プロジェクト概要

プロジェクト名

(和)農業及び森林・自然資源管理を通じた気候変動レジリエンス強化プロジェクト
(英)Project for Strengthening Climate Resilience through Climate-Smart Agriculture, Forestry, and Natural Resource Management in Ethiopia

対象国名

エチオピア

署名日(実施合意)

2020年9月4日

プロジェクトサイト

オロミア州およびエチオピア全土

協力期間

2021年3月15日から2026年3月14日

相手国機関名

連邦農業省環境・気候変動調整局(ECCCD)、オロミア州農業局(OBA)、オロミア州環境保護庁(OEPA)

背景

エチオピア連邦民主共和国は、農業セクターがGDPの約4割を占める農業立国で、国民の8割以上が農村に居住し、その大部分が自然資源に依存する生活をしています。国土面積の2割弱を占める半乾燥地域では、人口増加に伴う薪炭材の過剰採取や農地開拓のための森林伐採、さらに土壌や生態系への配慮が不十分な農業や過放牧などによって土壌浸食が進行しており、気候変動に脆弱な状態になっているとされています。

こうした状況に対して、エチオピア政府は、2011年に「気候変動レジリエンス・グリーンエコノミー戦略(CRGE)」を策定しました。CRGEでは、2030年までの気候変動レジリエンス(注1)、カーボンニュートラル、2025年までの中所得国入りを目指すとともに、気候変動対策を行わない状態に比べて、64%の二酸化炭素削減(うち50%の削減は森林由来の想定)を行うことを目指しています。CRGEの内容は、エチオピアの国家計画である「成長と変革計画II(Growth and Transformation Plan II(2015/16-2019/20))」や、「自国が決定する貢献(NDC)」(注2)と一貫性を維持しており、NDCは温室効果ガスの排出削減に大きく貢献する分野として農業セクターに着目し、農業の生産性向上やアグロフォレストリー等を通じた経済機会の多様化や持続的な植林活動に言及しています。また、2019年に策定された「国家気候変動適応計画(NAP)」や、REDD+(注3)を含む様々な政策や資金を戦略的に組み合わせることでCRGEを実施しており、気候変動適応の主流化を推進しています。こうしたエチオピア政府の取り組みに対して、JICAを含む複数の国際機関・二国間ドナーやNGOが、気候変動対策や持続的森林管理、土壌侵食対策や農業生産性向上といった、農業・農村開発のための支援を行っています。

本プロジェクトの対象地であるオロミア州は、人口約2,950万人、面積約35.3万平方キロメートルを擁するエチオピア最大の州です。州面積の約20%は半乾燥地域であり、洪水、干ばつ、紛争といった脆弱性リスクを抱え、作物被害、土壌劣化、生産性低下、森林減少といった脅威に対する持続的な自然資源管理の強化が優先事項とされています。JICAはこれまでエチオピア政府に対し、2000年代から特にオロミア州において自然資源管理や農業分野での協力を行ってきました。これには、ベレテ・ゲラ地域の森林コーヒー生産を通じた持続的森林管理モデル構築や、ファーマー・フィールド・スクール(FFS)を通じた持続的自然資源管理の支援が含まれます(注4)。

本プロジェクトは、オロミア州におけるこれまでの関連分野での協力の成果を活用し、さらに、政策と実施の一貫性を強化することを目指しています。農業および森林・自然資源管理を通じた気候変動レジリエンスのための取り組みを支援する上で、FFSアプローチによる自然資源管理システムの構築と、森林コーヒーによる森林管理モデルの強化を通じた気候変動レジリエンス強化のための実施体制を構築し、それらをオロミア州全体にスケールアップさせるために郡レベルの行動計画の模範事例(フォーマット)を州内の典型的な気候変動適応計画ゾーンごとに作成し、それらを通じて得た知見・経験を連邦レベルの計画プロセスに反映させることにより、農業・森林・自然資源管理を通じた気候変動レジリエンスを強化するプロジェクトの実施について、2020年9月にJICAとエチオピア政府の間で合意しました。

(注1)気候変動に関する政府間パネル(IPCC)第5次評価報告書(2015年)は、現実に起こっている又は将来予想される気候影響に対する調整(危害の軽減・回避等)」を「適応」、「危険な事象に対処する社会・経済・環境システムの能力」を「レジリエンス(強靭性)」と定義しています。

(注2)パリ協定及び2015年のCOP21決定において、各国は、国連気候変動枠組条約(UNFCCC)事務局に対し、地球温暖化対策に資する自国の削減努力目標を「自国が決定する貢献(NDC)」として通報または更新することが求められています。

