2019年7月のプロジェクトニュース

2019年8月1日

1.第2回病院の質管理・患者安全研修を実施しました

7月16、17日、南部4県の保健局、県病院の質管理担当者を対象に、第2回病院の質管理・患者安全研修を実施しました。今回のテーマは、「5S:病院環境」、「危険予知トレーニング」、「意思決定のための情報収集」の3つです。外部講師に、チャンパサック県病院の看護部看護師と、同看護部とともに危険予知トレーニングに取り組んでいるJICA青年海外協力隊の吉田隊員(チャンパサック県病院派遣)、そしてラオスで先進的に5Sに取り組んでいるビエンチャン県病院の院長と副院長をお招きし、現場の知見を交えながら具体的かつ実践的な研修が行われました。「意志決定のための情報収集」では、プロジェクトの専門家が中心となりワークショップ形式で、「事実と意見の違いはなにか?」という基本的なところから、具体例を用いて情報収集の仕方を学び、また事実に基づいて病院の質基準を評価する方法も話し合いました。

また、プロジェクトでは、病院の継続的質改善活動を強化すべく、病院の質委員会による優先改善機会の選定と質改善活動の企画づくりへの介入として、「継続的質改善の意志決定を支援する情報管理のあり方」をテーマとした短期専門家「情報マネジメント/組織開発」の派遣を、9月中旬から予定しています。

研修の様子

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グループワークの様子(村井チーフ・右と神田専門家・中央)

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グループワークの様子(神保専門家・中央右)

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グループワークの結果発表(神保専門家・前方左)

2.病院の質管理の質基準と評価票のパイロットテストを実施しました

第2回病院の質管理・患者安全研修(7月16日と17日)で作成した「病院の質管理の質基準と評価票(案)」のパイロットテストをプロジェクト対象4県の各県病院にて実施しました。現在の病院の質管理体制は、プロジェクト開始時点である2016年2月(後ろ向き自己評価)の質管理体制と比べて大幅に改善していることが確認できました。

【画像】図:病院の質管理体制の質改善の進捗(2019年7月時点)

3.南部4県の11郡病院への支援

プロジェクトが開発を進めるQHCモデル(病院にて継続的質改善を促すために整備すべき質管理体制)は、南部4県の県病院のみならず、4県内22郡から選抜された11郡の郡病院にも導入される計画になっています。プロジェクトでは、2018年に郡病院の4つのサービスに対して質基準を作成し、県保健局と県病院のスタッフが評価者となって外部アセスメントを実施しました。2019年は外部アセスメントをルーチンとして定着させつつ、郡病院が自己アセスメントを少なくとも年3回定期的の実施し、優先改善機会を選択できるように支援する計画です。8月には各県の保健局と県病院のスタッフでチームを編成し、各郡病院で昨年導入したQHCモデルの活動のフォローアップを行うべく準備しています。また、こうした導入とフォローアップの過程を言語化して、郡病院へのQHCモデルの展開方法を標準化していきます。

4.ラオス保健省・ADB共催の医療の質ワークショップに参加しました

ラオスでは、病院の質を可視化するためにどのような質の目標を設定すべきかが活発に議論されています。その一方で、病院の質をどのように改善するかは十分議論されているとは言えません。本プロジェクトは、病院の質を知った病院が病院の質を改善する方法をQHCモデルとして開発してきました。7月18日に開催された保健省治療リハビリテーション局(DHR)とアジア開発銀行(ADB)による医療の質コンサルタティブワークショップ(7月18日)と事前の主要開発パートナーによる打ち合わせでは、QHCモデルが病院の「質改善のプロセス」を支援しているという位置づけを確認できました。また、ラオスの医療の質の目標をとりまとめる役割を担う保健省治療リハビリテーション局(DHR)がQHCモデルを「ラオスの取り組み」として、ラオス国内の関係者に広く紹介する機会ともなり、QHCモデルの位置づけがより明確に示されたワークショップでした。

5.継続的質改善活動(KAIZEN、CQI)

各県病院の質委員会が自己アセスメントや他者アセスメントから明らかとなった改善機会に対して、病院が優先的に取り組むべき改善機会を選定し、継続的質改善活動を実施するサイクルは、QHCモデルの根幹となる活動です。継続的質改善活動の企画・実施能力を向上するために、プロジェクトでは、各県病院の質委員会が企画する質改善活動への支援をしています。質改善活動の中で実施される職員研修と実践経験共有機会を対象に、質委員会が企画(企画書と予算作成)し、計画に沿って実施し、活動の結果を評価し、日々のルーチン業務に反映させつつ報告書を書き上げる一連の流れにプロジェクトがコメントしながら、質委員会が質改善活動を企画・実施する際の能力強化を図っています。

南部4県病院が企画している介入は次の通りです:
・チャンパサック県病院:「危険予知トレーニング(KYT)と5S(整理、整頓、清掃、清潔、しつけ)の職員研修」、「質改善の取り組みを先進的に実施しているラオス国内の病院視察」
・サラワン県病院:「カンガルーマザーケア導入のための研修」、「院内感染の予防とコントロールの院内研修」
・セコン県病院:「医師を対象としたSOP作成の院内研修」、「ラオスの政策である病院の5つの強みと患者満足の取り組みについて、近隣県病院との経験共有」
・アタプー県病院:「新生児蘇生の院内研修」、「5S(整理、整頓、清掃、清潔、しつけ)に先進的に取り組んでいる病院の視察」

6.胎児心拍陣痛図のテキストブックを作成しました

プロジェクトでは母子保健専門家とチャンパサック県病院の産婦人科医師が中心となって、2018年度に各県で実施した胎児心拍陣痛図の研修内容を取りまとめたテキストブックの執筆と編集を進めてきました。このたび、ラオス語版のテキストブックの印刷が完了しました。この本は、初めてラオス語で作成された胎児心拍陣痛図に関するテキストブックです。ラオスにはこれまでラオス語で書かれた胎児心拍陣痛図のテキストブックがありませんでした。このテキストブックは、南部4県の県病院と対象郡病院、医師や助産師を養成するラオス健康保健科学大学の教師、産婦人科医学会と助産師学会のメンバーにも配布され、今後は大学のカリキュラムでも採用される予定です。

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ラオス健康保健科学大学の助産師教師への配布の様子