【教師海外研修】実践授業レポート from神奈川県立神奈川総合産業高等学校(菊川正太教諭)

2020年2月18日

実践授業とは…

実践授業とは、JICA教師海外研修に参加した先生方に、研修で得た経験を活用した授業プログラムを作っていただき、学校現場で実践いただくものです。

菊川先生のレポート

11月22日に本校の学校設定科目である「国際理解入門」にて実践授業を行いました。生徒は計30名です。本校の授業は100分間であり、今回は教師海外研修に参加したメンバーで作成したワークショップ2つをベースに展開しました。

【授業を行うにあたって】
本校は神奈川県内唯一の総合産業学科の単位制専門高等学校であり、神奈川県内全域から入学者が集まっています。また外国にルーツをもつ生徒や留学生も複数名在籍しています。生徒たちは、自分の興味のあることに関しては意欲的ではあるものの、新しいことへの興味関心が弱く、また、一歩踏み出してみること、挑戦してみることに消極的な生徒が多いと感じています。人間関係作りにおいても消極的で自分自身を出すことにためらいを感じている生徒もいます。今回参加した教師海外研修の経験を伝えることや作成したワークショップを行うことで、国際理解・多文化共生は身近なところから始まること、身近な仲間にもそれぞれの背景・文化・価値観があり共有することで互いの理解が始まることを感じてもらいたいと考え本授業にてワークショップを実施することにしました。

【本時の授業について】
まず始めに、私が教師海外研修に参加したきっかけや国連の定めたSDGsについて触れました。その上で、ウォーミングアップの意味合いを含めて、ワークショップ①「Myストーリー in Brazil」を実施しました。

 

●ワークショップ①「Myストーリー in Brazil」
人には見た目ではわからない背景があることを再認識するためのワークショップです。
3~4人を一つのグループとし、4枚の写真と4枚の情報カードをマッチングします。さらに追加の情報カードを順次開けていき、最終的な写真と情報カードのマッチングを行います。全てのマッチングを終えた後、解答を配布します。ワークショップを実施して感じたこととして次のような感想が出てきました。

[生徒の感想の抜粋]
・見た目で判断したら自分が思っていることと違うことがあるからそれで相手を傷つけるかもしれない。
・人を見た目だけで判断するのって難しいなと思いました。
・単純な情報だけではその人を判断できない=知れないのかなと感じました。

続いて、海外にルーツを持ち文化や宗教など背景の異なる人々と良好な関係を築くためにどんなことが必要なのかを考えさせた後に、国際理解の第一歩となる身近な多文化を感じるためのワークショップ②「自分オープン」を実施しました。

 

●ワークショップ②「自分オープン」
このワークショップは、多文化理解の第一歩として、自分自身(の文化・背景)について考えてみること、それを他者にオープンにしてみることと共に他者(の文化・背景)を知り興味の枠を広げることを目的としています。
切込みの入った用紙の中心に、似顔絵とニックネームを描き、上下左右6つの扉にテーマに沿って自分のことを書き込みます。6つの扉のテーマは次のように設定しました。
①好きな○○○(○は自由に設定)、②小さい頃の夢、③今の私が大切にしていること、④苦手な○○○(○は自由に設定)、⑤自分の性格、⑥人生のこだわり
完成したところでグループメンバーに、一枚ずつ扉を開きながら発表していきます。聞いているメンバーは一つ一つにシールを貼ることでリアクションしていきます。
シールは4種類用意しました。
①それ、いいね!、②わかる~!共感!、③なるほど!納得、④おぉぉ!すごい!
発表後に作成中・自分の発表・他者の発表においてどんなことを感じたか、またワークを通してどんなことを感じたかを個々で整理しました。

 

[生徒の感想の抜粋]
A:作成中
・自分のことを文字にすると、なんかいいなと思いました。
・共感してくれるか不安だった。
・変なふうにみられないか不安だった。
B:自分の発表中
・何か反応があると少し心が楽になるし、嬉しい気持ちにもなる。また話す気にもなる。
・大丈夫かなと不安でしたが、班の人が反応をしてくれたので良かったです。
・シールが貼られるとプラスの気持ちになる気がした。自分をさらすとスッキリした。
C:他者の発表中
・一人ひとり違うこだわりとかもっているから自分と他の人との違いを比較することも大事かなと思った。
・班の人が同じような質問に答えているのに全然違う答えで面白かったです。また、素敵な発表でよかったなと思いました。
・他人をしると自然と気持ちが軽くなった。
・いろいろな人の自己紹介は楽しくて刺激的だった。

ワークショップ②の感想
・発表しているときに反応をいろいろしてくれて発表しやすかった。また、発表し終わった後にこれは具体的にはとか更に聞かれてよかった。コミュニケーションをとるにはこういうこととかが必要だなと思った。
・人それぞれ色々な考えがあって面白かったし、人は見かけによらないなぁって改めて感じた。

最後に、100分間の振り返りと今回の授業における個々の変容を確認して授業を終了しました。

【実践授業を終えて】
100分間授業のためワークショップ2つをまとめて実施しました。それぞれのワークはおおよそ50分ずつで実施できたため、他校でも2コマ続きで実施できると考えています。
WS①ではブラジルで出会った人たちの背景や文化を題材にワークを組み上げましたが、これから出会う多くの方々のカードを作ることでより発展した教材に進化させられると感じています。また、WS②では、多文化・異文化に触れる楽しさや伝えることの大切さを感じてもらえたと思います。
本授業における変容を確認したところ、「人それぞれにいろんな背景があるから、それを受け止められるように生活したい。」「他人を知ることが第一優先になった。外国の人とでも活かしていこうと思った。」「他人の好きなことにも興味を持てば知識の幅が広がると感じた。」という前向きな感想を多数見ることができました。ワークショップの実施が、生徒たちが多文化共生への意識をもち楽しみながら学習してくれるきっかけになったと手ごたえを感じました。