2018年10月のプロジェクトニュース

2018年11月1日

1.ラオス国保健省による病院の質基準(案)へのQHCプロジェクトの貢献

ラオス国保健省は、病院認証を進めるべく、病院の質基準を作成しています。10月19日には、開発パートナーを加えた政策協議の場であるテクニカルワーキンググループで、保健省による医療の質の取り組みが開発パートナーをはじめ関係者に共有されました。QHCプロジェクトでは、この会議に先駆けてプロジェクト対象4県を含む8県病院の質基準会議(10月17日)を支援しました。テクニカルワーキンググループで共有された保健省の質基準(案)は482項目、その大部分に、南部4県でQHCプロジェクトが開発してきた質基準が採用されていました。また、同テクニカルミーティングでQHCプロジェクトは、これまで混同されてきた質基準と指標という用語を使い分ける必要があることを指摘しました。この指摘から保健省が作成したいのは病院認証のための「病院の質基準」であることが明らかとなりました。また、質基準による評価体制は、病院の質の良し悪しの評価結果を得ることだけが目的なのではなく、病院の継続的質改善の取り組みを促すことが目的であることが確認され、QHCプロジェクトが南部4県で取り組んできたことが政策に反映されていることが窺える会議となりました。

今後、病院の質基準の議論は、ドクチャンパ認証(病院認証制度)に適した形で基準のカテゴリーづくりと項目の絞り込みが、他開発パートナーの意見も踏まえて中央レベルで行われていく予定です。QHCプロジェクトでは、病院のあるべき姿を文書化し、改善課題を明示させる病院の質基準の活動は一段落し、次は「どのように質を評価するか」や「いかに質改善を推進するか」に目を向け、医療の質改善モデルに関わる知見を先取りして保健省に共有する準備を進めているところです。

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質基準会議の様子

【画像】会議参加者の集合写真

2.郡レベルへの医療の質改善モデルの展開

QHCプロジェクトは今年度から郡レベルの病院での医療の質改善モデル(質基準と質評価の実践)に取り組んでいます。現在、プロジェクト対象4県で目標とする11郡病院のうち、7郡病院にて、医療の質改善モデルの質評価部分が県保健局の手で展開されました。今月展開されたのは、アタプー県のサイセタ郡病院(10月9日)とセコン県のダクチュン郡病院(10月10日、11日)、サラワン県のサムアイ郡病院とバピ郡病院(10月30日~11月2日)の4つです。郡病院用に修正された外来受付、トイレ、普通分娩(産前、産後)の4つの質基準が導入されました。県保健局は郡病院に質委員会の設置を求めています。その中で、緊急産科ケア(EmOC)の実地研修を受講した郡病院のスタッフが産科の質基準の担当者に指名される等、QHCプロジェクトの技術強化研修との連携が現場レベルでとれていることも確認できました。

郡病院への医療の質改善モデル展開の様子

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アタプー県のサイセタ郡病院

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セコン県のダクチュン郡病院

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サラワン県のサムアイ郡病院

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サラワン県のバピ郡病院

3.外来(OPD)と入院病棟(IPD)の質基準の導入が4県病院で完了

9月のサラワン県病院に引き続き、10月はセコン県病院、チャンパサック県病院及びアタプー県病院の3県病院で、外来(OPD)と入院病棟(IPD)の質基準の自己評価を実施しました。チャンパサック県病院とアタプー県病院の外来(OPD)は、グレード1を達成しましたが、他の2県はグレード0でした(最高がグレード5)。入院病棟(IPD)は3県病院ともグレード0でした。継続的質改善活動を進めるために、改善課題の優先順位を付けました。今後は、優先改善課題に取り組んでいく予定です。

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副病院長と副看護部長と共に病棟の自己評価を実施

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トライアル評価の後に追加した看護技術チェックリストを使って看護師長が評価

4.緊急産科ケア(EmOC)の実地研修(OJT)を実施中

9月に、QHCプロジェクトが支援してきた緊急産科ケアトレーニングがプロジェクト対象4県で終了しました。現在、チャンパサック県とアタプー県に続いて、サラワン県で実地研修(OJT)が行われています。サラワン県では第一陣の4名の郡病院スタッフが3ヶ月の実地研修(OJT)を10月31日に修了しました。実地研修(OJT)のフィードバックや今後どのような質改善活動を郡病院で展開していくかを討議しました。続けて第二陣となる3名の郡病院スタッフの実地研修(OJT)を11月1日から開始します。

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研修の成果と今後の活動予定を発表する実地研修修了者

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11月より新たに実地研修を開始する3名の郡病院職員(左側より3名)

5.看護管理実践ワークショップ

チャンパサック県病院の看護部が院内活動として看護管理実践ワークショップを開催するのを支援しました。同ワークショップでは、先日実施した第1回看護管理実践ワークショップと同じトピックである役割分担を題材に、第1回目のワークショップでは参加者だった看護師がファシリテーターとなり、QHCプロジェクトが看護アドバイザーと共に作成した教材を元にワークショップを実施しました。

また、洪水被害により延期していたアタプー県でも役割分担を題材とした看護管理実践ワークショップを開催しました。QHCプロジェクトでは、現在第2回看護管理実践ワークショップの準備を進めています。第2回目のトピックは、標準作業手順書(SOP)です。ラオス保健科学大学(UHS)及びマホソット病院看護部と協議しながら教材を作成しています。ワークショップは、11月12日から16日にプロジェクト対象の4県病院で実施する予定です。

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前回参加者だった看護師長によるファシリテート(チャンパサック県病院)

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前回の反省からグループワークの時間を追加し、しっかり協議(チャンパサック県病院)

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アタプー県病院及び郡病院の看護師に向けたチャンパサック短大の先生による講義

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午後は皆でおそろいのプロジェクトポロシャツに着替えて、ワークショップを締めくくる(アタプー県病院)

6.第12回ラオス国家健康研究フォーラムに参加

10月15日から17日、第12回ラオス国家健康研究フォーラム(ラオス熱帯公衆衛生学会主催)が首都ビエンチャンで開催されました。QHCプロジェクトでは、プロジェクトの取り組みの発表を推奨していますが、今回カウンターパートが提出した5つの演題がポスター・プレゼンテーションの部に採用されました。
5つの発表演題は次の通りです。

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演題1)と演題2)の発表の様子

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演題3)の発表の様子

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演題4)の記念撮影

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演題5)の記念撮影