パイロット事業対象郡の選定

2022年8月4日

2022年5月に実施した第1回合同調整委員会(JCC)において、プロジェクトのパイロット事業を実施する対象県として、ジンマ県と南西シェワ県を選定することが承認されました(注1)。これを踏まえ、プロジェクト専門家は、選定された2県の中でさらに具体的な事業を実施するパイロット事業対象郡を選定するための協議をオロミア州側と実施しています。

まず、オロミア州政府のプロジェクト担当者とともに、対象郡選定のための要件を「気候変動適応策計画ゾーン(APZ)」(注2)の特性にあわせて検討・設定し、これを2県の農林業分野担当の事務所に提示することで、県の担当者らの協議に基づき選定してもらいました。

(注2)APZの概念とプロジェクトの活動における位置づけは、APZ選定に関する記事内で詳細にまとめています。

複数の郡選定案が両県の当局から提示されたことを踏まえ、7月上旬~中旬にかけて、プロジェクト専門家はオロミア州政府の担当者らとともに県当局が選定した合計6郡の現地踏査を行いました。現地の様子を視察するとともに、農林業の特徴や住民の生計様式の概況把握、異常気象の状況や、これが農林業等に及ぼすと考えられる影響の内容、これらに対応する既存の事業の概要や郡当局の体制などといった事項について聴取を重ね、両県でそれぞれ1郡をパイロット事業対象郡として選定しました。選定に際しては、オロミア州政府から任命されたプロジェクト関係者が議論の中心となり、プロジェクト専門家によるサポート・補足を得ながら県知事や県農業事務所、県環境保護事務所などに視察・協議結果を報告し、県当局側から了承を得ました。

県が選定したいずれの郡においても、以前と比べて雨期の開始・終了時期がずれる傾向や降水量の変動が体感されるようになっており、農作物の作付計画や生産量といった面で悪影響を与えているため、これに適応していくことが地域住民の生計様式面で重要であることが関係者の間で広く認識されています。加えて、オロミア州の主力輸出農産物であるコーヒーの生産量低下、土壌の酸性化、以前は見られなかった家畜の寄生虫の発生、頻発するようになった豪雨や洪水による表土や農地の流失といった問題も懸念されており、場所によっては、広い範囲で現在も地滑りが進行している様子が観察されました。

本プロジェクトでは、気候変動対応型の農業・適応技術を導入し普及する体制をシステム化していくことを活動の一つにしており、気候変動への適応を通じ、農林業の持続的な発展と強靭性(レジリエンス)の強化を同時に目指すアプローチを取ります。今後、オロミア州政府や県・郡の関係者らの間でさらに問題分析を進め、プロジェクトのアプローチの範囲においてどのような対応策がとり得るのか検討し、具体的な行動計画を策定していくための議論に着手する予定です。

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写真や図表を活用して郡の概要や農林業分野の現状を説明する郡の責任者

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気候変動と農林業の問題について熱心に説明する郡の責任者

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同行したオロミア州担当者らとともに、気候変動と農林業分野の問題を郡当局と協議する様子

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代替作物として郡農業事務所で生産されているアボカドの苗木

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地すべりが牧草地や家屋敷地の近いところまで侵食している様子

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現地踏査の結果を踏まえて、県当局の責任者と協議するオロミア州政府の担当者とプロジェクト専門家