プロジェクト概要

プロジェクト名

(和)コメ生産向上に向けた技術移転能力強化プロジェクト(エチオライス2)
(英)The Project for Capacity Development to Transfer the Technology for Increasing Rice Production in Ethiopia(ETHIORICE 2 Project)

対象国名

エチオピア連邦民主共和国(エチオピア)

署名日(実施合意)

2021年7月9日

プロジェクトサイト

アムハラ州(おもにバハルダール市、南ゴンダール県フォゲラ郡)およびアディスアベバ市

協力期間

2021年9月9日から2026年9月8日

相手国機関名

(和)農業省、エチオピア農業研究機構、アムハラ州農業局
(英)Ministry of Agriculture(MoA), Ethiopian Institute of Agricultural Research(EIAR), Amhara Regional Bureau of Agriculture(Amhara RBoA)

背景

エチオピアの農業セクターは労働人口の約70%、GDPの約40%以上を占めており、貧困削減の及び経済成長の核となっています。しかし、平均営農面積が1ヘクタールの小規模農家による自給自足的農業が中心です。また、その多くは天水依存型農業で、干ばつ等の自然災害に脆弱な生産状況に置かれているため、安定的な食糧生産の実現に向けて農業セクターへの支援が不可欠となっています。
エチオピアでは、主食(インジェラ)の原料となるテフを主要穀物としていますが、近年テフにコメを混ぜてインジェラを作る食文化が拡がり、コメの国内消費量は急速に伸びています(2009年 100,000トン/2016年 400,000トン/2020年 838,000トン)。
エチオピア農業省は、コメの重要性を考慮して、食糧安全保障への貢献と農家の生計向上が期待されるコメを、2007年(エチオピア暦の2000年)に「ミレニアム穀物」とし、稲作振興を重点課題の一つに位置づけました。2009年には国家稲作研究・振興戦略(NRRDSE、2009-2019)が策定され、コメ生産量の増加に取り組み、コメの総生産面積は約10,000ヘクタール(2006年)から85,300ヘクタール(2020年)に、生産量は71,316トン(2008年)から268,000トン以上(2020年)に増加しました。しかし、コメ需要の急激高まりからパキスタンやインドなどからのコメの輸入が飛躍的に増加(2008年 22,500トン/2020年 570,000トン)したため、2008年には60%であったエチオピアのコメの自給率は、2020年には30%にまで減少しました。こうした状況の中、エチオピア農業省は2020年、戦略を国家稲作振興戦略(NRDS-II、2019-2030)に改定し、2030年のコメ自給達成に向けて更なる稲作振興に取り組んでいます。
コメはエチオピアにおいて比較的新しい作物のため、テフ、小麦、メイズといった伝統的な主要作物に比べて研究者や技術者の育成が遅れています。また、輸入米に対抗できる品質には至っていないため、消費地域も限定されています。
こうした背景のもと、エチオピア農業研究機構(Ethiopian Institute of Agricultural Research:EIAR)は、2013年に過去の無償資金協力による見返り資金を主な財源として、アムハラ州のフォガラ地区にコメの研究と振興の拠点となる国立コメ研究研修センター(National Rice Research and Training Center:NRRTC)を新たに設立しました。我が国は、同センターへの技術協力である「国立イネ研究研修センター強化プロジェクト」(2015年11月~2021年6月)を実施し、1)稲作に関する研究成果の開発・蓄積、2)稲作研究者、普及員、生産農家などの関係者の能力改善、3)稲作に関する適正技術や情報の提供能力の強化を通じて、NRRTCの研究機関としての機能の確立と、フォガラ地区周辺の稲作振興に取り組んできました。しかし、コメ農家の生産性向上や稲作の面的拡大には更なる研究・研修能力の向上と普及強化が求められているため、エチオピア政府は本事業の実施を我が国に要請してきました。

