ファブラボの大学カリキュラムへの組み入れ支援を開始

2023年3月1日

2月1日から2月28日まで、教育プログラム開発担当の大野勉専門家が2度目の短期渡航し、カウンターパート機関である王立ブータン大学科学技術単科大学(CST)において、教育プログラム開発に関する3つの活動を中心に現地業務を実施しました。

1つめの活動は、プロジェクトの成果1にある、「1-7. ファブラボの電子通信工学科(ECED)カリキュラムへの組み入れ支援」に係る活動です。これは昨年9月に行われたカウンターパートの本邦研修において、参加者が策定したアクションプランにも含まれており、大野専門家は、現地業務を開始後、ただちに、ECED学科長らと協議し、同学科3年生の「電子システム設計」という科目に組み込むことが決まりました。

同科目では、学生が今まで学んできた数々の講義の集大成として、具体的な電子システムの設計と製作をミニプロジェクトとして演習します。昨年までは、ブレッドボードという趣味の電子工作でよく使われる簡易組立用の基板を利用していましたが、今年からはファブラボCSTのCNC工作機械を活用した本格的なプリント基板(PCB)作成に変更し、同基板上への電子部品のはんだ付け等の作業を一貫してファブラボで実施することになりました。

このため、2022年のファブアカデミー卒業生でもある、カマル・チャパガイ同学科長が自ら学科教員に対して、EAGLEという電子回路基板設計ソフトウェアの利用方法の指導を実施しています。今後、この教員への内部研修と同時進行で、学生に対しても同ソフトによる電子システム設計とファブラボでのPCB製作が開始される予定です。

2つめの活動は、「2-1. 他の学部や学生に対するデジタルファブリケーションの研修実施支援」として、週末と祝日を利用し、下記3種類のワークショップを計6回開催しました。これには、合計53名のCST学生とECEDの技術指導員1名が参加しました。

1)AIカメラ搭載の小型コンピュータ「M5Stack UnitV2」を使った簡単なアプリ開発、
2)Wi-Fi機能が搭載された安価なマイクロコントローラ「Raspberry Pico W」を使ったLEDやサーボモータ制御と簡単なIoTの演習、
3)ブラウザから直接Pythonを記述・実行できるサービス「Google Colaboratory」を利用したプログラミング演習

これらを含め、大野専門家が過去に実施してきた全てのワークショップの教材と演習のサンプルプログラムは、ファブラボの共有サーバに保管され、今後のファブラボでの再利用や、別目的での利活用が進められるよう、ECEDの教員に要請を行いました。

3つめの活動は、4年生の卒業制作プロジェクトにおいてもファブラボを活用してもらうため、複数の学生チームにファブラボに来てもらい、大野専門家は卒業制作に係る技術指導を行いました。対象は、主にECEDと制御工学科(ICE)の学生チームでした。

これらのチームは、AIの画像認識とIoTによるデータの収集及び分析をテーマにしている点が共通しており、「オブジェクト認識による学内のゴミの識別」、「顔認証による大学講義室での出欠管理」、「人の顔の検出により横断歩道前で待っている歩行者数による自動制御の交通信号機」の試作に取り組んでいます。学生は4人一組のチームでこれら卒業制作に取り組んでおり、各チームとも6月の最終評価発表会に向けて、デモ用のミニチュアモデルの制作も、3Dプリンタ等のファブラボの機材を活用して並行して進めています。これら卒業制作プロジェクトチームに対しては、今後もオンラインで継続的にサポートを実施していきます。

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AIカメラで信号待ち歩行者の顔検出装置を作る参加者(写真/大野勉)

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AIカメラで信号待ち歩行者の顔検出装置を作る参加者(写真/大野勉)

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AIカメラで顔認識のデモを説明する大野専門家(写真/山田浩司)

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ファブラボを組み込む講義で概要を説明する大野専門家(写真/Duk Bahadur Powdyel)

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ワークショップでマイコンの概要を説明する大野専門家(写真/山田浩司)

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ワークショップでマイコン電子回路を組み立て中の参加者(写真/大野勉)