現地でのOJT実施報告

2022年9月8日

1.OJTにかかるこれまでの取り組み:コロナ禍でのOJT

本プロジェクトでは、9か所の地方事務所でのOJT実施が主な活動として計画されていました。2019年度にブカシ、パダン、バンドンの3か所を訪問しOJTを実施しましたが、2020年4月からのコロナウイルスの蔓延により、業務従事者の現地渡航規制、インドネシア国内の移動規制、そしてトレーニング対象土地事務所の受入拒否など、多くのハードルがあり、現地での実地トレーニングが実施できない期間が長く続きました。この期間には、オンラインでのトレーニングを行うなどの工夫で、なんとかプロジェクトの活動を継続してきました(詳細は前回のプロジェクトニュースを参照ください)。

2.現地でのOJT再開までの経緯:Face to Faceの重要性

コロナ禍の期間中に実施したオンラインでのトレーニングでは一定の成果を得られましたが、カウンターパート機関であるATR/BPNとその後のOJT実施について協議する中で、トレーニングで紹介する新しい技術やシステムを参加者が直接目で見て、実際に触ることが非常に重要であるとの指摘を受け、現地でのFace to Faceでのトレーニング実施を強く要望されました。インドネシア国内のコロナウイルス感染状況は、2022年2月が2度目の大きなピークでしたが、その後同年4月にかけて状況は大幅に改善され、2022年5月からようやく現地でのトレーニングが再開できることとなりました。プロジェクトの実施期間が限られていることもあり、ラマダン明け大祭(レバラン)が終わり通常業務が再開された5月中旬から6月末までの期間で、6か所でのOJTを現地で集中的に実施しました。実施期間、場所、参加人数は以下の通りでした。

・5月17日~20日:リアウ諸島州ビンタン島タンジュンピナン(30人)
・5月23日~25日:バンテン州セラン(33人)
・6月7日~10日:中央ジャワ州スマラン(60人)
・6月14日~17日:東カリマンタン州サマリンダ(42人)
・6月21日~24日:南スラウェシ州マカッサル(36人)
・6月27日~30日:ランプン州バンダールランプン(42人)

【画像】OJT実施土地事務所の位置図

3.現地でのOJTの実施:実感できるトレーニング成果

6か所でのOJTは、1か所あたり概ね4日間で実施しました。トレーニングの内容は、土地の計測を行うタスクフォースAと補償のための情報を収集するタスクフォースBのメンバーに向けて、それぞれ技術的知識を学ぶ講義、新技術の紹介、新技術を活用した実習を準備し、さらに意見交換を行いました。トレーニングの内容は以下のとおりでした。

【1日目】
・オープニング・セッション、プロジェクト紹介
・3D測定システムの紹介
・UAVの活用事例紹介、UAVの安全飛行
・モバイルシステムの説明、モバイルシステムのデモ

【2日目】
・UAVデータの活用シミュレーション、QGISの基礎、実習
・モバイルシステムのシミュレーション
・3D計測の概念(SfM)の説明、3Dビューワシステムの紹介とデモ、3Dデータ収集の準備

【3日目】
・3Dデータ収集の現地実習
・モバイルシステムを使用したデータ収集の現地実習
・UAVの飛行デモとQfieldを使用したデータ収集の現地実習

【4日目】
・UAVで取得したデータの処理実習
・3Dデータ処理の説明、3Dビューアでの表示実習
・補償計算シミュレーション講義
・アンケート、受講証明書の配布、クロージング

トレーニング参加者は、概ね新しい技術やシステムに関する理解度が高いと感じられました。UAVと3D技術を除いては、事務所ごとに経験や関心度の違いはありましたが、パソコンやスマートフォンの操作はもちろん、GISソフトウェアの操作にもある程度慣れている参加者が多く、新しいシステムやソフトウェアの説明、実習での操作に集中できていました。また、IT機器の操作が苦手な参加者に対しては、参加者同士で教え合っている場面も多く見られました。この点は、Face to Faceでのトレーニングによって得られた成果であり、今後、本格的に新技術やシステムが導入される際にもスムーズに普及が進む要因になると感じました。
室内での講義では、参加者から多くの質問や意見がありました。特に実務経験の多い参加者からは、土地収用業務を行う際の具体的な課題やトラブルを解決する方法について質問があり、その中のいくつかは今回紹介した新しい技術やシステムで解決できるものもあり、トレーニング実施の意義を感じました。さらに、屋外での実地トレーニングでは、新しい技術に関心のある若手の参加者が積極的質問する姿が印象的でした。
ディスカッションでは、参加者の日常業務に新しいシステムをどのように取り入れるかについての質問やコメントがあり、特に今回のOJTで紹介したシステムについての肯定的な意見が多く発言されました。今回のOJT実施によって、新システムを活用した業務改善への取組みに向けた参加者の意識の向上が図られたと感じました。

4.今後のOJTへの提言:自律的・継続的なトレーニング

本プロジェクトでは、インドネシア全土に34か所あるATR/BPNの地方土地事務所のうちのごく一部の事務所でのみしかOJTを実施することができませんでした。また、各回のOJTの参加者もある程度人数を制限する必要がありました。このように、本プロジェクト内では、ATR/BPN全体にトレーニングを実施し、効果を発現させることはできません。したがって、今後はATR/BPNが、供与した機材やシステム、トレーニング資料などを活用して、自律的かつ継続的にトレーニングを実施する必要があります。そのためには、残された本プロジェクトの期間内に、トレーニングで導入した新技術、新機材の効果を適切に評価して、ATR/BPNにフィードバックすること、トレーニング参加者やATR/BPN側の実施担当者から発信された意見やコメントをとりまとめて、今後のOJTへの提言をまとめることが重要だと考えます。これらの点を考慮して、今後もATR/BPNとの協議、そして報告書の作成を進めていきたいと思います。

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3Dデータ取得実習(リアウ諸島州)

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UAVトレーニング(リアウ諸島州)

【画像】事務所長との記念写真(バンテン州)

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モバイルシステム操作実習(バンテン州)

【画像】事務所長との記念写真(中央ジャワ州)

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UAV飛行前の説明(中央ジャワ州)

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モバイルシステム実習(東カリマンタン州)

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3Dデータ取得実習(東カリマンタン州)

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QGISの実習(南スラウェシ州)

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ディスカッション風景(南スラウェシ州)

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UAVトレーニング(ランプン州)

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屋外トレーニングでの記念撮影(ランプン州)