ボランティアレポート「依存からの脱却を目指して、改定版ヘルスパスポートの主体的な運用を」

2019年4月26日

名前:中平 有
隊次:2017年度1次隊
職種:栄養士
配属先:ムジンバ県北部保健事務所 カウェチェヘルスセンター
出身地:高知県高知市

「ねえ、あなたたち日本のボランティアが改定に貢献した新しいヘルスパスポートはいつもらえるの?」

もう何度目になるでしょうか。「今マラウイの保健省が発行に向けて印刷を進めているので、それまでに新しいヘルスパスポートの適切な使い方を覚えておいてくださいね」と、我々は配属先内外を問わず病院スタッフや母親に対して幾度となく説明を重ねてきました。
ヘルスパスポートというのは、いわゆる、日本の母子健康手帳にあたる代物です。

始まりは2010年にまで遡ります。我々が活動の拠点とするムジンバ県へ短期ボランティア2名が配属されて以来、公衆衛生隊員が主体となりグループとしての活動を始め、その後数々のボランティアが本県の医療の底上げに取り組んできました。
その中で、隊員が共通して頭を抱える課題、それが「ヘルスパスポートの適切な利用が出来ていない」ということでした。
マラウイでは、この手帳は残念ながら日本の様に大切には扱われていないのです。予防接種記録や成長の記録が適切に記入されていないことがしばしば、折角記録を重ねてきた手帳を紛失する人も少なくありません。
そこで、歴代の先輩隊員が試行錯誤し、議論を重ねてマラウイ保健省にプレゼンテーションを行った結果、病院スタッフには記入がし易く、母親には理解し易い改定版ヘルスパスポートが、2017年10月に発行されることとなったのです。

しかしながら、約束の2017年10月、新しくなったヘルスパスポートが配属先に届けられることはありませんでした。
次の段階として、発行を約束して下さったマラウイ保健省の言葉を信じ、来たる改定版ヘルスパスポートを正しく利用することが、子どもの健やかな成長のためにどれだけ大切であるかの啓発を始めたばかりのことです。
各地を巡回し、啓発を行う一方で、マラウイ保健省及びムジンバ県保健事務所と協議を重ね、発行を幾度となく促してきました。しかし進展の殆どないまま、2年間の任期を終えた先輩隊員がヘルスパスポートの発行を見届けることが出来ないままに次々に帰国していきます。

2019年1月、JICAの支援によって悲願であったヘルスパスポートの印刷が開始され、同年3月から徐々に配布される運びとなりました。
一方で、今回の発行の背景には、印刷から配送に至るまでJICAが主体となり実現した、ということも明記しておかねばなりません。
マラウイ保健省は前向きな姿勢を示してくれているものの、同時に予算上の都合から発行に辿り着けないという現実が浮き彫りになったのも事実です。

マラウイは、国外からの支援に依存しています。この国が、この国に住む人々が、本当に改定版ヘルスパスポートが地域利用の向上に必要であると考えてくれるようになり、また彼らが主体的にその運用と適切な利用に携わってくれることを我々は心から訴え続けています。
先輩隊員一人ひとりの想いを載せたこの新しいヘルスパスポートを片手にして。

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マラウイのヘルスパスポートには、皆の想いを載せたJICAのロゴが刻まれています。

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来たる配布に合わせて、各ヘルスセンターを巡回し、スタッフに指導を行います。

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机も椅子もない、辺境のヘルスセンターを訪問し、啓発を行うことも少なくありません。