伊藤 明子(いとう あきこ)さん シニア海外ボランティア

本物の”児童中心の教育”を
世界の現場へと届ける

2014.07

学生時代の経験がボランティアを目指すきっかけ。
歳を重ねたシニア世代で応募を決意。

学生時代、ネパール山麓をトレッキングしている最中にA型肝炎で倒れ、ネパール人に助けられたことがあります。その経験から、いずれ開発途上国の人のために働くことができたらと思っていました。
就職や結婚、子育て、介護などのライフイベントが一段落したころ、JICAボランティアにはシニア世代の女性も活躍できるフィールドが用意されていることを知りました。娘の就職をきっかけに応募を決意し、中学校での教師経験を生かせる活動を探していたところ、グローバルフェスタのJICA相談テントで「教育行政」という職種を知り、挑戦してみることに。
 仕事を退職してすぐの派遣でしたので、出発までの毎日は非常に忙しく、事前に何かを心配する暇はなかったというのが正直なところです。家族はみんな、私を快く送り出してくれました。

教育研究会で引き算の説明風景

現場の先生たちのレベルアップが課題。
日本の計算ブロックを使って授業のやり方を伝える。

カンボジアでの私の任務は、日本の教育委員会にあたる教育局のサポート。シェムリアップ州内にある小学校を訪問し、月1回開くことになっている教員研修会を必ず実施するように指導して回りました。というのも、カンボジアには世界各国からさまざまな支援が入っていましたが、現場の先生たちのレベルアップまでは図られておらず、教育内容の充実が必要とされていたからです。
 現場の先生たちの考え方は「学問は理論を覚えること」であり、実学は後回しというもの。例えば計算であれば、引き算や足し算がどんなものであるかという理論は教えるものの、計算練習の問題数はとても少ないのです。そのため、生徒たちは教科書に載っている理論は丸暗記していますが、応用する力は備わっていませんでした。
 私が実践したことは、日本の小学校で使われている“計算ブロック”を使った授業のやり方を伝えること。正しいブロックの数え方や計算方法を分かりやすく教えれば、子どもたちの学習内容が改善されるということを先生たちに伝えました。
 現地の職員との関係では、上司と一般職員の間に入ってそれぞれの意見の橋渡し役となることを心掛けました。というのも、彼らの間には“大名と家来”のような上下関係があります。上司の都合が変われば、一般の職員はたとえ先約があっても、上司に従うことが求められます。この関係には本当に悩まされましたが、誰とでも分け隔てなく接する私の姿から、何かを感じてもらえればと思っています。

JICAボランティアで得たもの

帰国後も続くカンボジアへの教育支援。
計算能力の向上に寄与する。

シニア海外ボランティアに参加したことで、自分にも何かできることがあるということに気付くことができました。カンボジアでは、JICAに限らず多くの国際NGOの方々が継続的な活動を行っています。中には内戦時代のタイ難民キャンプ支援から継続されている方も。そうした経験豊富な先輩方との出会いも、私にとって大きな宝となっています。
 帰国後は、活動で行ってきた「教材を使う授業」の実施方法を、日本からカンボジアに伝える活動を続けています。例えば、計算ブロックを同僚に送り、一緒に使用法を考えながら、暗記物ではない算数の普及に取り組んでいます。
 わたしの任期中によく現地に来てくれていた夫は、現地にロッククライミングの練習壁を作ってクライミングのNPOを設立しました。そして実は今、娘も青年海外協力隊員としてアフリカに行っています。私のシニア海外ボランティアへの参加が、多少なりとも家族に影響を与えたのかもしれませんね。

これからJICAボランティアを目指すみなさんへのメッセージ

カンボジアで出会ったさまざまな人たち。
その体験をもとに新たに人生を歩む。

シニア海外ボランティアに参加したからこそ得られた、海外で活躍する素晴らしい先輩たちとの出会い。
私自身、それらの出会いがあったからこそ、今の人生を歩めているように思います。
世界には、シニアの皆さんのこれまでの経験を生かせる環境や、すてきな出会いがあります。
まずご自身の健康を第一に、大きい病気やケガをせずに働けるよう
自分の力をしっかり蓄えてから、参加していただきたいと思います。

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シニア グローバルキャリア # 教師 # 経験を生かす