"コンテキスチュアライズド・イノベーション"環境の構築による経済開発:フィリピン共和国ボホール州における『FabLabを用いたイノベーション環境構築による貧困削減プロジェクト』による事例研究

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市民が自由に使える3Dプリンターやレーザーカッターなどの工作機械とネット環境を備え、世界の英知を学びつつ、地域や個人の課題を解決するものづくりを目指すファブラボ(Fablab)。本稿は、具体的な事例の検証により、FabLabの活用によるイノベーションを通じた経済開発、特に開発途上国の農村部に活用することができるのか、またその効果を左右する要因がどのようなものなのかを明らかにしようとしています。

検証する事例は、著者がフィリピン・ボホール島において、JICA青年海外協力隊員として、企画から立ち上げまで2年4カ月間、プロジェクトリーダーとしてかかわった「FabLabを用いたイノベーション環境構築による貧困削減プロジェクト」です。

本稿では、イノベーションについて、グローバルに通用するイノベーションだけではなく、より狭い地域や、特定の組織や個人の特定の状況を改善するものをも含んだ概念として定義します。「開発協力の大きな使命である貧困改善という視点にたって経済開発を考えれば、開発すべきは交通サービス、医療、福祉、飲食、生活インフラ、流通などのそれぞれの地域に住まう特定の人々に向け業を行う生活に密着した組織と個人、そして、それらの集合から成り地域経済の大半を占めるローカル経済である」とし、ローカル経済を構成する特定の人びとの状況を打破・改善・向上し得る文脈密着型のイノベーションを「コンテキスチュアライズド・イノベーション」として着目します。

ボホールでは、地元の中小零細企業群が、現地に開設されたFablabのデジタルファブリケーション機器を用いて新しいイノベーションを発現させています。こうしたことから著者は、これまで主に大都市で活用されてきたイノベーションによる経済開発について、FabLabを用いて開発途上国の特に農村部の地域開発や貧困削減に活用できる可能性が明らかなったと結論づけます。

本稿は、JICA研究所の委託により、まとめられたものです。

著者
徳島 泰
発行年月
2015年7月
言語
日本語および英語
ページ
21ページ
関連地域
  • #アジア
開発課題
  • #情報通信技術
研究領域
開発協力戦略