ナショナル・ゾリグ・デー開催にもファブラボ利用の痕跡

2023年5月12日

ブータン暦3月15日は、「ナショナル・ゾリグ・デー」とされています。「国民ものづくりの日」や「産業の日」といった意味で、今年の西暦では5月5日がゾリグ・デーに相当します。国民の休日ではありませんが、機械を有する事業所や教育機関では、ゾリグ・デーは休日扱いとなり、僧侶を招いて所有機械の1年の無事を祈ってお祓いが行われるほか、ものづくりの文化の推進をめざし、祝賀の式典が開催されます。

プロジェクトサイトのある王立ブータン大学科学技術単科大学(CST)でも、ゾリグ・デーの式典が開催されました。また、開催に先立ち、僧侶が各ラボを巡回してお祓いをして回りましたが、開所後初めてのゾリグ・デーを迎えたファブラボCSTにも立ち寄り、設置された工作機械の1年間の無事な稼働を祈っていただきました。

式典後のメインイベントは、学生から選抜された10チームによる作品展示です。これは、式典同様、学生評議会が主催するもので、3人の審査員が各展示を回り、プレゼンテーションとヒアリングを経て、優秀作品が選ばれることになっていました。

学生評議会の会長から、ファブラボCSTがゾリグ・デーへの協力要請を受けたのは2月のことです。その後、3月中旬に具体的な協議を行い、学生評議会から作品コンテストの企画について説明を受け、参加チームに施設の利用を認めることで合意しました。その後、企画提案書ベースの予備選考を経て、選ばれた10作品の提案チームは、4月15日のファッションショー以降、具体的な試作の作業に入りました。

ファブラボCSTのスタッフは、接着剤や工具、両面テープなどに加え、フィラメントや合板といった原材料の在庫の有無について、参加学生から多くの問い合わせを受けました。デジタル工作機械だけではなく、木工用のアナログ工作機械利用にも強い需要があり、連日のように、夕方以降ファブラボを訪れる学生で引きも切らぬ状況となりました。

中には、かつて当プロジェクトで開催支援した、2022年10月の「メイカソン」で、上位入賞を逃した試作品をさらにブラッシュアップした作品もありました。その他にも、土木工学科の学生が果敢にもセンサーやLEDモニターを利用して物質の重量を計測・表示する計測器を試作したケースや、ゴムボールの色をセンサーにより識別して異なるカゴに振り分けるシステムの試作品など、明らかにファブラボの施設を利用して製作が進められたことがわかる作品も多く見られました。

こうして5月5日のゾリグ・デーの公式イベントは終了しましたが、加えて翌6日には、ファブラボCSTを会場に、JICAの技術協力「政府のデジタル技術及びデータ利活用能力強化プロジェクト」関連事業として、CSTの学生と近隣のアルラ医学アカデミーの学生が参加して、ウェアラブル端末試作に向けたアイデアの共有を行うデザイン思考ワークショップが開催されました。工科大学と看護学校の学生が協働して試作に取り組むCST初の試みでした。

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ゾリグ・デーに向けた参加チームの作業(写真/山田浩司)

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大学内を練り歩く僧侶、乗用車のエンジンもお祓いの対象(写真/CST-Tech Incubation Centre)

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ゾリグ・デー式典でも、メイカソンの試作品が動画紹介された(写真/山田浩司)

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メイカソン試作品をバージョンアップし、コンテストに臨んだチームも(写真/山田浩司)

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土木工学科学生による重量計測器(写真/山田浩司)

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色によりゴムボールを振り分けるシステム(写真/CST-Tech Incubation Centre)

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ポータブル電源の試作品(写真/山田浩司)

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ゾリグ・デー翌日のデジタルヘルス・ワークショップ(写真/山田浩司)

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2月にCST学生のみで行われたアイデアソンのアイデアを、看護学生に説明し、チーム形成を図る(写真/山田浩司)