目標

上位目標

アムハラ州においてコメ生産量が増加する。
アムハラ州においてコメ普及エリアが拡大する。

プロジェクト目標

アムハラ州のコメ栽培農家に重点普及技術が移転される。

成果

1.重点普及技術を開発、移転できるNRRTCのコメ研究員が研修講師として育成される。
2.アムハラ州において重点普及技術をコメ農家/農民組織に移転するためのコメ普及システムが確立される。
3.コメ普及研修エリアにおける小規模灌漑施設等の建設・改修および農業機械の利用と適切な維持管理が促進される。
4.NRRTC以外のコメ研究員、アムハラ州以外のコメ普及職員、その他関係者との連携が強化される。

活動

1-1.研修講師となるNRRTCのコメ研究員を選定する。
1-2.選定された研修講師が日本人専門家の支援の下、NRRTCのデモンストレーション圃場およびコメ農家圃場において2年間の実地訓練を受ける。
1-3.研修講師による重点普及技術の選定および開発を支援する。
1-4.研修講師による研修教材の作成およびコメ普及職員に対する研修の実施を支援する。
1-5.重点普及技術の普及のフォローアップする研修講師を支援する。
1-6.研修講師によるデモンストレーション圃場の改修および維持管理を支援する。
1-7.研修ユニットを機能させるため、NRRTCを支援する。

2-1.NRRTCのコメ研究員とアムハラ州のコメ普及職員との間で、コメ普及システムを体系的に機能させるための調整委員会を設置する。
2-2.NRRTCとアムハラ州農業局によるコメ普及システムの取りまとめおよび見直しを支援する。
2-3.コメ普及職員およびコメ農家/農民組織の意向に基づき、コメ普及研修エリアを選定する。
2-4.コメ普及研修エリアを持つコメ普及職員のための研修を実施する。
2-5.コメ普及研修エリアでのコメ普及職員によるベースライン調査および農家のニーズ調査を支援する。
2-6.コメ普及研修エリアでのコメ普及職員によるコメ農家/農民組織に対する研修を支援する。
2-7.コメ普及研修エリアでのコメ普及職員による研修のフォローアップ活動およびエンドライン調査を支援する。

3-1.コメ普及職員およびコメ農家/農民組織のニーズに基づき、小規模灌漑施設の建設・改修および農業機械の利用を提案する。
3-2.コメ農家/農民組織による小規模灌漑施設の維持管理を支援する。
3-3.コメ普及研修エリアにおける持続的な農業機械化ビジネスモデルの開発を支援する。
3-4.コメ普及研修エリアにおいて農業機械のデモンストレーションを実施するとともにその利用を促進する。
3-5.小規模灌漑施設と農業機械の必要な維持管理や点検のリストを作成するとともに、同リストに基づく維持管理や点検を支援する。

4-1.国家コメプラットフォームを開催し、コメ普及研修等の優良実践事例やケーススタディーをコメステークホルダーに共有する。
4-2.コメ増産の可能性がある地域の農業研究所のコメ研究員およびコメ普及職員を訪問/招へいしアドバイスを行う。
4-3.国家コメプラットフォームを通じたコメステークホルダー間の連携強化を支援する。

投入

日本側投入

1.専門家派遣(合計約330M/M)

<長期専門家>

チーフアドバイザー/普及
イネ栽培
営農/農民組織/研修計画
農業機械
業務調整

<短期専門家>

農業機械、コメ流通、灌漑、土木/施工等

2.研修員受け入れ

農業機械化、稲作普及、イネ栽培/育種等

3.機材供与

研修機材、ソーラーポンプ、研究用機材、普及用機材、車両等

相手国側投入

1.カウンターパートの配置

プロジェクトダイレクター(Director of Crop Development MoA, Director of Crop Research(EIAR)
プロジェクトマネージャー(Director of Amhara RBoA, Center Director of NRRTC)
コメ研究員
コメ普及職員、等

2.案件実施のためのサービスや施設、現地経費の提供

設備

土地の提供
日本人専門家およびその他スタッフのためのEIAR・NRRTC・アムハラ州農業局内の執務室およびその他必要な設備の提供
資機材の設置及び保管に必要な部屋・スペースの提供
その他双方で合意した必要資機材の提供

現地経費の提供

カウンターパートのための必要経費
研究費施設等のオペレーションやメンテナンスに必要な水、電力
設備等のオペレーションやメンテナンス、改修に必要なコスト
免税措置