日本のファブラボ初のBOPビジネススタートアップの経験を聴く-インスタリム徳島泰さんをお招きして

2022年1月19日

このプロジェクトは、ファブラボ設立までの準備期間中、デジタル工作機械で利用されるデータを作成できる人材の育成とともに、大学教員を日本に招聘し、国内に20施設あるファブラボを見学し、人的ネットワークを構築してファブラボの基本理念である「ともに教え合う」「成果を共有する」環境づくりに着手する予定でした。しかし、当初予定されていた日本での研修は新型コロナ感染拡大を受けて困難となり、プロジェクトでは、これに代わるネットワーキングイベントとして、日本のファブラボの代表者に毎回登壇をお願いし、各々のファブラボの概要とミッション、運営体制、主要ユーザーをブータン側ファブラボ関係者に紹介いただく、「オンライン・ミートアップ」を、昨年8月から12月まで、計6回開催してきました。

これまでは、ファブラボの代表者にお話しいただいてきましたが、2022年には、そうしたファブラボを利用して自身の起業につなげたご経験者の声も聴こうということになり、1月18日(火)には、その第1回目のトークイベントとして、東京・神田にあるインスタリム株式会社の代表取締役CEO徳島泰さんを講師にお招きして、「オンライン・ミートアップ2.0『日本のファバー(ものづくり愛好家)に聴こう』」を開催しました。

徳島さんは、2017年7月のブータン初のファブラボの設立に先立ち、米マサチューセッツ工科大学のニール・ガーシェンフェルド教授の要請を受けて、2016年11月にブータンを訪問し、財務持続性を踏まえたビジネスモデルのあり方について提言を行いました。また、トブゲイ首相(当時)との面談やテレビ出演等を通じ、デジタルファブリケーション普及に向けた環境づくりにも貢献され、ブータンのファブラボ関係者の間でもなじみ深い方です。

ブータンでは、新型コロナウィルス感染拡大を受けたロックダウンが国内の多くの地域で発動され、多くの市民が自宅待機、在宅勤務を余儀なくされました。私たちのプロジェクトでも、予定していた研修が中止に追い込まれるなど、対応に追われました。

そんな中、「ミートアップ2.0」は、オンラインイベントの利点を生かし、約80人の参加者を得て、予定通り開催されました。プロジェクトのカウンターパートである王立ブータン大学科学技術カレッジ(CST)からは、教員だけでなく多くの学生も聴講し、また、3Dプリンターの現地製作に取り組もうとしている「スーパー・ファブラボ」の関係者や、下肢障害を持つスタッフが自助具試作に取り組んでいる「ファブラボ・マンダラ」、さらにはブータンの障害者団体や教育省の特殊教育行政関係者など、幅広い視聴者が参加しました。

途上国でのBOPビジネスを指向し、かつ国内のファブラボの施設を利用して技術開発を進めたハードウェア・スタートアップとして、徳島さんは、途上国における義肢装具製作の課題と可能性から、義肢装具製作を目的とした特殊3Dプリンターや、現場で義肢装具士が操作しやすいモデリングプログラムのプロトタイプ製作の経緯などご紹介下さいました。さらには、スタートアップとしての成長プロセスのどの局面でファブラボをどう活用したか、さらに仲間集めや現地でのサーベイ、資金調達での苦労話など、ファブラボのユーザーがものづくりを通じて起業する際の課題についても具体的にお話し下さいました。

その後の質問も活発に行われ、3Dプリントの材料や義肢装具の耐久性、3Dプリンターのファームウェアの設計、試作品試験の方法論、品質管理といった技術的な質問に加え、「もっと話が訊きたい」「連携したい」「低価格義肢装具には大きな可能性を感じる」「障害を持つスタッフのモチベーションアップにつながる」といった、多くの声が主催者に寄せられました。

なお、本事業は、外務省の「2022年日本-南西アジア交流年」記念事業の1つとして認定を受け、開催されました。

【関連リンク】

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東京からご講演下さった徳島泰さん

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インスタリムの会社紹介

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同社の開発した義肢装具モデリング用3Dデザインプログラム

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3Dプリント試作される義肢装具のソケット部分