2020年2月のプロジェクトニュース

2020年3月1日

1.第3回ラオス保健医療サービスの質改善フォーラムの開催

第3回ラオス保健医療サービスの質改善フォーラムが2020年2月11日から13日の3日間の日程でチャンパサック県にて開催されました。ラオス全18県のうち16県、プロジェクトサイトである南部4県からは22郡の医療従事者も参加し、開発パートナーからは青年海外協力隊、ルクセンブルク開発協力機構、SFE(フランスのNGO)のほか、企業4社の関係者を含む計196名の人々がラオス全土から集まるフォーラムとなりました。1日目は、チャンパサック県病院の病院見学。2日目と3日目には、プロジェクト対象の南部4県から8演題、他県や中央病院から14演題の計22演題(うち6演題はポスター展示)の発表、質疑応答が行われ、保健医療サービスの質の向上をテーマにしたパネル・ディスカッションでも活発な意見交換と議論が交わされました。

今回の第3回ラオ・フォーラムは、昨年2019年2月に北部の世界遺産都市ルアンプラバン県で開催された第2回ラオス保健医療サービスの質改善フォーラムからさらに規模を拡大し郡レベルをも包含した、現場の知見に基づいた保健サービスの質改善に関わる実務者自らが情報共有する場として全国の医療関係者に認知されるものになりました。今後、その成果を開発パートナー向けの出版物としてとりまとめるとともに、現場の知見を政策立案に反映させる努力を継続しつつ、次回、プロジェクト終了後の継続性にも配慮したフォーラム開催に向けた準備に取り組む予定です。

なお、新型コロナウィルスの感染拡大が危惧される中、開催に際してはWHOラオス事務所の専門家の助言を得て受付時に体温測定をするなどの感染予防策を採りました。また、全国の医療関係者が集まるこの機会を活用して参加全77組織((ビエンチャン特別市、14県と24郡からラオス政府、地方自治体全70組織と開発パートナー3組織、4企業)へWHOの感染症予防対策リーフレット(簡易印刷版)を配布しました。

フォーラムの様子

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2.県病院による独自質基準の作成が進んでいます

プロジェクトが実施するQHCモデルでは、質基準をつくる改善計画づくり、質基準による自己評価、評価結果に基づく改善テーマの優先順位付けと質改善活動の実施が対象病院に定着し、機能することを目指しています。プロジェクトでは対象病院が改善計画づくりに慣れるためにも、独自に質基準を作成することを推奨しています。

アタプー県病院は1月にプロジェクト専門家が支援して、新生児蘇生の質基準と評価票をドラフトしました。2月19日にはドラフトを用いたパイロット評価を実施しました。評価結果はグレード(グレード0~5までの6段階評価)0でしたが、これから改善するという意欲がみられました。評価後に質基準と評価票を微修正して実用化し、継続的な質改善に活用していきます。

サラワン県病院はプロジェクト支援による研修を行った後に、カンガルーマザーケア(KMC)の質改善の作成に取り組みました。KMCの質基準と評価票のドラフトを独自に作成し、2月18日にパイロット評価を実施しました。パイロット評価の結果はグレード0でした。サラワン県病院もアタプー同様、評価後に質基準と評価票を微修正して実用化し、継続的な質改善に活用していきます。

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アタプー県病院でのパイロット評価の様子

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サラワン県病院での質基準作成作業の様子

3.4県病院で行われている質改善活動

チャンパサック県病院:
・診療科17科はKYT(危険予知トレーニング)ワークシートの記載を完了していて、科によっては既に具体的な対策に取り組んでいます。また、病院全体で質改善、感染管理、患者安全(5S-KYT)を統括する質管理体制案を検討しはじめています。
・2019年12月に実施した第8回自己評価の結果から、現在、正常分娩の「パルトグラフの記載を漏れなく行う」という改善活動に、医師と助産師が協同して取り組んでいます。
・2月25から27日にかけて感染制御個人防護具(PPE)の着脱研修を実施しました。一次救命処置(BLS)研修も継続しています。

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感染制御個人防護具(PPE)の着脱研修風景

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一次救命処置(BLS)研修風景

サラワン県病院:
・患者満足度調査をより効果的に実施し分析方法を確立するために、質問票の見直しと過去の調査結果の再分析を行っています。また、第3回ラオ・フォーラムの影響で危険予知トレーニング(KYT)の導入と針刺し事故を防止するために、針の処理方法を標準化する活動を検討中です。
・カンガルーマザーケア(KMC)の導入では、新生児集中治療室(NICU)内にKMC用のベッドを設置したほか。NICU内の患者モニタリング強化のために、専任看護師の任命と看護師用のデスクを設置しました。
・「病院スタッフの態度の改善」の達成に向けて、看護委員会メンバーと外来(OPD)医師の協力によるカウンセリングスキル研修を2月25日に実施しました。

セコン県病院:
・第8回自己評価で達成できなかった「外来患者に診察の手順を説明する」の達成に向け、標準作業手順書(SOP)を作成することになりました。
・産婦人科と母子保健科が協働して1月末にハイリスク妊婦健診外来を設置しました。今後はハイリスク妊婦のスクリーニング、診断、治療の質を向上するために、定期的な院内トレーニングの実施、妊婦健診のチェックリスト作成などに取り組む予定です
・看護委員会がSFE(フランスNGO)の支援を受けて、看護委員会と看護業務の院内規程(案)を作成しました。

アタプー県病院:
・2月に実施した新生児蘇生ケアの質基準のパイロット評価の結果を受けて、質改善活動に取り組んでいます。

4.インフォーマル開発パートナー会議に参加しました

月例で開催されているWHO(世界保健機構)主催のインフォーマル開発パートナー会議にチーフ・アドバイザーが出席し、QHCプロジェクトの進捗を報告しました。WHOの中央のQHC体制の発表後に発言を求められ、QHCプロジェクトはラオス政府が取り組んでいる医療サービスの質改善にかかる活動計画のうち、(1)病院の質改善委員会と(2)病院が継続的質改善活動をできるようにする、の2点について南部4県で実証済みの知見を一般化することで貢献できること、そのためのQHCモデルのガイドラインを作成中であり、4月にはそのドラフトを共有できることを伝えました。また、この機会にQHCモデルのパンフレットを参加団体へ配布しました。