(注3)Reducing Emissions from Deforestation and Forest Degradation in Developing Countries(途上国における森林減少・森林劣化に由来する排出の抑制、並びに森林保全、持続可能な森林経営、森林炭素蓄積の増強)。対策しない場合と比較し、森林減少・劣化を抑制したり、植林等で炭素蓄積を増加させた場合に、国際開発資金や排出権取引により経済的インセンティブを受けられる枠組みを指します。

(注4)関連分野における協力の概要は、次のリンク先に記載しています。

目標

上位目標

エチオピア国において、気候変動適応型農業及び森林・自然資源管理を通じ、気候変動レジリエンスが強化される。

プロジェクト目標

気候変動適応型農業及び森林・自然資源管理を通じた気候変動レジリエンス強化のための中央政府及びオロミア州政府の能力が強化される。

成果

1.気候変動レジリエンスのための計画プロセスを強化するため、オロミア州において、気候変動適応計画ゾーン(APZ)に応じた郡レベルの行動計画がパイロット郡で策定される。また、その成果に基づき、各ゾーンで活用可能な行動計画のフォーマットが策定される。
2.気候変動レジリエンス強化に資する気候変動適応型農業及び自然資源管理促進のため、ファーマー・フィールド・スクール(FFS)型普及を強化するための管理(評価・モニタリング等)及び人材育成(研修等)システムがオロミア州で構築される。
3.気候変動レジリエンス強化に資する持続的森林管理促進のため、「認証型森林コーヒープログラム(FCCP)による参加型森林管理(PFM)モデル」がオロミア州森林コーヒー地域を対象に構築される。
4.成果1~3を通じたオロミア州における気候変動レジリエンス強化の教訓が、中央レベルの計画プロセスに活用される。

活動

成果1

1-1.オロミア州内の適応計画ゾーン(APZ)全てについて調査し、プロジェクトで郡レベルの行動計画フォーマットを作成する3つ(仮)のAPZを選定する。
1-2.オロミア州内の郡のプロファイルをレビューし、選定されたAPZを代表する3つのパイロット郡を選び、郡レベルの気候変動レジリエンスに関する行動計画をそれぞれ策定する。
1-3.成果2及び3からのインプットを踏まえ、気候変動レジリエンスを強化する郡行動計画を、3つのパイロット郡において参加型で策定する。
1-4.活動1-1から1-3に基づき、APZごとの郡行動計画のフォーマットを3つ策定する。
1-5.パイロット郡がそれぞれの行動計画を実施するための必要な資源(財政や人員等)を用意できるよう支援する。
1-6.パイロット郡の行動計画作成にかかる経験や教訓を他郡と共有するワークショップを開催する。

成果2

2-1.オロミア州全土で気候変動適応型農業や自然資源管理を推進しFFSをスケールアップする行動計画を策定する。
2-2.気候変動適応型農業や自然資源管理のための、FFS型普及の管理システムを構築する。
2-3.気候変動適応型農業や自然資源管理のための、FFS型普及に関する人材育成システムを構築する。
2-4.活動2-1から2-3に基づき、気候変動レジリエンスを評価するモニタリング指標を提案する。
2-5.FFS型普及を通じた気候変動レジリエンスに関する経験や教訓を、連邦政府や他の州政府と共有するセミナーを開催する。

成果3

3-1.気候変動レジリエンス強化に資する「オロミア森林コーヒーエリアを対象にしたFCCPによるPFMモデル」を構築する。
3-2.オロミア森林コーヒーエリアの関係者との参加型ワークショップを通じ、ガイドラインを最終化し、また、その利用を推進する。
3-3.オロミア州の関係者や連邦政府と、持続的森林管理を通じた気候変動レジリエンス強化を目的としてガイドラインや教訓を共有するセミナーを開催する。

成果4

4-1.オロミア州での実践に基づき、気候変動レジリエンスに関する連邦政府の計画プロセスを強化するための教訓や提言が文書化される。
4-2.他州の気候変動レジリエンスを強化するため、オロミア州の経験を共有するセミナーを開催する。
4-3.他のプログラムと連携して気候変動レジリエンスを強化する為の資金アクセスの機会を探る。

投入

日本側投入

1.専門家派遣:長期専門家2名(チーフ・アドバイザー/気候変動政策、気候変動レジリエンス/業務調整)、ならびに業務実施契約に基づく専門家の派遣(総括/自然資源管理による気候変動対策、FFS制度化、ジェンダー主流化、森林コーヒー、持続的森林管理、気候変動レジリエンス評価、研修管理等)
2.機材供与:車両、バイク、研修用資材、事務機器等
3.本邦又は第三国研修:自然資源管理を通じた気候変動対策等
4.現地活動経費

相手国側投入

1.カウンターパートの配置:ECCCD、OBA、OEPAより複数名
2.プロジェクトの実施の必要なサービス・施設、現地経費の提供