「先生」として

2019年6月5日

2017年度1次隊 小学校教育 梅沢智代

私は現職教員特別参加制度で派遣された、埼玉県の小学校教員です。日本の学校現場しか知らない私がアフリカの地で活動するのだから、現地の先生方のニーズをしっかりと把握して、力になりたい。 赴任前そして赴任後も、おこがましいことに、「座学中心のエステティック科(図工、体育、音楽)を変えるのだ!」とずっと思っていました。
しかしいざ行ってみると、教育の質を上げたい、より多くの指導法を知りたい。そんなニーズは無いに等しいことに、戸惑いました。
それはなぜなのか。答えは簡単、みんな日々の生活の方が大切だからです。女性だったら家事に育児、男性だったら農作業を兼業している人も多くいました。そして教師という仕事も、この国では簡単に就ける職業の一つで、割と低賃金。「教育者になりたい!」「子どもが好きだ!」という熱意をもって教師をしている人は少ないのです。
そうした同僚たちに、それでも教師として働いている以上、とにかく私がここにいるからこそできる体験をしてもらい、教師としてのやりがいを感じて欲しい。そう思うようになりました。

その時に考えたことは、まず同僚たちの「やる気」を呼び起こすにはどうしたらよいのか、ということでした。人間はきっと好きなこと、興味のあることになら自然と取り組みます。また、明確な目標ややる理由がはっきりしている場合にも、やる気が出ます。
しかし、カウンターパートたちは授業に対して興味は高くない。では、やる理由をこちらが作ってみてはどうか、と考えました。

そこでまず設定したのが、他校の先生方にカウンターパートたちが指導者となって、セミナーを行うということでした。今まで私が紹介してきた教材作りのアイディアを、あなたたちから町中の学校に広めよう!と。始めは良く分かっていないようでしたが、とにかく流れに巻き込んでしまおうと考えました。
結果彼らは十分に役目を果たし、普段味わえない大人への指導者という立場に立ち(半ば無理やりですが)、教育局の人から表彰をしてもらいました。終了後「やって良かった。」と感想をもらいました。
そしてまた、次の「やる理由」付けをしました。「またやりたい?」と質問をし、次は実際の授業を他校の先生たちに見せて協議をする、日本式の「研究授業」をやることを提案しました。彼らも快諾してくれ、同時に私の最後の活動も決まりました。
この時は、今までになく自分たちから進んで取り組んでくれました。教材作りや授業内容の相談に、彼らの方から来てくれるようになりました。ちょっとしたことですが、これはとても嬉しいことです。授業方法の改善を少しずつ自分事として捉えるようになってくれたからです。この研究授業に向けて準備をしている2週間は、とにかく楽しかったです。不安なこともありましたが、何だか今までで一番彼らと一緒に授業を作っている感覚を味わえました。
活動の中で、何度もこれはただの自己満足なのでは、彼らが本当に望んでいることではないのでは、持続可能性はあるのか、と悩みました。しかしそこで何も行動しなければ、彼らに何か感じてもらうことはできません。同じ教師として、大切にしてほしいことは伝えたい、そう思い突き進んだ1年9カ月でした。
いきなりやって来た外国人の私の話を何度も言い合いになりながらも理解しようとしてくれた同僚たちに本当に感謝するとともに、彼らの教員人生が幸せであることを祈っています。

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