断する等の影響が出てきていました。そのような中、保健省が本プロジェクトに求める介入について、ニーズや現状の保健サービスの提供状況について調査を行いました。保健省国家公衆衛生局からは、「中断している保健サービスの再開のためのM&S実施」「COVID-19の啓発ポスターの印刷・配布」「マスクや手袋等の個人用防護具(PPE)の配布」等の要望が出されました。プロジェクトで検討し、実現可能な活動を実施していくこととなりました。

定期オンライン会議の開催

遠隔業務となってからは、カウンターパートを交えたWhatsAppグループを作成し、メッセージや写真のやり取りをして、コミュニケーションを取っていました。WhatsAppやメール、現地スタッフを通したカウンターパートとのコミュニケーションに加えて、更なるコミュニケーションの促進のために、定期的にオンライン会議を実施することとしました。アンゴラではインターネット環境が悪いため、遠隔業務を行う前までは、カウンターパートとオンラインでつないで会議ができるとは考えてもいませんでした。しかし、インターネットのモデムを各州に配布してインターネット環境を整える等して、保健省国家公衆衛生局の職員に加えて、プロジェクト対象3州の州保健局職員もオンライン会議に参加することができるようになりました。オンライン会議は、タイムリーにカウンターパートの顔を見て話せ、現状の問題点や今後の活動について検討できるとても有意義な時間となっています。以後、2週間から1ヵ月おきに実施しています。中々会うことが難しい、州職員同士の情報交換の場にもなっています。

【画像】定期オンライン会議の様子

新型コロナウイルス感染症の啓発教材・ポスターの作成/配布

保健施設の利用者の受診控えを解消するために、新型コロナウイルス感染症に対する正しい知識を広め、適切な予防策を取りながら、産前健診や予防接種等への受診行動の継続を促す必要がありました。そのため、母子が留意すべき新型コロナウイルス感染症の一般的な感染予防対策をまとめた教材を作成しました。プロジェクトでは、母親学級やコミュニティ啓発活動で使用できる教材として、「栄養・衛生指導フリップチャート」(注)を作成していました。今回作成した新型コロナウイルス感染症の啓発教材も、既存のフリップチャートと同じ構成にして、母親学級やコミュニティ啓発活動で使用できるよう、イラストを多用しました。このフリップチャート追加ページを印刷し、プロジェクトの対象地域の全ての保健施設に配布しました。また、各保健施設に掲示できるように、ポスターも印刷/配布しました。

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フリップチャートの表面(母親や家族側)

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フリップチャートの裏面(保健スタッフ側)

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新型コロナウイルス感染症予防啓発ポスター

拡大M&Sの実施

新型コロナウイルス感染症感染拡大下でも、保健スタッフが安全に保健サービスを提供できるように、保健スタッフに感染予防対策について指導する必要がありました。そのため、2020年6月下旬から、コロナ禍の母子保健サービスの現状及びCOVID-19対策をモニタリングするためのM&Sを実施しました。本M&Sは、通常時にプロジェクトで実施している母子保健サービスのM&Sに加えて、COVID-19対策にも焦点を当てたため、「拡大M&S」と呼ぶこととしました。新型コロナウイルス感染症の感染予防対策については、アンゴラ政府が出している「災害事態宣言」の保健施設の運営規約に沿ってチェックリストを作成しました。そして、母子健康手帳を導入している全ての保健施設を対象に、国家公衆衛生局、州保健局、市保健局のスタッフ及びプロジェクトの現地スタッフがチームを組んで巡回しました。新型コロナウイルスの感染予防策(マスク着用、アルコール消毒の徹底、移動中の車の換気、検温の実施等)を取り、細心の注意を払い、安全に実施することができました。プロジェクトの対象地域である市全てにおいて、コロナ禍での母子保健サービスの実施について指導を行うことができました。また、同時にルアンダ州では、「電話M&S」も実施しました。保健サービスの提供状況、母子健康手帳の配布状況等を毎月市保健局職員が各施設に電話をかけて確認しました。

【画像】拡大M&S用チェックリスト(A4用紙1枚でシンプルな内容で作成)

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拡大M&Sの様子

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拡大M&Sの様子

ワークショップの開催

Zoomを使用して、「母子健康手帳の配布計画」や「特別なニーズに配慮した母子健康手帳の活用」のテーマでワークショップを開催しました。インターネット接続に問題があり参加できなかった方もいましたが、各回共に国家公衆衛生局、州保健局、市保健局、病院等の職員20名以上が参加できました。エクセルを使った演習や、ポストイット機能を使って視覚的にも分かりやすく工夫して、画面共有するなどし、参加者間で活発な意見交換が行われました。

【画像】「特別なニーズに配慮した母子健康手帳の活用」のワークショップの様子-ポストイット機能を使ってディスカッション-