総合診療研修で習得すべき手技を学ぶ動画教材が作成されました

2019年6月24日

プロジェクトのモデルサイトである、オルホン県地域診断治療センター(RDTC)では、国立国際医療研究センターに所属する日本人専門家と協力し、これまで小児科や産婦人科のローテーションで活用できるマニュアルを作成してきました(プロジェクトニュース2019年1月19日、3月8日参照)。今回は、モンゴルでは初めてとなる手技の習得を目的とした動画教材の作成に取り組みました。

全ての研修医が、標準的な手技を実施できるようになるためには、手技の各ステップを繰り返し学ぶことができる動画教材が有効です。この教材開発のため、世界の僻地で医療人材育成に取り組むゲネプロに所属し研修している室原誉伶医師が協力してくれました。室原医師は、昨年9月に続き2回目のオルホン訪問(プロジェクトニュース2018年9月13日参照)ですが、今回は4月から6月まで、3ヶ月間オルホン県に滞在して活動しました。

総合診療研修では、14種類の手技の習得を研修の目標に挙げていますが、今回は11種類の手技を対象にしました。作成にあたり、これらの手技の内容を定めたモンゴル国内の基準(Mongolian National Standard:MNS)を主に参照しました。まずオルホン県RDTCの指導医たちや看護師たちが、プロジェクトチームを立ち上げました。メンバーはMNSを見直し、動画撮影を意識したシナリオを作成しました(図1)。さらにこのシナリオは、保健省の救急委員会や産婦人科委員会で間違いがないことを確認してもらい、撮影に備えた練習を繰り返しました(図2)。撮影は、オルホン県公衆衛生局のカメラマンの協力を得て行い(図3)、動画の編集も行なってもらいました。

日常業務の合間を縫っての活動は、決して簡単ではありませんでした。また活動を支援した室原医師にも初めての経験でしたので、途中なかなかうまく進まないことに悩むこともありました。しかし、モンゴルの研修医のために役立つ教材を作成したい、という目標を共有し、対話を重ねるうちに、オルホン県RDTCの指導医や看護師たちが自主的に活動するようになり、無事全ての手技の撮影を終えることができました。

6月24日、活動終了の報告を、オルホン県RDTCのBatskuh院長にしました。その際、「お金に変えることができない、貴重な技術支援をしてもらいました。私たちの指導医が成長したことが一番の収穫です。心から感謝します。」と感動的なコメントをいただきました。その言葉を聞いて、これまでの苦労が全て報われる思いがしました。

今後は、動画の編集を終了させ、完成された動画教材を保健省内の専門委員会で審査してもらい、正式に教材として承認してもらうことを目指します。最終的にはモンゴルのどこにいても研修医たちが参照できるよう、ウェブ上で公開する予定です(図4)。プロジェクトとして、最後まで引き続き支援を続けたいと思います。

モンゴル国一次及び二次レベル医療従事者のための卒後研修強化プロジェクト
チーフアドバイザー 井上信明

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図1. プロジェクトチームによる打ち合わせ風景

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図2. シナリオに基づく練習の風景

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図3. 手技(皮下注射)の動画教材撮影風景

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図4. 動画にはQRコードをつけ、スマートフォンから閲覧できるように工夫した