総合診療研修で使用する救急マニュアルが完成しました

2020年11月18日

総合診療研修で研修医が診療中に参考にするために使うことができる、救急マニュアルが完成しました。

このマニュアルは、2019年7月から作成を開始したものです。国立国際医療研究センターの寺山医師がモンゴルに来て、このマニュアル開発に支援をしてくれたものです。(プロジェクトニュース2019年7月24日、8月15日参照)

その後、チンギルテイ地区病院の医師たち、また国立第一病院で救急医療に携わる医師たちが作成に関わり、長い時間がかかりましたがようやく完成しました。そしてこのマニュアルは、モンゴル保健省の救急医療専門委員会で内容を吟味され、正式に研修医教育で使用するマニュアルとして承認を得ることができました。

今回、このマニュアルの作成に時間がかかった理由のひとつは、これまでモンゴル国内に同様のマニュアルがなかったことにあります。プロジェクトが過去に関与して作成した、小児科や産婦人科のマニュアルは、国内に診療ガイドラインなど参考にできる資料がありました。しかし救急医療は、モンゴルではまだ比較的新しい分野でもあることから、研修医が診療の際に参考にできるガイドラインやマニュアルが限られていたのです。

そのため寺山先生の活動が終了したあと、マニュアル作成に関わった医師たちは、自分の仕事の合間を縫って集まっては討議し、また自分の休みの時間を使って執筆に取り組みましたが、何度も修正をすることになりました。その作業は大変で、何度も挫折しそうになりましたが、総合診療研修で学ぶ研修医たちに役立つものを作りたい、という一心で作り上げることができました。

完成を前に、モンゴル国内では新型コロナウイルスの市中感染が発生し、ウランバートル市内に外出規制が敷かれました。とても制約の多い作業環境になってしまいましたが、プロジェクトのメンバーも含め、諦めることなくオンラインで作業を進め、ようやく完成させることができました。

このマニュアルは、研修医たちが使用することで標準的な診療をすべての研修医ができるようになることが期待されます。また研修医たちが研修終了後、地域で診療する際にも参考にできるものです。プロジェクトでは、あと内科の診療マニュアルの作成を進めています。残された活動期間はわずかになってしまいましたし、外出が制限されているために活動の制約もありますが、モンゴルの未来の地域医療を支えるために必要な教材です。最後まであきらめずに活動を続けたいと思います。

モンゴル国一次及び二次レベル医療従事者のための卒後研修強化プロジェクト
チーフアドバイザー 井上信明

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総合診療研修で利用する、救急マニュアル(表紙)